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……
[あの時には、自分もいっぱいいっぱいで、母の後ろ姿をあまり覚えてはいないのだけれど、今こうして眺めてみると、何だかとてもいたたまれない気持ちになってきて、そのまま店の外へと足を向けた。]
…どこに、行こうかな。
[逃げ出したい、と思った。
ここから離れたい、と。
菊子があとで合流しないかと言っていたが、もうすこし時間はあるだろうか。
あそこには、胸の奥底に仕舞って、忘れてしまいたいものがあったように思えて。
それがワスレモノなのかもしれないけれど、それでも今はまだそれを探る為に店へと戻るような気にはなれなかった。**]
・・・やっぱり、みーちゃんは、彼を嫌っていたんだ。
[それが、彼に対する自分の対応を見続けていたためかもしれないし、自然とそうなったのかもしれない。それはわからないけれど。
証拠だとでもいうように、踏み入れた靴箱の前、「自分」と「娘」が現れる。]
[運動会の帰りなのだろう。運動場には屋根だけのテントが置いてあり、白線が鮮やかに残っていて、あたりには、先生たちが片づけに忙しく動いている。
それをみながら、]
「ねえ、おかあさん。」
[体操服姿でランドセルを背負った娘が、不安そうに「自分」の袖を引く。]
「なあに?」
「再婚なんか、しないよね?」
[その言葉に、「自分」が一瞬息をのむのがわかる。それを見て、「娘」の顔が、いっそう不安そうになるのも。]
「大丈夫。あなたのお父さんはあのお父さんだけよ。これからも、絶対変わらないよ。」
「ほんと?ほんとうに?」
「うん。大丈夫よー。・・・誰かに、何か言われちゃった?」
「ううん。違うの。大丈夫。」
「そっかー。」
[そして、お互いホッとしたような、それでもどこか釈然としないような、疑っているような表情のまま、]
「て、つないでかえろっか?恥ずかしい?」
「ううん。大丈夫。」
[大丈夫と相手に言い聞かせるように、ぎゅっと手を握って、]
「そうそう、雷電堂で柏餅買ってきたんだー。みーちゃんがんばってたから、ご褒美。家に帰ってたべよっか。」
「・・・うん!」
[校舎から外に出ると同時に、薄くにじんで消えて行った]
[10年前の街中を、うろうろと歩き回る。
当時は、何処によく行っていたのだっけ…、少しづつ、少しづつ記憶と糸を手繰り寄せる様に。
それでも、何となく身体は覚えていたのだろうか、小さな街の図書館の前に立ち止まると、ゆっくりとその屋上付近を見上げた。**]
みーちゃん・・・
[それなのに、なぜ、彼女は急に再婚をせかすようになったのか。
「自分」と「彼」とのやり取りをはっきり見ていたはずなのに、「自分が買ってきた」という嘘に対して何も聞かなかった彼女。確か、家に帰って、二人でおいしく食べたはず。]
・・・行かなきゃ。
[「自分」と「娘」が向かった方へ。後を追うように、学校を後にした**]
― 街中 ―
は……
[適当な壁に寄りかかって、息整える。]
また撮り逃したなー。
[うさぎのことだ。わざと明後日の方向に感想を零せば、少しだけ可笑しい。
心に掛かりはじめた不安は、雨降らす前に吹き飛ばす。いつからか、そうすることに慣れていた。]
[背を預けていた壁から離れ、道挟んで向かいにある家をじっと見上げる。アイボリーの壁、ブリックレッドの屋根。ごくこじんまりとした一軒家。―――かつて住んでいた家。
今はひとり小さなアパートに移り住んでいるけれど。]
………。
[鞄からキーケースを取り出し、“現在”ならば存在し得ない鍵穴を回す。長く役目を失い鈍色に変わっていたキーが、一瞬輝きを取り戻しているかのように見えたのは気の所為だろうか。]
ただいまー。
とと、玄関こんなに狭かった かな。…うちといい勝負。
[記憶よりも随分狭い玄関に笑いながらサンダルを脱ぐ。少し残った砂を払った。
躊躇いもなく自宅に足を踏み入れるのは、中に誰も居ない事が分かっているから。*]
[海辺への道を進み、その途中で道を逸れて風音荘のある方へ。学生時代に通い慣れた道。10年前は丁度その時期にあたる]
景色変わんねぇー。
っても当たり前か。
[遠目にはもう風音荘が見えて来ている。その入り口付近に人影を見つけると、離れた場所で一度足を止めた]
っと、あれって確か……貘原って言ったっけ。
[まず目に付いたのは、この10年前に飛ばされて最初に会った男子。名前は辛うじて思い出せた。彼がもう1人に話しかけているらしいのを見ると、視線はそちらにも向かう]
…………やっぱ居るよなぁ。
[小さな呟きは不思議そうな雰囲気を含んでいた。僅か首を傾げて後頭部を掻き、離れた場所からしばし見つめて*いた*]
― 駅 ―
「ちーがーうー。
みんな、大事なものはちゃんとある、よ」
[風のかわりに答えてくれたのは、あの兎だった。
ててて、ととと。
言うだけ言って外に出る階段を駆け降りてゆく]
巻き込んだのは、兎の失敗にってことか。
[駅前から伸びる商店街も今は静かだ。
時折、蜃気楼のような過去の場面が浮かんだりもするけれど、なぜか長く見続けることが出来なかった]
あの空間の狭間、危険な場所ならあの兎ももっと慌ててるだろう、かな。
とはいえゆっくりしてたいわけじゃないし。
備瀬さんの開放のためにも、早くワスレモノを見つけなきゃな。
ここは、10年前も今も変わらない。
この頃から古めかしかったからなあ。
[日焼けしても構わない、とばかりに古本屋の店先に積まれた文庫本を手にとって、パラパラと捲り始めた**]
― 元・自宅 ―
[予想していた通り、仄かな白檀の香りに出向かえられた。客人でも来ていたのだろう、飲みさしの湯飲みが幾つか残されているのを認めれば、呆れたような困ったような声を発する。]
あら、ら。
片付けもせずに何時もの場所に行っちゃったのね、わたしは。
[壁一面に立て掛けられた写真。
フレーム入りの物もあれば、素のまま画鋲で取り付けられているものも。
年月をかけて撮影されたであろうそれらは、殆どが自分の手によるものではない。]
[色素の薄い瞳はそれを順に眺めたのち、やがて机に放置されたままの写真に向いた。表札の前、並んで笑顔を向けているのは記憶にあるままの両親だ。
旅行に発つ二人を、見送りがてら写真に収めたのは―――]
これ。わたしが撮ったんだよねー…。
[貯金を貯めて購入したカメラではなく、その時だけは父の写真機を貸してとせがんだ。折角の15周年記念なんだから、綺麗に撮れた方が良いでしょ?…と言って。
遺品整理が終わった日に、何処からだったか、写真は手元に戻って来た。その日は一日中、部屋に篭って泣いた。]
とにかく混乱して、迷走してたっけ。
自分の所為で死んじゃったんじゃないかって。
そんなわけ、なかったのに。 ……ないんだ よ。
[あの日泣いていた自分に向けるよう、独言。]
……ただ、人を撮るのはこれっきりにしようって、
思っちゃった なぁ。
[確か、個展の話が出た頃か。経歴を説明する傍ら、省吾には話したことがあったと思う。風景写真が主である理由。一瞬を半永久的に残すことの出来る感動が、逆に働いてしまった出来事があったこと。
ちくりと刺さる記憶ではあるけれども、大人になるにつれて自分なりに答えを出している。だからきっと、これはウサギの言う「ワスレモノ」ではないのだろう。]
にしても、こんなに撮っちゃってまあ。
置き場所無いからって隅にまで積んであるし。一軒家が泣くぞー。
[アパートに作品を引き取った自分が、どれだけ収納に苦労しているか考えたことがあるかー、と頬膨らませる。表情にはもう寂しげな気配はない。
暫くののち玄関に戻り、サンダルを足に引っ掛けた。自分はもうこの場所の住人ではない。長く居るのも何だか違う気がして。]
……行って来ます。
[目を細め微笑むと、懐かしい場所を切り離す。
戸に確りと施錠をしたのち、その場所を後にした。*]
― →街中 ―
─ →駅前公園 ─
[あれこれと、考えを巡らせながら歩いていく。
煙草は途中で、携帯灰皿に落として消した]
10年前に飛ばされたのに、意味があるんだとしたら……。
[どれだけ記憶を辿っても、考えられるものは、ひとつしかなくて。
けれど、何となく、それを直視はしたくなかった。
何でだっけ、と考えても、それも見えなくて]
……ぁー……面倒な。
[大げさなため息と共に駅前公園に戻るなリ、零れたのは大げさなため息だった]
─ 駅前公園 ─
大体において無茶振りがすぎるんだっつー……。
[言っても詮無いとわかっていても言ってしまうのは、多分、近づく事を求められている事が自分的に余り見たくない、と認識している部分だから。
そこまで気づいているなら、と言われるかも知れない、けれど。
そんな簡単に行くなら、多分、きっと、忘れていない]
……どーすっか、ねぇ。
[思い当たる節に即すなら。
ヒントを得られそうな場所は、多分]
あそこ、だよ、なぁ……。
[ちら、と視線が向かうのは。
バス停の近くに建てられた、病院の看板]
― 商店街 ―
『ねえ、きみ。省吾君?』
[不意に背後から声を掛けられた。
驚いて本を戻し振り向くと、白いワンピースを着た女性が立っていた]
ええ、そうですが。
お会いしたことありましたっけ?
[軽く首を傾げて問う。
女性の顔は影になっていて見えない。首を横に振って否定された]
『この街に来たのは20年ぶりだから。
お祖父さんは元気?』
[仕事から戻った「今」なら既に他界している。
10年前なら入退院を繰り返しはしていたけれど、まだ存命中のはず。
どう答えたものかと迷っていると、何も言わないのに女性は口元を押さえた]
『そうなんだ。…お大事にって伝えて』
[その先は声も聞こえなかった。何度か首を振って、逃げるように背を向け走っていってしまう。
突っ立ったまま見送ってしまった。
白昼夢かなにかのように、角を曲がったわけでもないのに白い裾が大きく揺れて消えた]
名前、聞けなかったな。
[振り払うように頭を振る]
知らないものは知りようがないか。
[再び本を手に取る気にもなれず、商店街を抜けてブラブラと歩き始めた]
― 公園・池の縁 ―
[職人と妻の間には子供が居なかった。いや、正確には一人、息子が居たはずなのだが、その子は生まれる前に天に召されてしまったので…その後はずっと夫婦二人きりの生活だった]
『いい風ですねえ』
[晴れた日に、ここに散歩に来ると、妻はいつもこの池の前に立ち止まり、日傘を傾けて、そう言った]
アア、イイ風ダネ。
[妻の瞳が子供達の像を見つめているのは知っていたけれど、職人は、いつもただ、そう応じるだけだった]
― 街中 ―
どうしようかな。
[学校や海、寄り道した遊び場。
街中を見た限りでは記憶と違える場所もなく、それなりに懐かしくはある代わりに目立った成果も無かった。
こちらに来てからずっと、潮風に後ろ髪を引かれてはいるけれども――]
あ。交番。
そういえばよく落し物が届きましたって連絡を貰ったっけ。でも ま、オトシモノはワスレモノじゃないから、きっと違… ……あれ。
[交番の前を通り過ぎ、横道を折れたところで、見覚えのある姿ひとつ。
疎らに行き交う人々の合間を縫って近付いて、少し距離空け眺めること暫し。]
― 公園・池の縁 ―
[けれど、それはワスレモノではないだろう。職人は、その日々を忘れたことはなかったから]
懐かしいネ。
[けれどきっと、その懐かしさの向こうにソレはある]
今、病院いったら。
……多分、まだ、いるよ、な。
[10年前の今なら、多分、きっと。
同い年のいとこは、まだ、地元病院に入院しているはずだった]
……っつーか、あっちに会うのって、過去の自分以上にびみょーじゃね、俺?
[思い至った考えに、滲むのは、苦笑。
なんとなく、すぐにはそちらに向かい難くて、ぐるり、公園内を見回して]
……お。
[池の縁に座る人影に、気がついた]
やっぱりそうでした。人違いだったらどうしようかなあ、って。
此処にいるということは、省吾さんもウサギを見ちゃった組だったんですね。
[反応を見せた省吾は自分のよく知る姿そのままで、ほっとしたような表情を見せるけれども。]
……? どうか、した?
[考え事でもしていたのだろうか。
何時もと違った響きで呼ばれた名。
はいロッカですよーと頷きを返しながら、相手の様子に首を傾けた。]
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