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― 1963 向日葵迷路 ―
[どこを見ても一面の黄色。
背の高いそれは、背伸びをしても追い越せない]
むむ。
[4年この村で過ごして、けれどこの迷路に踏み込んだのは、初めてのこと。勝手に歩くべきか悩ましい。
――と、視界に黄色以外の色が映る]
……レンさん。
[夏の装いからは一番遠い、夏の風物詩の姿]
― 現代 ―
[近頃では、喫煙者は肩身が狭い。
人の多く集まる場所では屋外でも中々吸えないので、屋台が並ぶ祭り会場を少し離れた境内から眺めながら、タバコを吸っている]
……んー。
何でか、この位置から眺めるのが一番落ち着くンだよネェ。
[当人は知らないが、そこは伯父である夕霧が毎年、祭りの日にタバコを吸っていた場所だった]
方向にまで、って、歌は違うでしょ?
[くすりと笑って、六月さとりみたいでしょ、と戯れるものの。
立ち止まらず行く相手に、首を傾げてから]
道、わかるの?
[小走りに追って、相手との距離を詰めた]
―963 向日葵迷路―
六月さとりの艶気まで
あと<33>歩くらいか。
[淡々と進む。
先の風の導きによって、今は視える道。]
このまま行くと、村へ戻れなくなるよ。
おかえり?
それとも。出口はあちら が適切かな?
[足を止めないまま
己が進行方向と、逆の方向を指し示した。]
― 1963 向日葵迷路 ―
さんじゅうさん……
結構あるのね。
[どんなに音痴と言われてもしなかったふくれ面。
このときばかりは、相手に遠慮無く向けて。
確信の在るような足取りを追う。
揺れる黄色、道は現れ、隠れ、繰り返し。
進んだ道のりさえ、たどって戻れる気がしないけれど。
共に在る者のせいか、不思議と不安は感じずにいた]
[――のに。
唐突とも思える言葉で示される、行き先。
ぎこちなく、首を傾ぐ]
……神隠しは、もう終わったのよ?
[立ち止まらぬ相手を追う。
もう彼方に行く必要はないのだと、相手を引き留めるよう、手を伸ばした]
―ひまわりのまよいじ―
[歌姫のふくれ面へ鼻を鳴らした。
六月さんの艶は、特別。
あの域へ達すのは非常に難しい。なんて思惟。
だが。]
正直を言えば、六月さんの歌より
貴女の舞いのほうに惑わせられるね。
―――ふ。
神隠しは終わった のか…。
だとしても、自ら出向くことはできるだろう。
[背の高い向日葵たちの影が、行く先に伸びている。
それらの陰りの濃いほうへと進みつつ]
日光がささない、暗くて涼しいところ。
休むには丁度良いんだよ、ワタシにはね。
[少し、掠れる声。
此方へ伸ばされる手が、視界の端に映る。]
何故、ついてくる。
そんな風だと、このまま連れていってしまうよ。
[その手首を強く掴んで、引き寄せようとした。
その時、]
―現代・祖母の家―
[ここに来るのは大学生ぶりだった。
女からは弁護士になったことの報告と祭りの話をすると
その祖母からは50年前の神隠しの話を聞く。]
やだ、異世界なんてそんなことあるわけないじゃない。
夢でしょう?
[女は真剣に話す祖母に冗談っぽく返した。]
―― 現代/射的屋 ――
倒すのがためらわれる的ですね……
[狛狼を模した的が並ぶ夜店前。
ポシェットから写るんですを取り出して何枚か撮影]
この村、むかーしむかしに神隠しがあったって本当ですか?
[店の若い男は、この辺の者ではないからと薄く笑った]
― 1963 向日葵ノ迷路 ―
[鼻を鳴らす相手に、不満げにふくらむ頬だけれど]
……え?
[惑わせる。
その言葉に瞬きする。
六月さんより、と比較する言葉、飲み下すまでに少しかかったから、間の抜けた顔はしばらく続いた]
自らって、行く理由が、あるの?
[誘うように揺れる影。
行き先示すように一方へと伸びていく]
―昔々のお話―
[水芙蓉の精霊の棲む湖があった。
ある日のこと
湖へやってきた人間と水芙蓉の精霊が出会い、
たちまち、人間と精霊は恋に落ちた。
精霊は人間の手を引いて、湖面の下へ消えた。
そうして精霊と人間は、向こうで添い遂げたという。
そののちに
水芙蓉の湖から現れた、子供が一人。
この子供は、あの精霊と人間の間に生まれたという。
水芙蓉にちなんで子供は蓮と名乗り、蝶々を飼って人間たちの世界で暮したそうな。]
そ、そんなのっ
私が――
[掠れる声、耳に届く。
掴もうとしていた男の手が動く。
酷くゆっくりに見えた。
相手の言葉の意図も、動作の意図も、確かめる前に]
……チカノちゃん、と、ヒナさん。
[見えた人影を呼ぶ。
レンが立ち止まれば、自然とその距離は近づいた]
―― 迷路 ――
[>>63呼ばれた名前に振り返る。
そこにいる歌姫に、くすくす笑った]
さっき、謡っていましたよね。
[指先で触れていた糸。出口側から入り口側へとぐいと引っ張って、それから離した。
風の吹いてくる方へと、駆け出す]
― 迷路 ―
き、聞いてたの!?
[くすりと笑う顔が見えれば、さ、と顔を赤らめた。
彼方から此方へ、消えた人を、行こうとする人を、呼ぶ謡い。
聞く者が在るとすれば、ショウイチくらいだろうと思っていたのに]
……?
[チカノが宙に伸びた糸を、引く仕草]
あ――
― 過去・神社 ―
……?
何だい、これ。
[次のタバコを口にしようと、弓矢が描かれた箱を巾着から出したところで。
その箱に、なぜか白い糸が結ばれているのに気づいた。
さっきまではなかった筈の糸。
それは、先程レンが去っていった方向へと伸びている]
― 1963 向日葵ノ迷路 ―
おかえりなさい。
[ヒナに向ける、当たり前の挨拶。
彼方のことは、解らぬけれど。
糸が切れたようにくずおれた姿に歩み寄り、そっと肩を叩いた]
―現代―
たこやき!イカやき!
[屋台を覗きこむ。
するとただでさえ視界が悪いというのに、
立ち上る湯気で黒眼鏡が曇りまでする。
似てる、か。
似てる、は、…ワタシも時々、言われるなあ。
[少女に応じつつ、あたりを見回す。
「ぼっちゃまー!」なんて叫んで追いかけてくる姿――
追手らの姿は見えない。
と確かめ、鬱陶しい物―黒眼鏡と帽子とマフラーを外した。
現れたのは、あどけなさ残した十代後半の顔。
その瞳の色は、黒。]
―― 現代・夏祭り ――
最新型ですよ?
[>>69 ヨシアキに小首かしげる]
なーんてね。電池切れちゃったんです。
トンネルの先は国境だと文豪も書いていたそうですし。
でもこの村、トンネルないですよね。
[地図を見ても、山は見当たらない。
聞こえはじめた盆踊りの音に、顔を向けた]
お帰りの頃合ですね。
― 963 向日葵ノ迷路 ―
待って。
[するりと離れる距離に気づくと、慌てて立ち上がる]
わ、私が――
[先ほど言いかけた言葉を、男の背に投げかける]
向日葵みたいに……長い影を作るから。
[暗くて涼しいところ]
それじゃ駄目?
―― 1963・迷路 ――
あれ、ヒナせんせ?
[出口で振り返って声を張り、耳ダンボ]
……女のすすり泣くような声が聞こえる!
[ダッシュ]
―― 1963・迷路→神社 ――
[いつもの灰皿の場所。
辿り着くと、息も切れ切れに笑った]
お守り、ちゃんと持っていてくれました?
チカノ、さん?
[駆けてきた姿に驚き、ひとつふたつ瞬いてから。
ふわっと笑顔を浮かべて]
……おかえりなさい。
[頭をそっと撫でてから、お守りをつけた巾着を掲げ]
うん。ちゃんと持っているよ。
[逃げられなければ、抱き締めたりもしてみようかな]
……チカノさん。
ご両親に顔を見せて安心させてあげた後。
落ち着いたら、一緒にどこかに出掛けないかい?
[また後悔しないよう、早速逢い引きに誘ってみます]
―― 現代/射撃屋 ――
これってどうするとどうなるのか知らないんですよね、実は。
[>>78 ヨシアキの倒した的を見る]
湖ですか。お詳しいですね……えーと、お名前なんて言うんですか?
[謎の手紙をポシェットから取り出す]
―― 1963/神社 ――
よかった。
[>>79ユウキの言動に、心底安堵した]
ただいま、先生。
先生が無事でよかったです。
[蝶がひらり舞う下で、風が吹く]
[一通り泣き終わると立ち上がる。]
ありがとう。もう大丈夫。
[肩を叩いてくれたザクロのほうに向き直って笑顔でお礼を言った。
憑き物が落ちたように晴れやかな笑顔だった。
しかし何かを思い出すと一気に顔が青くなる。]
あ、仕事…
[依頼者宅へ走っていく。**]
― 963 向日葵ノ迷路 ―
……。
[唇を引き結ぶ。
けれど、結局、ゆるりと弧を描く紅色]
待ってるから。
[少しだけ、苦いものが混じるのは、許してほしい]
ビッグな女になってるからね!
[大きな影を、作れるように]
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