酔っ払ってないと主張する人ほど、大体にして酔っ払っているんですよ。
[水だと思いたい液体を飲みながら]
……、
…………
[とつぜん。ぱたりと突っ伏して、おやすみなさい]
――――、
[弛む身体とふわふわした意識。
自分はどこかに寝かせられたらしい、多分ネギヤのいるあの奥の部屋だろう]
……ん?
[頬を掠めた何か。
それが指だとは気付かず、どうにか持ち上げた瞼、霞かかった視界に映ったのはポルテの後ろ姿だった。
そしてすぐに、また眠りの中へ引きずりこまれ]
[そういえば眼鏡はどうしたかな。
彷徨わせた手に触れた柔らかい何か――フォルカーを無意識に抱え込んで]
……さすがに、飲みすぎた。
[でも不思議と頭も痛くなければ、不快でもない。
温かくてどこか懐かしい香り]
エビコさん、やっぱり仲間ですね。
[しかも普通に話せているような。
あれ、自分は寝ているのだろうか、これは夢の中なのだろうか、そんなことを頭の片隅で疑問に感じながら、羊の頭を撫でた]
ああ、フォルカーじゃないか。
[やっと気付く]
僕たちの様子を見ていてくれているのかな。
[何だか現実感が希薄で。
そのせいかぬいぐるみにも抵抗なく話しかけられた。
自分は案外ロマンチストなのかもしれない]
キミの名前は知っているけど。
ご主人の名前は聞かないままだったね。
ご主人ではない?
友だちとか、姉妹のほうがいい?
[声に出しているのかどうかも曖昧だった]
[頭に直接響く声。
子供の柔らかさと、どこか硬質さを感じさせる声]
……そう。
眠るということは、また目覚めがあるということ。
[目を閉じたまま頷く]
プレーチェ、フォルカー、ありがとう。
[心の中で礼を言う。
そしてまた訪れる、深い睡魔に身を任せた]
[どれくらいの時間が経ったのだろう。
喉が渇いて目が覚めた]
……。
[ゆっくりと身体を起こす。
さすがに頭がくらくらし、片手で押さえた]
[エビコの声にそちらを振り返る]
ああ、おはようございます。
[時間は無視無視]
そうです、きっと僕たちはかなりの酔っ払いですよ。
ぬいぐるみの声が聞こえますから。
それかメルヘンな夢に迷い込んだか……。
[それにしては場所がリアルだが]
さきほどまで鼾をかいていましたよ?
[嘘です。
それはネギヤのもの]
柔らかな羊に限ってクール。
そういうギャップは物語に必要不可欠です。
[ただの持論。
フォルカーの頭を撫で]
それよりどれくらい寝ていたんでしょう。
ネギが萎れている……。
[スーパーの袋の中身がある意味心配だ]