[二人の前に料理をひろげると]
お譲ちゃん、
よけりゃあ召し上がってくんさいね。
外、暗くぅ寒くなってきたわ。
たしかにこんな時ぁ、温けえ飲み物がいちばんさね。
あ、はぁ、やや、俺ぁ修行中の身すし、
まだまだ未熟で…ははは…身に余るお言葉す…
[ヘイケの褒め言葉が
照れ臭くて頭をかき、ふとルリへ視線を流し]
この子は貴女の娘さん
…ってぇんじゃ、なかったんすね。
迷い子かぁ。
こんな日に…。や、たしかに月ぁ赤かったすね。
[困惑過り、魔女の表情をちらと窺う]
ふむ、ルリちゃん?
今日はこちらに泊まって行くといいすよ。
主のアンさんもきっと歓迎してくれるす。
[先ほど鏡から告げられた子供の訪れと、この少女を結びつけてはいた。
二人の横で話を聞きつつ、にこにこと]
分化会の生中継つうわけすか。オツなもんで。
[目尻に皺を寄せ、
少しばかり人が悪い顔つき、水晶を一瞥した。
分化会に興味は持っているらしい。]
や、やや、それは、
いや烏龍茶だけで十分っす、いただきやす!
[食事を勧められれば、
ややうろたえた態で着席し、
美味い、一言を聞くや、満面の笑みが浮かぶ]
あはは、そりゃぁ、
嬉しいす、いっちゃん嬉しい言葉すね…
何っすと?開かなくなってる?
[ヘイケの断言。
紫の魔女の大きな魔力には到底及ばず、異変の詳細までは感じ取れない。
窓へ寄って押し引きを行うも、びくともしない]
やー、まじっすね…。こりゃあ。
若いの…あん子らに任せる、すか…。
まだまだ俺ぁ、ケツ青いんかのぅ、
…頼りになるんかいな、思ってしまいまさ。
率直に言や、不安ですわ。
[歩み、神妙な顔して水晶を覗きこむ。]
――アンさん?
[馴染みの気配がふいに近づいたように感じ、
ヘイケの言>>+1を加味して確信を持った。]
なんてこったい。
ほんじゃぁ頼みの綱は、ニワトリの前の子らのみか。
……わかりやした。
キッチンも食べ物の貯えもありやすし、飢え死の心配は当分せずに済むっすが…
[赤い月の夜だろうと、
どこか悠然と映る魔女に少々見惚れたが、
料理を口へ運ぶルリが視界に入り、気持ちを切り替えた。]