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― 夏祭り会場 ―
相変わらずソラさんはゴージャスかき氷派なんだな。
おじさんにサービスしてもらえばよかったのに。そしたら3点コンボどころか5点にも10点にも……う、食べる前に溶けそうだ。
[笑い袋を抱えて屋台の間をそぞろ歩く]
お祭りが終わったら宿題やる準備しないと。どうせみんなくるんだし、座敷片づけて。
感想文はやっとかないとだめか。フユキ先生の新作でいいかな。なんだかどこかで読んだことがある気がするし。
[ぶつぶつぶつ。独り言]
― 40余年前・フユキ宅 ―
肩書きって便利だね。
[『若先生』が適当言うと、大家は簡単に鍵を開けてくれたのだった。
開いた扉から冷気が出てきた気がしたが、すぐに暑い、うるさい、夏に覆われる]
どこに消えたんだろうね。
[一人ごちる。
おばけも、チラつく景色も、もう見えなくなっていた。
フユキの机上に残っている、鬼気迫る文字は判読が難しい]
『ん〜……? ここどこぉ?』
[と、少女の声がした。
背後の布団がもぞもぞと動いて、その中から顔を出したのは]
アン、ちゃん……!?
[失踪時と変わらぬ見た目の女学生を見て、腰を抜かしかけた。*あばばばば*]
[ふと、射的屋の前で立ち止まる。
「今年も来たな小僧」と言われて、苦笑して頭を掻いた]
なんだろう、ここを通ると「やらないと」って気になっちゃうんですよね。
勝負してるっていうか、なんだろう。
[うまく言葉にできなくて、毎年同じような事を言っている気がするなと言い訳。
お代を払い、替わりにに受け取るおもちゃの銃とコルクの弾。
ねらいをつけるのはキャラメルの箱]
― 現代・救護テント下 ―
家に帰ればやれ嫁はまだか孫はまだかって、時代錯誤なこと言われ、外に出れば、病人もいないのにタダ働きかよ……!
みんな元気なのはいいことだけどなー。
[本部テントから、迎え火の匂いが届く。
机に置かれていた小説は、フユキの新刊。ぺらぺらとめくり苦笑した]
医者でユウキとかやめろよ、まったく。
― 40余年前 ―
若先生!
アンが見つかったって、本当!?
…あ…アン、本当に、アンだ。
良かった…心配、したん、だから。
今までどこに…ううん、違う。
───おかえり、アン。
やっとみんな、おうちに帰れるね。**
[暑い暑い夏の祭り。
カラコロと響くリズムは軽やかに、涼やかに]
踊りのこと、ご存じでしたか。
…やっぱり、先生は、お詳しいんですね。
[狼の面、戯れに作家の顔に重ね]
ふふ。
…みいつけた。
[また外して、にこりと笑う**]
─夏祭り会場─
ん…鼈甲飴、甘い。
次は、何しよう…かな。
射的に、風船釣り。
金魚すくいに、輪投げに…かくれんぼ。
─…かくれんぼ?
なんで、出てきたんだろ。
お祭りには、関係ない、のに。
…でも。
やってみたら…楽しい、かも。
[子どもがくれたわたあめ。
最後に残った割り箸をくわえてぶらぶら。
※危険です。テレビの前のお子様は真似をなさらないよう]
おにさんこちらー
[手に付いたポテトチップを叩くかのように、鈍く2回打ち鳴らす。
眠たげと言われる顔のまま辺りを見渡すと、面を被った老若男女が夜店の明かりに照らされてふわふわと]
[『還って』来ている人がいても、きっと誰も気づかない]
―現在 祭り会場―
たーのむよー ワカバ!
問題はあと、自由研究だけ!
そこがなんとかなれば!万事解決!
へるぷみー、
なんか半日で終わる研究おせーて!
[級友へ向かって手を合わせる、男子学生が一人]
ほら今ならもれなく、
「シンヤんちにおとまり勉強会に参加権」つき。
おまえも興味あるだろ、シンヤ?(あいつ女子人気高ぇんだよな)
それにあの古ーいうちの、趣?ってもんも味わえるぞ。
―現代―
[カロリーが無駄に高そうなかき氷を食べ終えると、
ソラを探していた様子の男性が現れる]
ごめん、用事あるからまたねー。
[そういって周囲の人々に挨拶を済ませ、やってきたのは公民館。
かくれんぼ踊りの前に行われる劇の打ち合わせがあったのだ]
ちぇー、リンゴ飴プレゼント攻撃でもおちねーか。
…しょーがねえ。
じゃあ、とっておきのひみつ。
おまえにだけ、特別に教えてやる。
あの家に、な―――
[カラコロ カラコロ
下駄の音が通り過ぎる]
[そのとき。
言いようのない、なつかしさを感じた]
はは
[そう笑い声をあげると、
カラコロ下駄の音響かせて]
伊達にモチーフにはしていませんからね
[踊りについてはそう返し、
ふと当てられるのは狼の面
面越しの狭い視界にヒナの顔があり瞬いた]
――…
…
[面の奥で一度、きょとりとして、
――ふ、楽しげな笑みを浮かべる。
面が外された時、ヒナが見た笑顔は、
いつもと同じでないかも知れず。]
やあ
[漸く、面と向かって―――]
見つかってしまいましたね
[くすくす笑う声は、下駄の音と妙に合う。
カラン、一歩動いてヒナに向き直り、一つ手を差し伸べた。]
じゃあヒナさん、かくれんぼの鬼と
折角だからかくれんぼの踊りでも、ひとつ
神隠しに合うかもしれませんけどね
[笑う声色は、*冗談めかしたものだった*]
………あー。いや。
やっぱ やめた。
お前に言っても、どーせさ、
「科学で証明できないもんは信じない」
っつーに決まってるし。
[にやりとした不敵な笑みを浮かべる
ひとり秘密を守り囲い込むことを決意した、そんなような。]
あ? 「でる」か? って………
[ワカバの口にした推測には、
自分から振った話題であるにも関わらず、沈黙をおし通したのだった]
[内容は――以前この村であった神隠しの話]
で、ここで何だっけ。
[散歩に誘われた]?
[というと一斉にツッコミが入る]
『違ーう!』
『[占い師 オトハ]はそんなことしてないだろが!』
『本当にお前この村の出身なのか?』
いや、ちょっとふざけてみただけ。
[反省心ゼロで言い切った]
[笑い袋とハンガーを抱えて、屋台の間をそぞろ歩く。
頭には狐のお面を乗せて]
笑い袋とか、なんかもうちょっといいもの当たればよかったのに……よし、ムカイ君に押しつけよう。
[じーっと笑い袋を見つめた後、さくりと決心する。
ふと。
声が。
しゃてきの けいひんじゃ ないのに ね !
(うんうん おかし でも ないのにね !)]
……うん?
[きょろりと背後を振り返り、首を傾げた]
[一度面に隠れ、また現れた作家の笑みは、
遠くて、少し怖くて、懐かしくて、胸を締め付けるもので]
フユキ先生…?
[そして思いのほか、近くにあって]
あら。
[差し出された手を、少しみつめて]
この指とーまれ、ですね。
[歌うように言うと、自分の手を重ねる]
先生になら、隠されてもいいですよ。
…お見合いしなくてすみますから。
[弟の複雑な視線など、知る由も無く**]
俺と逆、だねぇ。
[ぱらぱらめくった本の最後の方、女医は『この村から離れたいな』と言っていた。
その後どうなったのかは書かれていないようだったが]
巡回してきますね。
[わいのわいのと騒ぎながら動きをまじえての最終打ち合わせは続く。
一段落して休憩に入ると仲間から尋ねられる]
『この話、実話とか言ってるの聞いたんけどマジなん?』
[その問いにうーんと考える振りをして答える]
まあ私には分からないけど……
鬼だろうと神様だろうと妖怪だろうと、
誰だって寂しいもんなんじゃない?
[はぐらかすような答えに相手は不思議そうな顔をしていたが]
―現在 祭り会場―
しかし、お前とこうしてても、
残酷な現実(宿題)は終わらないな…。
はあ。もー、自由研究はちょっとおいといて。
祭りの間は、祭りを楽しむとするか。
縁日いってくるわー。
…ミナツも来てるかもしれないし。
あいつに問題集(回答ずみが望ましい)レンタル頼むついでに、射的おごってもらおう。
たしかあいつ、引換券もってるっつってたよーな…。
ん、すまんかった、
じゃーな、ワカバ、おまえマブいぜ。
[子供たちの遊ぶ声とともに、*祭り囃子が流れてきた*]
― いつかのどこか ―
[カラコロとなる下駄の音。
自分を遊びに誘う声>>51に、顔を上げる]
…まあ、懐かしい声。
お元気でした?って変かしら。
ええ、また遊びましょう。
あの時のように。
[そういうと、少女のように優しく微笑んだ**]
─夏祭り会場─
わ、!?
、ぁ、わ、ゆ、ユウキ、先生。
こ、こんばんは。
あ、あの、ね。
なんか、かくれんぼ、したい子いる、かなって。
思って。
だ、だから、その。
歌って、みたの。
[仮面を見つけた]ら、その人と仲直りできるわ。
場所は、そうね、[校長室]がよさそうよ。
はい、300円。
[差し出した手に転がった硬貨を空き箱に落とす、ほうと一息。打ち上げられる花火のお蔭か幾分客足は遠のいた]
…?
[喧噪の間、聞こえてきたのは50年前のあの調べ。子供たちの歌声と、少女の声とが重なって]
『この指とーまれ』
[懐中電灯片手に、ふらり、立ち上がった**]
[実際はどうなのだろう。
聞いた話なので何とも言えない。
だけど思う。
近くに同じように笑い合える誰かがいるというのは、
それだけで幸せなのではないかと]
『そろそろ再開するぞー』
[学生 ミナツ]が[自分探しの旅へ行って来た]するシーンから?
『だからそれはないと何回』
[ソラの周りでは祭りは終わらない**]
[ほら はじまるよ !
(ほら よんでるよ !)]
え、ええ?
[おにごっこ ! かくれんぼ !
(めかくしおに に たかおに)
こーのゆーびとーまれ !
(はやくはやく !)]
えええ!? ちょっと、まって。
[姿の見えない声に、無駄な制止をかけるけれど、声は楽しげにつながっていく]
[どこに いく ?
(だれと あそぶ ?)]
誰と、ってリ……じゃなくてみんなと!
[(みんなだね !)
たくさんが いいね !
みんな で あそぼう
(かみかくし !)]
ええええ――!?
[カラコロ
下駄の 音はなる]
[それは懐かしい音]
[でもたくさんある音]
[踊りが始まると、下駄の音は増える]
[ざあと吹く風は、
いつの時代も変わらない、
暑い 暑い *―― 夏のもの*]
─夏祭り会場─
ユウキ先生、お仕事、放ってきちゃったの?
…そう、だね。
──、でも。
お祭り、だから。
きっと神様も、遊びたいんじゃ、ない、かな。
だから。
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