ここは…どこ?
[いつの間にか寝入ってしまっていたらしい。目を覚ますと東屋の椅子にもたれていた]
変なところで寝ちゃって誰かに運ばれたのかな…。
やだなぁ、みっともない…。
[起き上がって辺りを見回すと、東屋の外には見知らぬ庭園が広がっている。生垣には大小のバラが咲き誇っていて]
綺麗……ママが良く話していたっけ。
まだ誰かが手入れしていてくれたのね。
[東屋を出るとバラの生垣に近寄り顔を寄せる。豊かな香りが夜気に立ち込める]
[そうして歩いているうちに、この庭園を自分の庭のように感じ始めた。はじめて訪れる場所であるにも関わらず、自分がどこを目指して歩いているのかはっきりと知っていた]
急がなくっちゃ。夜は短いですもの。
[バラの咲き方を満足げに検分しながら歩いていくと、生垣の向こうに人の気配を感じる]
パパ……?
[思わずこぼれた呟きに自分で驚く。親を「パパ」などと呼ぶことは到底あの厳格な父が許さないだろう。それにこの庭園には父が来よう筈もない]
[ちりちりと何かが意識に引っかかったが、気にしても仕方がないと頭を振ると人影に声をかけて歩み寄った]