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[聞き慣れたドアの軋む音微か。
バー独特の重だるいような空気が迎え入れてくれる。
好きだなあ、と"いつも"思うのだ。]
ねえ、『"血塗れ"メアリー』をちょうだい。
ちょっと軽めでさ。
[薄ら笑いのままでわざとらしく注文するのは、真っ赤なカクテル。
その色が好きだった。]
本当はトマトジュースなんて好きじゃないんだけど。
[タンブラーの中が無色透明から赤に変わるのを、カウンターに頬杖をついてただにこにこと見ている*]
[バーの扉は音もなく開く。
女の纏う香りを合図に、バーテンがコースターをとある席に置くのはいつものこと]
甘いのを、お願い
[細い指を頬にあて、唇は弧を描く。
つばの広い帽子を押さえ、窓の向こう、暗い通りに視線を投げる]
[表通りから一歩入った薄暗い道。
橙色の明りに照らされる窓辺に、嫣然と微笑む女が一人いた。
白い頬。黒い髪。赤い唇。
薄桃の帽子は、少女が被れば微笑ましいだろうに、この女にとっては、どこかその肉感的な印象を強めるにすぎず]
ありがとう
[仄かに白みがかったカクテルに口をつけ、濡れた唇を静かに*舐めた*]
[かたり、と味も素っ気もない音が小さく響く。古びてはいるが手入れは欠かされていない、見慣れた扉を開けて、男はバーに足を踏み入れた。
黒く厚いロングコート。口元までを覆う、縁が薔薇じみた青の飾りで彩られたファーの襟。年季が入り少々くたびれた帽子。
小柄な身にはそぐわないような、ぎょろりと鋭い眼差し。そんな些か一般的ではないような出で立ちにも、マスターは何等難色を示さない]
[当然だ。此処は、馴染みの店なのだから]
[カウンターの端の方の席に、男は腰を下ろした。帽子もコートも脱がないまま、マスターを一瞥し]
[ややあって差し出されたグラス、その中に入った薄茶色の液体を、男は襟を下げて一口飲んだ。甘く柔らかい、カルーアミルク。
氷がからりと涼やかな音を*立てて*]
[赤に満たされたタンブラーは、深くマドラーを差しいれ一度軽くステアされる。
マドラーの溝を伝う僅かに粘性のある赤に、うっとりと目を細めた。
カウンターに置かれたブラッディ・メアリー。指を触れ、口元に引き寄せ、唇を示すように一口飲み下し。]
ああ、やっぱりトマトジュースなんて嫌いだな。
[カタン、とタンブラーごと倒して、にっこりと表情は変えぬままで残りのすべてをカウンターにぶちまけた。]
[怒声が響いても、文句が飛んできても、気にしない。
あ、よく殴られもしたっけ。随分昔にそんなこともあったような。
時々起こすこんな癇癪に、ブラッディ・メアリーを出す時点でマスターももう勘づいていたかもしれない。
だってそれくらい、ここにはよく来ているだろ?]
そうそう、マスター、美味しかったよ。
トマトジュース以外は。
[味の感想も忘れないのが礼儀だって、ちゃんと知ってるくらいには。]
あのさ、誕生日言ったっけ。
6月の18日。いい日でしょ。割ともうすぐなんだ。
キミのは? なんか、聞いたかもしれないけど、忘れちゃってさ。
[赤いトマト色の血がカウンターから滴るのをただ背後に、女の黒髪に視線を向けた。]
あら
[カクテルグラスを静かに置いた。
見ない顔だ。そう思ったが、すぐに否定する。
今の見苦しい行動も、この親しげな表情も、このバーとセットで知っている]
ベッドに、
[綺麗に整えられた指先を男へと向ける]
来る?
[緩く首を傾げて、視線をグラスへと流した。
何を飲んでいるか、それが*答え*]
……それとも
貴方の誕生日までおあずけかしら
[見覚えのあるような、ないような。曖昧な記憶の男は、6月18日の男として上書きされた。
買われたことはない。それは断言できる]
私は……
[緩やかに波打つ髪を指先で弄び、俯きがちに視線を男の背後へと送る。
赤が滴る音はほどなく止み、片づけを終えたマスターがカウンターに向かう客へ、お詫びの一杯を差し出す声が聞こえた]
初雪の頃よ
……それ以上は
[まっすぐ立てた人差し指を、キスするように口元へ]
此処では、秘密
[目を細めて、笑みを*返した*]
[タンブラーが倒れる音。液体が溢れる音。少し離れた横からしたそれらに、男は視線だけを動かして其方を見やった。
カウンターの上に広がる赤。物騒なその色は見慣れ、好きだとも嫌いだとも思わないものだ。
赤をぶち撒けた相手に対し、男はただ片眉を動かしたばかりで、別段文句を零しはしなかった。その奇行は、いつもの事、だったから。
勿論、直接被害を被れば話は別だが]
……十一月の、三日だ。
ヴィルヘルム・ライヒが死んだ日だな。
[生誕を問う声には、呟くように返答した。マスターから詫びのグラスを受け取り*つつ*]
ベッドに?
[残念ながら、甘やかなやりとりにはてんで向いちゃいないたちなものだから、その言葉がすぐにカクテルの名前には繋がらない。
ただ、この売春婦めいた風貌と艶めいた声で、"ベッド"の単語が示す意味くらいは、わかる。
そうしたらもしかすれば、答えはその先だ。けど。]
そうだな、とても魅力的なお誘いだけれど、まだ勢いに任せるには早いかな。
ボクの誕生日までは待たなくてもいいけど、もっと夜が更けるまでさ。
[この女が、いつもの常連だったかそうでないかは、別にどうでもいい話。
誰だって等しく、変わらずに笑いかけるだけ。
金輪際馬鹿な真似はよせとマスターが言っても聞こえないふり。
だってこの侘びの一杯を目当てに来ている奴もいたりしただろ?
時々タダ飲みするためだけに、何杯分も先に金を落とす客を連れてくることもあるんだ、ボクの手柄じゃないけど感謝してほしい。]
初雪から産まれたから、きっとキミはこんなに綺麗な色をしているんだ。
羨ましいな。女の人って綺麗だから。
[彼女の指先が弓なる口元に吸い寄せられる。
あまりに官能的で、唇を湿した。]
[男はたくさんの名を持っていた。
現在のところ、この街ではカウコと呼ばれていることが多いから、まあそれが彼の名、ということにしておこう。
はいよ、という声とともにかすかに煙の香りのする水割りがトン、とカウンタに置かれた。
いつもの銘柄、モルト仲間にはせっかくの個性をそんなに薄めるなんて、という苦笑いをされるほどの比率。しかしこれが彼にとっての完璧な水割りだ。]
……旨い。
[しみじみと呟いて、薄い水割りを一杯だけ、ちびちびと飲む。これが彼の日課だった。]
[彼は気がついていない。
いつもの酒を飲むそのカウンタが、いつものあの場所ではない事に。
マスターも、常連たちも、彼の知らない、誰か。
ただ海の香りのする水割りだけが、いつもと変わらずそこにはあった。]
ねえ、その水割りちょうだいよ。
ええと、何だっけ。ウルフ? ジンジャー? レス? キャットテイル?
[いくつもいくつも名前を並べ立てる。
その中に彼の呼び名がひとつでもあったのか、ないのかも知らないままに、催促の手が伸びる**]
んだよそれ。
[並べ立てられた名前らしきもの。
そもそも彼は誰だっけ。記憶を探る。が、途中で面倒になった。]
ああ、そうだな。
んじゃウルフでいいわ。
[答えて、ほらよ、と三分の二ほど残ったグラスを差し出した。
また名前が増えてしまったわけだが、そんなこと、彼は全然気にしない。]
旨いだろ?
[自慢げに言うが、好みを選ぶ酒だ。思い切り薄めてあるとはいえ、何しろ殆ど煙を飲んでいるような香りなのだ。]
ありがとう
[睦言になりきれない言葉には、意識して瞳を大きくさせて頷いた。白い頬に黒髪が揺れる]
貴方も綺麗な顔してるわ
男の人は、努力なく綺麗なんだもの
肌、とか
[紅を差した頬を、さきほど"秘密"を示した人差し指でつついて見せた]
もう冬に入る頃だ。
……オーロラが見られるかどうか、だな。
[その鮮やかとは通じない、むしろ彼の言う雪の方に近いだろう乳白色を掻き混ぜつつ、僅かだけ思案するような素振りをした。
誕生日の話には肩を竦め]
誕生日なんて、そう嬉しいものでもない。
若者までならいざ知らずな。
まあ、嫌いという事もないが。
茶会なら、私は好まない。
[彼が別の姿に話しかけるのを見やり、グラスを傾ける。見慣れたカウンターの奥を見るでもなく見つつ]
["やはり"このバーは男の客が多い。
それはバーという形態故か、時間帯か、窓に女がいるという、この状況がそうさせているのか。
女から視線を逸らす前の、男の仕草。
よく見るものだ。
喉が渇いた時のそれは、何かを欲する時共通のもの。
手を伸ばせば手に入るのに。
勿論、お金があればだけれど]
[並べ立てられるいくうもの名前をよそに、再びカクテルグラスに口をつける。
酔うためでもなく、食事に来ているわけでもないから、カクテルの減る速度はとても遅い。
キャットテイルなんて可愛らしい、などと考えていたからか。
ウルフと聞こえた時には、思わず作っていたはずの笑みが濃くなった。声を出しはしないし、視線も向けなかったけれど]
……あら
[店の奥。暗い照明の光も届きにくい隅の席に、女が一人座っていた。
真黒な帽子に飾られた花は、首の俯きと同じくして、今にも落ちてしまいそうに見えた]
――ほんの少し前――
[頬に触れる指先。少し伸びた爪のかたい感触。
綺麗と言われたって、そうあってほしいと願ったものじゃないから、どうにも的外れに思った。]
努力なく綺麗、ね。
綺麗になろうと思っているわけじゃないんだけれど。
そういう風に言うと、嫉妬する?
[視線を逸らす前のこと。
つつかれた指に自分の指も添えて、絡めて降ろさせる。
なんてことない、ただの女だ。
背けてしまえば、刹那の欲も薄れた。
もう思考回路は、11月3日のことばかり。]
――現在――
ウルフ。ウルフか。わかった。思い出したよ。
そういえばそんな名前だったっけね。
[口から出まかせ数撃ちゃ当たる、なわけもないが、欠片も思い出せてなどいない男の名前をさもはっきりと記憶にあるかのように頷く。
薄めに薄められた水割りはまともな味すらなくなっているが、それで構わなかった。あまり味の違いなどわからない。
けれど煙を飲むとは言い得て妙かもしれない。苦みか、渋み。味がするとも言い切れない、鼻から抜けるだけの、とらえどころのない味わいが喉を落ちていく。]
うん、美味い。非生誕祝いにうってつけだ。
[それは、茶会は嫌いだといった男へ傾けるためのグラス。]
[小さく軋む音を立てドアが開いた。
野暮ったいコートを着込んだ人物はするりと店内に入り、背中で押し当てるようにドアを閉める。
さっと客たちの顔を確認して、それが数刻前まで眺めていたものとは違う事を認めると、まっすぐに奥へと歩いていく。
二人掛けの席の一つに重そうな鞄を載せ、がさごそとテーブルに物を置く。それから上着を壁際にあるコートハンガーに掛けていれば、いつの間に来たのだろう、いつも通りの酒が灰皿が供されていた]
……参るなぁ。
[頼もうと思っていたものが何も言わずに出てきていることに対して、苦笑しか出ない。
それだけ自分が通い詰めているということだろうか。
日中の煩雑な人間関係から逃げたくて、此処ではいつも他を拒絶するように一人で本を読んでいたが、その在り方さえこうして築かれるものがあるのかと気付かされてしまう]
[本当に独りでいたいなら家の中にでも籠ればいい。しかし一人でいることを許容しつつ独りにしないこの店に、どこか苦く、どこか暖かく感じた]
[染み付いたような脂のにおい。
目の前の水割りと似て非なるそれに、くんと鼻をひくつかせる。
頁を捲る音が聞こえはじめたら、盃を交わしに行こうとはしない。]
ねえ、甘いもん欲しい。
砂糖ないの、砂糖。
[呆れるような溜め息をお供に、白砂糖がカウンターに。
定位置はそこだろうと、暗に示す。]
ああ、
……まあ、構いはしないさ。
何でもない日に、杯を捧げよう。
[薄い酒に甘い酒を寄せる。グラスが合わさり、氷が揺れる、涼やかな音が一つ*響いた*]
話わかる。
そういうのって大事だと思うな。
[ちん、とグラス同士の合わさる音。
カウンターに無理やり手を伸ばして砂糖が小山に盛られた皿を取れば、祝い酒のアテも充分だ。
舐めて湿した指に、白砂糖。口元に運んで、しゃりしゃりと食感を楽しんでいる**]
…じゃねえっての。
まあ、なんでもいいけどよ。
[ひとつ増えた名前も、その端から忘れた。
その日暮らしの彼にとっては、名前などそう重要なものではない。]
なんでもない日万歳、ってか。
[昔見た映画の一節だった気がする。が、それが何だったかは思い出せない。]
[ふと、ポケットの中でセルフォンが震えたような気が、した。
取り出してみたが画面には何の通知もなく、むしろ電波が届かないことを示すアイコンが小さく表示されていた。]
…マスター。この店いつから圏外になったんだ?
[記憶が正しければ、たしか先週、ここで女を口説いている最中に他の女から電話があって――]
『ずっとですよ』
[と、マスターは微笑んだ。]
ん、あれ
じゃあ、あれ夢か。だいぶ酔ってんのかな、俺
[女子供並みのアルコールの弱さを暴露しながら、カウコ―ここでは、たぶんウルフだ―は頭を掻いた。]
[ばさり。
褐色の翼はご機嫌に羽ばたいて旋回した。向かいの店の軒先に舞い降りて、重そうな扉をジイ、と見つめる。]
人を殺してみたいと思ったこと…一度や二度は、あるだろう。家族を、恋人を、友人を、その手にかけてみたい、と。
――え?そんなことはできない、だって?はは、君はいいやつだ。
それなら、見ず知らずの誰か なら?
素直になりなよ。
人は誰だって、奥底にそういう願望を秘めているものなんだ。私はそれを解き放つのを、ちょっと後押しするだけさ。
じゃ、ないの。
さっきそうだって言ったのに。変な人。
[おそらくお前に言われたくないランキング第一位だと思われるが、天高く己放り上げる棚。]
なんでもない日なんて、本当はないと思うんだけどね。
ウルフの誕生日はいつ?
[セルフォンを見たり頭を掻いていたりするウルフに、白砂糖のお裾分けを差し出しながら問う。]
[どこかで羽音みたいなものを聞いた気がした。
軽くぐるりと周りを見たけれど、飛ぶようなものはない。
ならば外だろうが、生憎窓際は女の定席だ。]
鴉かな。
いいよね、黒くて。
[羽音が聞こえるような大きめの鳥を鴉くらいしか知らないとも言う。]
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