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[部屋を出て行くイマリの足音が途切れた]
[顔を上げると姿が無い]
え。
まさか。
[ばっと廊下へ出る]
………
[姿が見えない。手近な部屋の戸を
いくつか勢いよくあけるが、いない]
[煙草を持ったまま、
灰が床に落ちるのに気がつかない]
たぶん…あっち
[グンジの問いに少し考えるような仕草を見せた後、海の向こうを指差した。続く問いには首を傾げるだけで、今すぐ答えを紡ぐことはできない。]
[消えた存在を問うプレーチェの声に、目を固く閉じて首を振る。]
ゼンジさんは……。
[なんと言えば良いのだろう。
自分だって判らないのに。
判るのは、彼がもうここにいないことだけ。]
ゼンジさんは、いっちゃった……。
ああ、そうだな。
[鈴木の返答にくすくす笑う。
しかしすぐに、死の気配を感じて辺りを見渡す。
宿舎へ向かおうと歩き出し、途中現れたゼンジとイマリの幻影に瞬いた。
太陽の元で見るそれは、夜のものより不気味に思えた]
何があった?
[突然周囲を見渡すグンジの姿に不安になる。彼について宿舎へ向かう途中、様子がおかしいのに気付いた。]
…だれか、いるの?
[グンジの視線を追って目を瞬くが誰もいない。彼の目には誰かが見えているのだろうか?]
ゼンジ君と、イマリ君。
[鈴木の問いに端的に答え、宿舎の扉をくぐる。
真っ直ぐに広間に向かい、テーブルに置いたままだった死亡届をめくる]
名前が……。
[万年筆で書いたような文字で、空欄に名前が埋まっていた]
カルメ…やき、と、こわいひと?
[グンジから二人の名前を聞いて、もう一度そちらを見る。やっぱり姿は見えなかった。広間へとついていくと、死亡届の名前を覗き込む。]
[プレーチェの声に含まれる乾いた響きが、固く閉じた目を開けさせた。
何かを確かめるようにその目を覗き込む。]
ねえ、ちーちゃんが望んだのは、こういうこと……?
[豚汁が程よく温まったので火を止めた]
『ホズミ姉さん、豚汁まだぁ?』
[とイマリの声が聞こえた気がしたが、その姿はなく。
心にまた広がる不安]
まさか、イマリ、ちゃん?
[ふと見ればそこに居たはずのゼンジの姿もなくて]
ゼンちゃんも…。
[また、空を*見上げた*]
[惰性のように、ほかの部屋も空ける]
[プレーチェとエビコがいる部屋も]
あ…すまん。
[二人はいるのを確認し一瞬安堵するが]
イマリちゃんは…いねえよな。
……………おい、若旦那、ここにいたんじゃねえのか。
[さっき声はこちらからしたはずなのに]
>>12
こういうこと。って?
[どういう事なのだろうか?
目の前の人の、真剣な顔を見ながら考える。人が消えていくこの状況の事を言っているのなら]
違う。
お母さんが、ずっと一緒に居てくれたら良いって思っただけだよ。
せっかく、あっち側から戻ってきたのに。
お母さん消えちゃった。
だから、またお願いしようと思ってお祭りにきたの。
でも、お母さん戻ってこないよ。
みんな消えて行く。
どうして消えていくのかな。ずっと一緒にいられないのかな。
[エビコの目を見ながら、そう言葉を続ける。感情的ではなく、ごく穏やかに静かに]
お月様は私の願いをきいてくれたんじゃないのかな。
どうしてみんな居なくなっちゃうの?
誰が連れていっちゃうの!?
[最後の言葉だけは、叩きつけるように口にした]
誰なのかわかったらどうするつもりだ?
[プレーチェの叫びに冷静に口を挟む。
その後でライデンに近づいた]
船はないのか?
壊れた船でもなんでもいい。
ライドウさん……。
[背後からの声に、振り向き僅かに安堵する。
けれど、彼の問いに答えようとすれば表情は曇った。]
ゼンジさんは、逝ってしまいました。
さっきまで、そこにいたのに。
[死んだ人が、ずっと一緒に。
その願いは、今の状況と奇妙に符合していた。 プレーチェに向き直り、言葉を探す。]
ちーちゃんは、亡くなった人を呼び戻したかったの……。
[それは禁じられたことだと、そう話しても少女に理解できるだろうか。 彼女は死者が戻ってくると、知ってしまったのだから。]
月と、*何を話したの*?
[グンジの言葉>>21が聞こえると、ふっと我に返った]
え?
[答えを探すように、頼りなく視線を彷徨わせる。エビコに『月と何を話したか?』と問われれば、黙って俯いた]
生き物はすべて自然に還る。
それが摂理だ。
[言って、視線は部屋の隅へ向かう。
導かれるように近づき床に置かれた袋を開いた]
藁人形、燃やしたんじゃなかったのか?
俺は生かされてるのか?
[呟き、松明も消えた今となっては燃やす当てもない藁人形を袋に戻して床に置いた。
プレーチェの傍ら、佇む少女の姿が*一瞬見えた*]
>>24
生き物は自然に還る。それが、せつり……。
[グンジの言葉を繰り返す。それは難しかったけれど、何となく理解出来る気がした]
でも……。戻ってきたよ?お母さん。
[だけど。結局は消えてしまったのだ……と思い至って。口を噤んだ]
[温められる豚汁の匂いが漂ってくる。
台所を覗くとホズミと、いなくなったはずの人影が見えた。
テーブル席には物待ち顔で座る男]
何なんだ。
一体。
[首を振り、建物外の*物置をあさりに*]
[空を見ていた視線を下へ。
嫌な考えを振り払うように頭を振ると
いくつかお椀に豚汁を移す]
豚汁、温めたから食べたい人はおいで!
[フナムシがちらほらと居つく部屋には持っていこうとはせずに、
炊事場から顔を出して努めて明るい調子で部屋の方に声をかける。
もし誰かが取りに来たなら、いつものあっけらかんとした調子で
箸と一緒にお椀を渡す*だろう*]
馬鹿、いうんじゃねえ。
[一歩、二歩、後退る]
[動揺は、再び人が消えたせいでも、
ましてや悪友の若旦那が消えたというせいでも無い]
月が、人と話すものか。
あれが、人の願いを聞くものか。
あんなもん、ただいるだけじゃねえか。
そうでなかったらなんで…
なんで俺には何も言わねえん…
[無意識のうちに手を握り締め、煙草がつぶされる]
っ!
[点きっぱなしだった火の熱さで我を取り戻した]
…じるー
[食べ物の匂いにつられて炊事場へ。お椀を渡されれば、両手でしっかりと握り。中の豚汁が冷めるまでふーふーふーふーして、顔を突っ込んで、ぱく。ふーふーふーふー、ぱく。ふーふーふーふー、ぱく。もぐもぐ。]
[ホズミの横を素通りし、水道の蛇口を開け、
勢い良く出てきた水に手を当てる]
[何事か言われれば、]
煙草を握りつぶしたらかっこいいと思ってやった。
今は反省している。
[などと、軽口をたたく。
顔は真顔だが、彼女の方からは見えないだろう]
[ひとしきり冷やして振り向くと、
いつの間にか少年が来ていたようだ]
犬かよ。
…いや、猫か。
[一心不乱に食べる姿を見ると、
思わず表情を少し緩めた]
でも、もういないんだよ。
[言いつのる少女の背をあやすようにたたく。]
ネギヤ君もマシロちゃんも、ギンちゃんも。
みんなみんな、帰っちゃった。
一度向こう側にいった人を引き戻すことは私達には出来ない。
出来るのは、一緒に行くことだけ。
あらあら…顔突っ込んだら顔が汚れちゃうじゃない。
[お椀の中に顔を突っ込む猫少年を少し吃驚した様に見たが、
仕方ないなぁと炊事場の戸棚から付近を取り出した]
[物も言わずに水場で手を冷やしているライデンをちらりと見遣ると
どうしたの?と少し心配したように声をかけたが、
返ってきた言葉にくすりと笑うと]
薬屋もさすがにいつも薬持ち歩いてるわけじゃぁないんだねぇ。
[などと軽口の応酬。
さして気にする様子もなく、布巾を手に猫少年の前へ。
食べ終わったなら顔を拭いてあげようと待ち構えている]
[背をなでる手を少女の手首へと落とした。]
どくどくいってるね。
この音を止めれば、ちーちゃんはお母さんの側に行けるよ。
私も、おじいちゃんもおばあちゃんもいない側に行ける。
[自分がこちら側なのかなど、本当はわからなかったけれど。]
ちーちゃんは、そっちへ行きたいの?
[悲しい顔で首を傾けた。]
[その傷に何かを思い出し、立ち上がる]
船どころか、自転車一台すらないなここは。
[独りごちながら宿舎へ戻り、廊下を進んで行く]
辻村さんいらっしゃいますか。
はーい。
[炊事場を覗き込んでいた首を廻して、どこからか聞こえた自分を呼ぶ声に答える。]
どちらですか?
[のんびりと首を傾げると、廊下の先に教師の姿。]
[炊事場に姿を表したエビコにまだ残っている事を告げようと口を開いたが、言葉は不意にエビコを呼ぶ声に遮られた]
[廊下の先を見遣るエビコの横顔を見ていると、声の主はグンジのようで]
あら、だったらまだあるって伝えてくれない?
[先生もお腹空いたのかねぇ、という言葉にに応えて微笑んだ]
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