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[アンはまだ、帰ってこない。
ロッカとケンも、帰ってこない。
そして、ザクロと、モミジも]
……、
[また、夏が来た。
今年も、祭は行われた]
……
[からり、からり。
涼やかなビー玉の音が、蝉の合唱に紛れて揺れる。手にしたラムネが立てるそれを聞きながら、青年は木陰に置かれた長椅子に座り、白く灼けた風景を眺めていた。首からはやはり、カメラを提げて**]
[かたり、とラムネの瓶を置く。と、かけられた声、現れた姿、知った姿に、こくりと頷いた]
……、
[隣から、尋ねられれば首を縦にも横にも振らず]
……
[ただ黙って、マシロの話すのを聞いていた]
……、……
[それからふと、肩から提げた鞄、財布やカメラの関連品が入れられたそれのチャックを開き。ごそりと中を漁り、数枚の写真を取り出した。
そして、差し出す。それらに映り込んでいるのは、アンに、ロッカに、ケンに、モミジに、ザクロに、 消えていった、人々の姿]
……
人を犠牲にして、叶えたい願いなんて。
俺には、ないよ。
きっと誰かには、あるんだろうけど……
俺は、それなら、消えたっていいよ。
[写真をマシロに渡しつつ、空を仰ぎ]
でも、俺は、消えてないし。
……消える事なんて、ないのかな。
俺はただ、写真を撮る事しか出来ないんだ。
皆。
写真の中では、いつまでも、笑っているのにね。……
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