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― 海辺 ―
[ひやりと、冷たい潮風が彼女の長く結われた髪の房を揺らした。
ざぁ、と何処か音の粒が粗く聞こえる並みの音は少しだけ遠く。
ちゃぷんと、可愛らしく透き通った水音が足元で鳴れば彼女は小さく口を綻ばせた。
けれど、それは波打ち際で素足を海に浸した彼女の足底を、海の方へと流れる砂がくすぐったせいかもしれない。]
今日は、少しあったかいな。
[んー…、と大きく伸びをして、額に手を翳すようにして陽光を見上げる。
海の青とは、また少しだけ違った青の色。
風に流される雲をのんびりと眺め、小さく欠伸をすると、ちゃぷ、と音をたててゆったりと海岸線を歩く。
既に、海には浸かっているのだけれど。]
おっと…。
[片手にサンダル、片手にスカートの裾を持ち、濡れないように濡れないように。]
…あれ?
[もう少しで、店に戻らねばならない時間だろうかと、腕に嵌められた腕時計へと目を遣り、首を傾げた。]
もう、結構のんびりしたと思うんだけどな―――…、お天気がいいからぼんやりしてるのかな。
[どちらにせよ、まだ散歩を楽しむ時間がある事は喜ばしいことだ。
優しいブラウンのカーディガンの下に腕時計を仕舞うと、またゆっくりと歩き出した。]
今日は、誰が店に顔を出すかな…
[定食屋は、夜になれば居酒屋に。
仕事帰りに夕飯がてら酒を飲んでいく街の住人も多かった。
海から出ようかと、素足を水から陽の熱を帯びて温かい砂の中へ。
足首までずっぽりと埋めれば、濡れた素足にぴたりとくっつく。]
よいしょ…っ、と。
[その場に腰をおろして、暫く足は砂に埋めたままに。
もぞもぞと指を動かしては、その温かさを楽しんでいる。]
さて、と。
そろそろ戻ろうかな…。
[長いスカートについた砂を払い、立ち上がる。
素足についた水気は砂に吸われて、払えばポロポロと落ちた。
手に持っていたサンダルをはき、ゆっくりと道の方へと歩んでゆく。]
[吹きつける海風は、少し遠くで発せられた声も彼女に届けたか。
聴き覚えのある声に顔を上げると、声をあげた。]
ロッカちゃーん。
[笑みを浮かべながら、ゆっくりと大きく手を振る。
街に育った者同士で歳も近く、幼い頃から共通の思い出も多かったりする。]
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