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[冷たい石畳を踏むのは踵の無い皮のサンダル
潮風にきしりと傷む髪を靡かせて足音無く歩く
向かうのはひとりの女の家で――…]
あら?
[ほそい指を上げて口許を撫で首を傾げた
扉の前にいくつかの袋が掛かけられている様子
歩み寄って手にすると カサリと紙が手に触れる]
ウルスラ様、ご不在なのですね。
[肩から掛けた鞄からペンを取り出し
不在のメッセージが書かれた紙に承諾の旨、
そして自身の名前を添えてポストへと落とした*]
[それから彼女の布のこしらえものを抱えて
海沿いの雑貨屋へと向かう途中ふと足を止める
大きな白い鳥が翼を広げて空を舞い
澄んだ空気の中降り注ぐ太陽の光を横切った
漁から帰った船がゆったりと岸にその身を寄せ
迎える人達の声がいつもより多いのは
きっと祭りの準備のせいで浮足立つせいだろう]
…今日の平和を、神に感謝します。
[空に向けて零す言葉は歌うように高く。
自分の家を屈強な男が訪れていると未だ知らない*]
― →自宅 ―
[雑貨屋にこしらえものを収め
見るからに襤褸である自宅へと歩を進める。
教会のようでもあり寺のようでもある小さな平屋。
イェンニはそこで人の懺悔を聞くという
神父のまねごとのような仕事をしていた。
小さな頃に此処に流れ着いて以来育ててくれた男が
ここでそうしていたからそれを、継いだ。
近づいてくる、入り口に人だかり。
イェンニはいつも眩しそうに細めている目を眇める]
あの、何かありましたか?
[手近にいる老女に細い声で尋ねてから
返る言葉にその眸を大きく大きく見開いた]
ドロテアが……ッ?
そんな、何故――!!
[村長の星詠み。
選び出された供儀。
告げられた言葉に弾かれたようにあげた顔は
入り口に居た身体の大きな男が歩み寄り
更に告げられる言葉によって更に驚きに彩られた]
わたくしも?
供儀…え、そうではなく。
――人狼の可能性がある、と…?
[容疑者。
という言葉に柳眉を寄せてから目を伏せて。
準備をしてきます、と告げて少しの荷物を取ってから
屋敷への道のりを *大きな男と共に歩き出した*]
ドロテア!
わたくしの可愛い妹。
どうして…!
[自分が拾われたのちに暫くしてから来て
共に育った儚く見えるも芯の硬いを知る少女。
尊敬し、敬うべきと知る村長の星詠みとはいえ
高ぶる感情のままに大股で足を運び
男と共に屋敷へと小走りで向かった]
―屋敷入り口―
[荒々しい音を立てて扉を開くのは大男
その後ろからおずおずと
大きな鞄を背負う、ほっそりとした
女のシルエットが覗き込み
高く良く、通る声を中へと張り上げた]
ドロテア!
[二階建ての大きな屋敷の玄関の天井は高い
エントランスの椅子に座っていたドロテアは
声に気づくと力無い笑みを浮かべて歩み来る。
細い腕を差し出して彼女を抱き締めるイェンニの脇
送り届けた警備兵は外へと大股で出ていった]
―屋敷:玄関―
[女は供儀として此処に在る少女を抱き締め
その肩に顔を埋め 桔梗色の髪を揺らす。
それはどちらが年上か逆転している風]
ドロテア、どうして貴方が。
嫌です、 供儀なんて…!!
[ぎゅうと力を篭めるをドロテアが宥める。
暫くの間を経て、言葉を交わして。
漸く落ち着いてから顔を上げて、息をついた]
[少し疲れたから宛てがわれた部屋へ戻る、
というドロテアを心配げに見送ったあと、
おずおずと遠慮がちに屋敷の中、足をすすめた。
玄関からすぐの場所から人の気配]
あの、…
[覗き込んでソロリと 小さな声を、漏らした]
皆様…容疑者、でございますか?
[見知った者達の顔は僅かに安心感を齎して
強張った顔が少し、和らぐ]
そう、ですよね。
長老様ももう、お年ですもの。
なんて事ない物がきになってしまわれた、
きっとそれだけですわ。
[ニルスの笑みに安堵めいた笑みを浮かべる
とは いえ
ほそりとした指の背をくちびるで噛むのは
やはり不安が勝る時の癖であり
彼の思う通り言葉は自分に言い聞かせる態]
収穫祭のお手伝いができないのも、
心苦しい、のに。
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