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―― 夜/町外れの森 ――
昼間、手品師見習いの少年に起こって立ち去ったドロテアは、そのときした決意を胸に秘め、誰にも言わずに夜の森へとやってきていました。
「ぜったい、いるんだもの。
証拠もって帰るんだから……」
見慣れた森でも、夜の闇の中だと不気味に見えます。
ちょっとおびえたように立ち止まり、けれど意を決して歩き始めました。
それが死へと続く道だとも知らずに――
―― 朝/町はずれの森 ――
深夜に森で起こった惨劇の悲鳴を聞いた人は居るでしょうか。
朝の光に照らされた森の中。
大きな切り株の近くに横たわったのは――血に濡れたドロテアの姿。
獣に食べられたような後がそこここに残って居るものの、それがドロテアだと一目でわかる姿でした。
そして不幸な町の人がその姿を見つけるまで、ただしずかに*横たわって居るのでした。*
―― 朝/自室 ――
[昨日はペッカの家にいったあと、町をぶらぶらしてから夕方ぐらいに宿へともどってきていた。
それからあれこれと手伝い、自室に戻って――起きたのが今という。]
うわあ……
[寝すぎだと、父親に怒られて頭を抱えながらもそもそと支度をして、宿の一階へとでていくのだった。]
─前日/ペッカの家─
あれ、ベルン。アンタも来てたのかい?
[同僚と話す先客>>1:86の姿に軽く、首を傾げ。
伝言に立ち寄ったのだと聞くと、土砂崩れ現場の方へふと視線を向ける]
……あの子も頑張るわねぇ……。
少し、頑張り過ぎてる気もするけど。
[一人で作業をしているのは知っているから、口をつくのはこんな言葉。
それじゃと手を振り離れるベルンハードを見送った後、同僚としばし語らいの時を過ごす。
話すのは、刺繍の図案のことや、これから産まれる子供のこと。
それから、外を駆け回る女自身の恋人の話。
他愛もないといえば他愛もないやり取りで時間を埋めると、帰途についた]
[帰る道すがら、ドロテアを探すものの、結局その姿を見る事はなく。
明日になったら家に行ってみるか、と思いながら帰宅し、翌日]
……帰ってない?
[朝一番に訪れた少女の家で聞いたのは、昨夜から戻らない、という言葉]
そっか……じゃ、アタシも探してみるわ。
……ああ、いいのいいの。どうせ、今は仕事も進められないしね。
[手間をかける、という家人に笑って言って、歩き出す]
……無茶な事してなきゃいいんだけど。
[昨日、最後に見た姿を思うと、不安が先に立つ。
ともあれ、それはひとまず押さえつけて、少女を探して*通りを歩いた*]
―― 宿の一階 ――
[あれこれと用事を済まして居るときに、どこかざわついた空気を感じて周囲を見る。
いつも来る人たちのうちの何人かが、どこか思案げな顔をして、昨夜からドロテアの姿が見えない、と呟いていた。]
――
[それを聞いて、一瞬手を止める。
僅かに息をついてから、暫し考えるように首をかしげ――]
まあ……昨日も顔を見てないし、探しに行くべきかなあ……
[どうしようかと、悩む素振りで手にしたモップの柄に顎を乗せた。]
―― 自宅 ――
んー?
[カーテンの隙間から差し込む日光に顔を顰めた。
昨日、帰路にベルンハードと話したことが脳裏に蘇る。]
ドリー。
―― →森 ――
[森の中には小さな家がある。
村一番の老婆が亡くなって以来、空家のそこ。
玄関は鍵がかかっているが、台所の窓は開けることが出来るのだった。]
お邪魔します……
[ぎし、ぎし、と重い音がする中、薬品が残されたままの戸棚へ近づく。
ドロテアがいないと騒がれていることも、ましてや、すぐ近くに遺体があることも、アイノはまだ知らない。*]
―― 自宅 ――
[朝食の席。ペッカは、姉の話を聴いていた。
前日の姉は、来客があって楽しく過ごしたらしい。
先に来たベルンハードは長居しなかったが、彼と
話すとのんびりした気分になれて好いという話。
ウルスラと刺繍の話をしたが、古布をほどいた糸を
使えば淡い表現が出来るかもしれないという話。
彼女のよいひとはまだひみつと詮無く勿体ぶる話。
あまり気の利いた相槌も打てないペッカだったが、
臨月の姉が和やかに笑むのを眺め朝食を摂った。]
――朝、宿の一室――
……むかつきますね。
[目覚めはあまりよくはなかった。昨日のことを思い出して独り言つ。
なにを言ってもウルスラにはさらりとかわされて。そのまま別れてしまえば苛立ちだけが残った。]
僕も気が立ってるんでしょうけど。早く開通すればいいのに。
[いつもの燕尾服に着替え、外にでる。]
戻ってない……?
[食堂に行けば、戻らぬドロテアが騒ぎになり始めていることを知った。何か知らないかと言われれば、首を振る。]
僕が知るはずないでしょう。彼女には嫌われてるんですから。
[僕も彼女が嫌いですよ、なんてことは言わなかった。]
―― 森からドロテアの家へ ――
[――数人が運ぶ戸板に、横たわる亡骸。
森で見つかったドロテアは、村人らの手によって
無残な死の知らせと共に生家へと運ばれていた。
手伝いに呼ばれたペッカは、皮膚だけで体に繋がる
ドロテアの足が千切れぬよう、支えながら歩いた。]
… ……
[誰も口を開かぬ道行きは酷く重苦しく気味が悪い。
紅いしたたりは赤黒いねばつきへとかわりゆき――
恐ろしく長い時が、それでも移り行くのを示した。]
[ペッカは、呆然と光景を瞳に映す。
喰い散らかされた骸へ白布がかけられるのを見た。
その白へ、零れた命の色がじわじわと広がるのも。
『 人狼は 居たんだ。 』
深く暗い穴の底から昇るような怨嗟の声を聴いた。
死者の父親が蒼白な面持ちに怒りを混ぜるさまも。
――血腥い匂いを引いて、列は村へと向かう。]
[少女を探していたウルスラとは通りで行き会った。
ペッカは、目が合った彼女へぎこちなく首を振る。
遠巻きに、或いは駆け寄って。嘆きの列はゆく。
…村衆の列。誰からともなく、呟きは漏れ出す。
『 …狩り出せ。 』
『 追い立てろ。 』
『 人狼に、復讐を。 』
村を覆い渦巻き出す何かを感じて、ペッカは吐気と
悪態とを同時に堪えるような面持ちで列に従った。]
[亡骸のちいさな手が握り締めているのは、
僅かに毟り取ったらしきおおかみに似た獣毛。
…やがて、ドロテアの部屋から日記が見つかる。
記された直近の日記に、僅かでも名の挙がった者は
人狼の血を疑われ集められることと*なるだろう*]
―― 町の通り ――
[どうしようかと迷って居るうちにざわめきが大きくなる。
嘆きの悲鳴が聞こえ――、外へと出てみたものは、森からやってきた葬列だった。]
……まじかよ……
[ドロテアが、人狼が。
復讐を。
口々にいう人々の声が聞こえる中。
ゆっくりと近づいていけばペッカの姿が見える。]
――……
[その姿に声を掛けることはできず、ただ僅かに瞳を伏せて。
その視線の先、亡骸が握った金色の獣毛がいやに目に付いた。]
[一階で、いつも通りの朝食を取っていれば、次第に大きくなるざわめき。]
『ドロテアが』『人狼が』『復讐を』
人狼……? まさか本当に?
[馬鹿にするような口調は、昨日ほどの勢いがない。ミルクを飲み干し、確認のために外へ向かった。]
[ドロテアの葬列は生家へと向かい。
そしてドロテアの日記を見つけた人が、疑わしきものの名を声高に呼ばわる。
その中にはベルンハードの名も含まれて。]
えー……
[疑われて心外だというように眉をひそめ。
ウルスラやペッカ、ラウリにアイノの名前まで呼ばれればさらになんで疑われるんだと、憤慨する。]
疑わしきは罰せよじゃねーだろお……
─町の通り─
[ざわめきが耳に届いたのは、しばらく歩き回ってからのこと。
切れ切れに聞こえる声に、嫌な予感を覚えてそちらへと向かい]
……な……。
[鈍い色を滲ませる、しろ。
それが何を意味するのか、つかめず。
彷徨わせた視線は、列に加わるペッカを捉えるものの。
彼から返されたのは、ぎこちなく首を振る仕種]
……なんで……よ?
[口をついたのは、そんな、呆然とした、呟き]
[知らず、呆然と立ち尽くすものの。
日記に記された名を元に疑惑をかけられたならひとつ、ふたつと瞬いて]
……ちょ、ちょっとちょっと。
幾らなんでもソレ、短絡じゃないの?
[上がるのは、先とはまた異なる理由で呆然とした、声]
う、ぁ……。
[赤黒く滲んだ白い布、それが示す事実に口元を抑える。
布の端からちらりと見えたのは、人間の力では絶対に無理であろう、噛みちぎられた切断面。街では見る機会なぞ無かったもの。]
……ただの狼じゃないんですか? その狼が人に化けているって言う証拠は?
[名前が読み上げられれば反論するけれど。力で叶うはずもない相手を前に、その声は生意気な色を潜めている。]
[短絡、との言葉に返されたのは、ならば何故昨日、少女を探していたのか、という問いかけ]
はぁ?
なんだか思いつめてるみたいだったから、話して落ち着かせようと思ってただけよ。
怒らせた理由の一端は、アタシでもあるからさ。
[平静を保とう、と念じながら、問いに答える。
けれど、声の端々に苛立ちが滲むのは、隠せない]
[しかし日記を手にしたドロテアの父は、暗く澱んだ瞳のまま。
『違うというのなら、人狼を、娘を殺した者を差し出せ』
ただ、呪詛のごとく、呟くのみだった。]
……うわあ、一番やな展開……
[ぼそりと呟きながら、呆然とするウルスラや、証拠がどうこう言うラウリを見る。]
この町の森の狼はふつう町の近くに出てこないし、人も襲わないんだよね……
ほかに食べる動物がいるから――
[狙われるのも、人間じゃなくて町で飼ってる家畜だったりするのだから、人間が狼に襲われることなど、ほとんどないと、告げる。]
―― 森の空家 ――
ひっ!
[足元を走る鼠に声を上げる。
窓の外には人の気配。
覗き込むと、運ばれるドロテアが木々の合間に見て取れた。]
婆様、どうしよう。
[羊皮紙が入った封筒を胸元に隠し、蹲った。]
[ドロテアの死を契機に、今や村衆の意見は
人狼などいるものかといった意見の壮年の男らから
迷信深い長老ら寄りのものへと様変わりしていた。
挙げられた名の者たちは異を唱え、ペッカも言う。]
人狼なんて居ねぇ、たァ言わねえよ。
世間は広ぇ。海にゃ、
熊よりでけぇ烏賊もいるし、歌う魚もいる。
空飛ぶ魚を喰ったこともあンぜ。
この村にだって、何か居たっておかしかねェ。
―― 森→ ――
……ドリーが? どうして?
[行き会った人が『人狼』について話し掛けてくるが、どこか歯切れが悪い。
アイノがその理由を察したのは、他でもない、ドロテアの父親に手を引かれたときだった。]
待って下さい、日記って、何のことですか?
離して……!
ドロテアの仇は、討つさ。討つだろ。
この村の者ンならな。
けど、――俺ラを疑って――
どうすんだ、全員縛り首だってのか?
[名を挙げられた者を見回して、
ペッカは冗談じゃねえと吐き捨てる。
中に、印象のよくなかったラウリの姿を見つけると]
よう手前ェ、こんな時だけ
ナニしおらしぶってやがんだよ。
そうだよ、それに俺達のなかに人狼がいるって決まったわけでもないだろう。
[ペッカ>>24に追従するように頷きながら訴え。]
それに人狼はもう逃げたかもしれないじゃないか。
間違った人を殺してしまったら、どうするんだよ。
[ラウリへと言葉を向けるペッカの姿を横目に、町の人たちに訴えてみる。
けれど、ドロテアの復讐を求める人たちには届かず、いらいらと髪をかきむしる羽目になるだけだった。]
例えあたしが人狼だとして、ドリーを襲うわけないじゃないですか!
[ドロテアの父親が怯んだ隙に、腕を払って駆け出した。
雑踏の中、見慣れた背中にぶつかるように走り寄って、名を呼んだ。]
ペッカ……
ねぇ、どういうこと?
……僕には理由がありません。僕は旅人なんだ、ここで誰かを襲う理由はないし、彼女にだって恨みはない。
僕が犯人なら、死体を隠して時間を稼いでその間に村を出ればいいだけの話です。
[非力な少年は考える。いきり立った村衆を前に、感情的になるのは得策ではないと。『愛想』はいまこそ使うべきなのだと。
だが、水夫にけんか腰に話しかけられれば、メッキはすぐに剥がれた。]
理由があるのは村の人でしょうねぇ。殺してしまえば逃げ場がない。
僕がいる今のうちに事件を起こして、僕に罪を着せたかったんじゃないですか?
『間違った人を殺してしまったら』――
ドロテアの親父さんは、それでもいいだろうよ。
[訴えが聞き入れられず苛立つベルンハードへと、
ペッカも焦燥を滲ませながら低い声を添える。
犯人を引き渡せと言われ戸惑うウルスラへは、
苦りきった面持ちを向け]
ウルスラ姐、取り合えずわかったとでも
言っとかねえとやばいんじゃねえか…コレ。
おっさんたちまで見境なくしてやがらァ。
…わかンね。
けど、やべェし。
[背に飛びついてきた相手がアイノと知ると、
ペッカは眉根を寄せて片腕を其方へと回す。
剣呑さを高める村衆の視線からアイノを隠す態]
ちっとは、聞いたろ。
ドロテアの仇を討ちこそすれ、
喰い殺した犯人にされるなんざァ、真っ平だ。
[はぁ、と僅かに吐息をこぼす。]
いったい、どうしろってんだよ……
[アイノがやってきたのを見る。
ペッカやウルスラ、ラウリへと視線を移して、もういちどため息をついた。]
俺らの中に犯人が居なかったら住人全員殺していく羽目になるぞ。
それでも――
[『やる』とドロテアの父親の声が重なれば顔を蹙めた。]
返して。
あなたに出来ないなら、師匠でもなんでも呼んで、ドリーを生き返らせて。
[声を荒げることもなく、淡々と、ラウリへ向ける言葉を紡いだ。]
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