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傷つけたくない、と、
人間だと、言うなら、
やめてください…!!
[じっと自分の肩を握り締めて
耐えるように見詰めていたけれど。
2度目に振り下ろされたナイフに、
堪らず地面を蹴って駆け寄った。
―――が。
伸ばした手は、何も、掴めなかった]
[手を伸ばしただけで止める事が出来なかった。
その手をゆっくり下ろせば肩を震わせ。]
…ばかやろう。
[行き場の無い悲しみが全身を覆う。]
[崩れ落ちたレイヨの身体
見開かれた目からほろほろと透明が溢れ
一歩 二歩と歩み寄り
その側に膝を着いてペタリと床に座った]
…レイヨ、さん
[赤が広がっていく。
呆然としたまま、その手を取って目を伏せた]
[自分に何か力でもあれば、彼を殺さずに済んだかも知れない。しかし、そんな仮定は無意味だ。自らの気持ちの慰めであり、言い訳に過ぎない。
そう思えばこそ、落ちる言葉は謝罪だけ。
血で汚れたナイフを見つめるも、眉はやはり顰めたまま緩められることはない。]
……君は、ウルスラを傷つける言葉を吐くレイヨを見て、何とも思わなかったか?
君は、ウルスラと親しいはずだ。なのに何故、……彼を止めることもせず見ていられた?
[>>0 イェンニの制止に対し、ニルスが返すのは疑っていることを隠しもしない言葉。
どうしても荒む気持ちのままに発せられたそれは、常よりも低い声で響いた。]
レイヨ…。
[絨毯が赤く染まって行く。
その赤色に包まれるように座り込むイェンニ。
彼女を見ればニルスの言葉を思い出し、悲しみの気持ちも癒えないまま、そっと首飾りを取り出せばそれを通して彼女を覗いてみる。]
………!?
[それは体験した事の無い出来事で。
首飾りを通して今まで何度も人々を覗いたが、ガラス玉のくすみからはその人達は映らなかった。
それが今、ハッキリと。
そこに座り込む彼女は映っているのだ。]
ニルス!!
[とっさにニルスにをかける。
彼が振り返れば、手に持つ首飾りで何が言いたいかは理解してもらえるだろうか。]
ニルス様。
わたくしは、ウルスラ様を慕っておりますが…
親しさに順位をつけてそちらに傾倒することは、出来ませんわ。
[ニルスの敵意がピリピリと肌を焼くのにくちびるを噛む]
レイヨさんにとってウルスラ様が人狼なら。
それが真実なら、と…少しでも思えば。
わたくしには、
どちらにかける言葉も見つけられません。
[そして、ユノラフの叫びに。
細めた目を向けて、口端を下げた]
あら…、
ユノラフ様も、嘘つきでしたの。
困りましたわ…
[眉の端を下げて、溢れる涙を指で掬った]
……すまないな。
[>>2 気落ちしたかのようなユノラフに向ける謝罪と共に、僅かばかりの笑みを向けた。
しかし、彼の言葉が正しいとするなら、ニルスが手に掛けたのは人狼ではない。人だ。それはどうしても、ニルスの肩に重みとして圧し掛かる。]
しかし、男に「横にずっと居る」と言われても、あまり嬉しくないな。
……今日は私にベッドを使わせろよ。
[常と同様を装う口調で冗談を残し、ニルスは血まみれのナイフと服のまま居間の扉へ向かった。
>>5 そこに、ユノラフから掛かる声。手に持つ首飾りと、その表情から言いたいことは察せられた。つまり、「当たり」であるのだと。]
そうか……しかしね、イェンニ。
より親しい者を信じたくなるのが……情に絆されるものこそが人間ではないかと、私は思うよ。
[それは言外に遠回しに、彼女が人ではないのだと示す言葉。ニルスはクレストとウルスラの様子を窺うように、順に視線を向けた。
そうして今度こそ居間を後にする。とにかく今は少しでも休みたかった。
それに、ユノラフに話すべきこともある。ちらりとユノラフに視線を向け、同行を促した。**]
[眉をしかめ]
俺ぁ、ニルスの名前言っただけなんだが。
何でお前さんに嘘つき呼ばわりされてんだ?
[首飾りは元に戻してイェンニを見つめる。
ニルスから謝罪の言葉と、冗談の言葉を同時に聞けば]
勿論だ。
俺だって正直嬉しくない。
が、一緒に居る。文句あるか。
[憎まれ口を叩けば、促されるままにニルスの後を追う。
ここにレイヨを置いたままにしておくのはしのびないと考え、ニルスに了承を得れば身体を静かに抱き上げて。
アイノの横まで運べば静かに降ろしその場を後にした。**]
[ユノラフの言葉に、泣き顔を向ける]
…そのポーズでその声ですもの。
逃げろ、とか、近付くな、とか、
続けられそうですわ?
[言って目を伏せた]
[脇腹の痛みに耐えながら、ニルスとレイヨの攻防を見守る]
[その決着は、あっけないほどにすぐについた。レイヨの身体から吹き出した鮮血が、辺りに飛び散り、ニルスを汚した(>>1)]
………。
[息絶えるレイヨ。その言葉が、耳に残る]
“どうせ殺されるんなら
誰も疑いたくなかったり、殺したくなかったりする人にされたいなぁ”(>>3:147)
[それはおそらく、自分のこと」
[レイヨを許せない、と思ったのは確かだ。だが、果たして]
[ニルスのように、自分の手を汚す事が、出来ただろうか――]
[ニルスとユノラフが伴って立ち去るのを、少し羨ましそうに見送り(>>10)
座り込んだままのウルスラに杖を手渡し、立ち上がらせる]
…………。
[身体を洗って、傷の手当てをしてくる。目でそう告げて、彼は浴室へと――]
[風呂から上がると、彼はマティアスの部屋に向かった。ここなら、傷を手当するものがあるはずだから、と言い訳をして]
[傷も、深いことには深いが、縫合が必要な状態でもなく、ましてや死に至るものでもない。消毒をして包帯で圧迫していれば、すぐに止まるだろう]
[長い入院で周囲の患者に目を配っていたから、医学的な知識はなくとも多少の事は体感で分かっている、つもり]
[ニルスとユノラフ、そしてイェンニ。そのやりとりは、当然耳に入っている]
…………っ。
[イェンニが、人狼なら。何故、ドロテアを?]
[あの嘆きは、悲しみは、偽りだったと?]
[わからない。わからない]
[物言わぬ友人を見やり、音もなく問いかける]
――君を殺したのは、イェンニ?
[当然、答える声は無く]
[イェンニが人狼だったとして、手を下す事が出来るだろうか。マティアスを、こんなふうにぐちゃぐちゃにした人狼――だけど、憎む事が、恨む事が、出来るのだろうか]
―――。
「この手で、ニルスのように、殺す事が……この手で、友の仇を打つ事が……出来るのだろうか]
[答えが出せないまま、物言わぬマティアスに目で語りかけ、その荷物を手に取る]
[中には、代えの包帯とガーゼ、痛み止めなどの薬、睡眠薬に消毒剤(>>2:86)。塩漬けニシンの瓶(>>1:147)が出てきた時は、口元に笑みが零れ]
………!
[ふくろうを模った小さな木工品を見つけ、目を見開く。塗装ははがれ、あちこち欠けているが、間違いない。
初めて会った時、ニシンの塩漬けのお礼にと、自分があげた、故郷から持ってきた民芸品だった]
[もう、枯れ果てたと思っていたものが、静かに頬を伝う]
[……しかし、今朝のものとは、意味が違う。彼はすぐに涙を拭い、真っ直ぐに前を見つめた]
[その瞳に宿るのは、強い光]
――マティ。もう少し、休んでいて下さい。
――仇は、僕が打ちます。
[唇から、揺ぎ無い意思が、紡ぎだされた]**
[震えるナイフは、アイノのものを受け止めたと同じようにできそうで。
それほど脅威は感じず。
ウルスラの背後からレイヨやクレストが取り押さえに来るのを見たときには、バランスを崩したウルスラが寄りかかってきて]
おっと……
[なんとかその身体を受け止めた時に、かすかに血の匂いを感じた。
その匂いの元――クレストへと視線を向けているあいまに、レイヨとウルスラの間で糾弾がはじまり。
ウルスラを床へと下ろしながら、周囲の話を静かに聴いていた。
命を狙われたばかりだと言うのに、怯えも見せぬまま]
[騒ぎに気を取られていて、ニルスやイェンニがやってきたことには気づかず。
ニルスがナイフをひろうときにようやく気づき。
そしてニルスがレイヨを糾弾しはじめるのをきく。
どちらが正しいかなど、気にしていない風に、ただやり取りを眺めて]
――やれやれ、死に急ぐ事もなかろうに……
[ニルスに命を絶たれたレイヨをみて、小さく呟き]
[首飾りを手にしたマティアスがニルスを呼ぶ姿に、おや、と瞬いた。
どうやら、みつかったようだ。
すすり泣くウルスラへと視線を向けながら、交わされる会話を聞き]
……イェンニが人狼だというのか……
[ふむ、と呟く。
クレストがウルスラに手を貸すのをみた。
さすがに殺しかけた相手の手を借りるのは嫌だろうと名乗りでもせぬまま。
人が居なくなるまで居間に居つづけ]
――さぁて、きびしくなってきたものだ。
[そんな呟きを零して、ゆっくりと二階へと上がっていく]
[人狼を警戒するように、屋敷の中はさらに静かだ。
眠りについたウルスラの部屋もまた――]
……
[廊下を歩くと、血の匂いがする。
それはドロテアの部屋からだけではなく、もう一部屋増えている。
あけなくとも、ウルスラの部屋がどうなっているのかわかるほどに]
[赤く染まった部屋の中で、柔らかい部位ばかりが食い散乱された女の肢体がベッドに転がっている。
甘くすらも感じられる血の匂いに視線を向け。
けれど、その部屋を開くことなく。
自室としている部屋へと戻って、夜明けまで瞳を閉じた*]
[ゆっくりと、目を覚ます。もうだいぶ見慣れた、自分の部屋で]
………。
[疲れていたのだろう。いつもよりだいぶ、目覚めが遅い]
[それでも、頭は何日かぶりにすっきりとしていて。傷口が開かないように、ゆっくりと身支度を整える]
―――ッ。
[時々、突っ張るような痛みが走るのは、仕方がない]
[結局、レイヨは何者だったのだろう。ニルスが言うように、本当に人間であったのだろうか――]
[それを否定するという事は、ユノラフを否定するという事でもあるのだが]
[魂の色が見えるというウルスラなら何か分かるかも知れないと思い、彼女の部屋に向かった]
………。
[ああ」
[彼の気持ちが、沈む。部屋に近づくごとに感じる、この淀んだ匂いは……]
[部屋に誘うのは気が引けたとはいえ、ウルスラをひとりにした事を今更ながら、後悔した]
[ウルスラの部屋は、赤く、染まっていた(>>26)。辺りに散らばっている“もの”が何なのか……考えたくはない]
………っ。
[心臓が、音を立てて締め付けられる感覚]
[苦いものが、喉の奥からこみ上げてくる。鼻の奥が、つんと痛む。視界が……じわりと歪む]
[事故とは言え、彼を刺してしまった事を涙混じりに悔やんでいた(>>3:121)彼女を、その細い背中を、大丈夫だとあやすように叩いていた(>>3:124)のは、まだ昨夜の事]
[数年前に出会った時から、音に頼らないコミュニケーションを交わし続けてきた(>>1:158)ひとは……もう、いない]
[彼女が持ち込んだのだろう。完成間近の繕い物(>>0:15)は、何故だか綺麗なまま、亡骸に掛けられていた。
それはあまりにも、この惨状には不釣合いで]
………。
[ゆっくりと、彼女に近づく。
亡骸にかけられた繕い物は、腹部を中心にして不自然にへこんでいたが――そこからはみ出している、繕い物を施してきたその手は……綺麗なままだった]
[ヴァルテリを刺そうとした昨夜――。
この手を汚させたくないという自分のエゴで、彼女の思いを圧し止めてしまった]
[ウルスラは――。
ヴァルテリを刺せなかった事を悔やんでいるだろうか]
[見開かれたままの瞳を閉じさせ、彼は、その額に掛かる前髪をそっと梳いた]**
[塞がりきっていない傷口が、じくじくと痛むのを気にもせず――]
[ただ、ウルスラの傍らに居続けるのだった]**
[ニルスの部屋に戻れば、一気に身体に強張らせていた力が抜け、どっと疲れが出て来てしまい。
そのまま床に座り込んだ。
ニルスを見ると、彼もまた疲れた表情をしていて。
お互い服が血に染まってる事に気が付けば、先に身体を洗って来いと勧め、自分も着替えを取ってくると伝え部屋を出る。
自室に戻れば簡単に身体を拭き、着替えを済ませて彼の部屋に戻る頃には、ニルスも着替えを済ませているだろう。
椅子に座り、後は静かに彼の口から何か話されるかを待つが、彼から疲れたと聞けば頷いて。
お互い明日も生きると約束を無理強いすれば、床に毛布を敷してそのまま横になる。]
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