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貴方も彼女と同じかしら。
誰かの為に、なんて。安っぽいヒロイズムで自分を捨てられるお馬鹿さん?
[くすくす]
[くすくす]
[風に乗り、嗤う声は遠く何処までも。
こんな時代だからこそ、誰を犠牲にしても生きねばならないのに]
――……本当に、馬鹿な子。
[まるで妹のように可愛がってきた少女へと。
呟く声は酷く苦いものだった]
[口を開き掛ける男の言葉を待つけれども、答えはなく。
改めてその容姿を見れば、この辺では見ない顔だと気付く]
貴方珍しい格好しているわね。
[目を覆う古い包帯と色の抜けた髪にどうしても目は行きがちになるけれど、その下の服装もまた、この辺ではあまり見ないもの]
ひょっとして――…
[風の噂に聞いた事がある、闇に葬られた施設の話を思い出す]
[特殊な人間を作るための、交配組織。
そこでは非人道的な実験が幾重にも繰り返されたと言う。
そこも今では、何か事故でもあったのか汚染されて廃墟と化したと聞くけれども]
……まさかね。
[膝を突く男の姿を見ながら一人語散る。
生存者は誰もいなかったと、聞いていたから。
こんな話し、今は廃業した情報屋が酔った時に口にした与太話だろうから]
[少女の足へと口接けを捧げる姿は、まるで聖人に額づく殉教者のそれ。
敬虔な仕種にも見えるその姿に、どこか禍々しいものを感じてふるりと身を震わせた]
…………。
[チリ…と、金属の乾いた音が耳元で響く。
風に煽られた耳飾りの音だと気付いたのは、少し経ってから]
ドロテア。
私はもう行くわ。あんたの使ってた部屋も処分しなくちゃいけないし。
……天国で、また逢いましょう?
[もっとも自分が天国へ行けるならば、だけれど。
そう胸の裡だけで呟いて、
殉教者と聖女の二人に背を向けると、塒としている宿へと戻っていく**]
[地の匂いにむせる路地の一角で、壁に背を預けて女は立っていた。
背後からこちらへと向かってくる足音の方へと顔を向けて]
はぁい。
久し振りに、遊んで行かない?
[紅で濡れる唇で弧を描いて。
仕事を終えたばかりの女へと声を掛ける]
ぼったくりだなんて、酷いわ。
それだけのモノは、ちゃんと提供しているはずよ。
[近づいてくる女へと腕を絡ませて、嗤う。
紅を思わせる赤い舌をちろりと出して、舌舐めずりするように唇を舐めて]
最近あがったりなのよ。
お得意様を誰かさんが磨り潰してくれるから。
……どうしてくれようかしら?
[上目遣いで見上げて、それから腰の日本刃へと視線を移す。
まだ血の匂いがするそれをうっとりと見詰めた]
[内股をなぞる指の動きに、熱い溜息を耳元に零すと、
柔らかな耳朶を甘く唇で食みながら]
……それは、んッ。否定しない、けれど。
[女の言葉に頷く様に笑う]
でもそれは……ギブアンドテイクでしょう?
貴女も私も。美味しい蜜は訳合わなくちゃ。
[ね?と吐息交じりに囁くと、
細い指がサーディの唇を撫でて]
……もう一つ、私のお願い。
聞いてくれる、かしら?
蝮は美食家なの。
[ふわりと笑んで、身体を離す]
……この近くに私のヤサがあるの。
詳しくはそこで。
[こっちよ、と誘い背を向ける。
黒い髪と帽子に結んだ飾り紐をひらりと靡かせながら、何処か据えた匂いとそれを隠すかのように焚かれた甘い香の香りがする部屋へと、サーディを招くだろう]
私の仕事、知っているでしょ?
ちゃんとお湯も出るわ。
[サービスにしておいてあげると笑う。
まだ濡れた髪の侭、バスルームから出てくる女へとタオルを一つ放り]
……ある人をやって欲しいの。
期限は明後日までに。
お願いできて?
[指を三本立てる。
付き合いの長いサーディならば、それが破格の報酬である事は見てとれるだろうか]
……ターゲットは、ドロテア。
今度の生贄に選ばれた、私の可愛い妹。
[ソファに座るサーディを後ろから両腕で包むと、素肌の肩に頬を乗せて]
あの子を神なんていもしないものにはあげない。
………ねえ。お願い、できて?
裏……?
随分と用心深いのね。
[膨らみを撫でる小太刀を手に取り、その先へと舌を這わせて見上げて]
これは私の意地。
あの子の命を神だなんて胃もしない者の為に遣いたくないの。
それならいっそ……私があの子に死をあげる。
[小太刀を這う舌はゆっくりと登り、何時しか柄を握る指先を擽る様に舐める。
ぬらぬらと唾液の糸を引き、蝮の舌は愛撫するようにその指先を濡らしながら]
………サーディなら判るでしょう。
私の、気持ち。
……んっ。
[口内へ潜り込む指を甘く食み、見上げる眸に滲むのは情念の炎]
……大事なものは、お金。ええ、その通りよ。
神なんていやしない事、あの子に教えてあげて。
そして私に見せて。あの子が赤く染まる所を。
[指を口から離し、その手を胸へと誘い笑う。
下卑た笑みを浮かべる唇に己が唇を重ねて。
それを始まりの合図代わりに、甘い香りに満ちた部屋の中で二つの熱い吐息を幾重にも重ね合うのだろう**]
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