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― 祭壇近くのビル ―
[乾いた風に髪を躍らせながら、音もなく地上を見下ろす情報屋の後ろから、覗きこむように顔を寄せる]
本当に、ね。
サーディは使える良い子。
[白装束を次々に屠る姿を眸を細めて見やり、くすりと何処か歪に微笑んで見せる]
でもこんな所で覗き見なんて趣味が悪いわ。
サーディに知られたら、くないが飛んでくるかも。
[風に踊る髪を手で押さえながら]
私は良いの。
これも私の仕事だから。
女は色々と大変なのよ。
[身体にしみついた甘い香りは、男を誘う毒花の香り。
地上から目を離し、改めて情報屋を見る]
ね……貴方なら知っているかしら。
最近この街に見ないれない顔が増えている理由。
[訝る顔にくすくすと笑う。
まるで楽しくて仕方がないと言う様に]
女はいくつもの顔を持つ生き物よ。
それになぞが多いほど良い女だって、良く言うでしょ。
[茶目っ気たっぷりにウィンクを一つ贈る。
問いかけへの答えには、少しだけつまらなそうに、髪を弄りながら]
……情報屋でも判らないのね。
困ったわ。あまりよそ者に大きな顔されるのは、好きじゃないのに。
[よそ者に暴れられて大事な客をすりつぶされては大変と、肩を竦めた]
冗談。
肉体労働は苦手なの。
[眼下に死屍累々の山を築くサーディの姿をちらと見た後、ひらひらと手を振って見せる。
血なまぐさい事とは無縁というように、その指先は白く柔らかなもの]
そういうのは、そう言うのが得意な人にお任せするわ。
ふふふ。
上手にできていたなら、良かったわ。
[にこり、と。
紅を引いた唇が弧を描く]
娼婦が得意なものって言ったら、一つしかないでしょう?
[胸元を強調するように両腕を寄せる。
他に何があるの?と問う様に]
そうね。
坊やが私の客になってくれるなら、教えてあげても良いわよ。
[相手も自分もその気がない事は判っていて、はぐらかすように笑う。
ちりちりと肌に突き刺さるような気配を感じ、ちらりと見降ろした先。此方を伺うような視線に、はぁいと手を振って見せながら]
私はもう少し此処にいるわ。
仕事があるの。ここで。
[荷物をまとめる情報屋へと、お別れの挨拶代わりに手をひらり]
こんな所が良いんですって。
物好きな人もいるものよね。
[大袈裟に肩を竦めて、背を向けた相手の姿が――否、気配が階段を下りるまで、蛇のように冷たい目で見送った。
空を舞う白。
ひらりと舞い降りる羽根を掴むと、片手でそれをぐしゃりと潰して]
……嫌だわ。
馬鹿な人間だけじゃなく、蠅まであの子の命をタカリに来てる。
[呟く声に滲むは、不穏の色。
ぐしゃりとへしゃげた羽根を汚らわしそうに捨てて。
今まさに儀式が始まらんとする祭壇の方へと、蛇はその眸を定めた]
[ドロテアを一閃する銀の煌めき。
崩れ落ちる少女の姿は、まるでスローモーションのようにゆっくりと見えた。
自分が依頼した事とはいえ、妹のように可愛がっていた少女が旅立った事に、僅かなれど胸に過る痛み]
……苦しまずに逝けたわよね。
[呟く声は、風にかき消されて誰にも届かないまま。
女は長い睫毛を震わせて、喪った命へと黙祷を]
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