[さぁっ、と風が吹いた。女、辺りを見回す]
気のせいかしら。
呼ばれたような気がしたけれど。
[男が去ってみればいつもと同じ一人の夜の庭園]
さっきの男の方と一緒に話していた小さな娘。
あの娘はどっちに行ったのかしら。
[女は立ち上がると気の向くままに歩き始めた]
[この庭園を見るのは初めてだった。それなのに生垣を縫って歩くうちに『聞き知った』置物が、柵が、植え込みが目に飛び込んでくる]
………ママの庭。
[小さい頃、何度もねだった夜の庭園のお話。何年か毎にひょっこり現れる不思議な闖入者たちのお話]
じゃあ、これは……夢?