[ざざざ]
[ざざざ]
[よろよろと歩いた先で見つけたのは]
…おお。
こんなところに家があるとは。
一休みさせてもらおうかの。
[暗い森の中に佇む一軒の家。目の弱い老婆には普通の家に見えたか。邪魔するよ、と一声かけて中へと*入って行く*]
[壁を伝い家の奥から姿を現す]
随分と甘い匂いの立ち込める家じゃの…。
台所に菓子でもあるのかと思ったがそうでは無いようじゃし…。
壁の質感も何やら不思議な感じじゃのぅ。
[壁を触って確かめながら広間へと歩を進める。ランプに照らされる室内。目の弱い老婆にも明かりだけは認識出来る]
おや…誰か居るのかい?
[薄っすら瞳に映る人の影。しかし呼びかけに対する返事は無い]
はて…最初に来たときは誰もおらんかったはずじゃが…。
人形の類も無かったはずじゃがの。
おや、人形ではなかったようだね。
おはようだよお嬢ちゃん。
[皺の刻まれた顔に柔和な笑みを浮かべ]
わしの言えた義理じゃあないかもしれないが、お嬢ちゃんはどうしてこんなところに?
そうかい。
わしと似たようなものじゃな…。
ここはわしの家ではないよ。
わしもこの森に迷い込んでしまってな。
いつこの森に入ってしまったのか分からんのじゃ。
[やれやれ、と前に置いた杖に凭れて溜息を吐いて]
延々歩いておったからすっかり疲れてしまったわい。
[涙を零す様子に、よっこいせ、と椅子から下りて少女に近付き]
わしの老いぼれた記憶からすればこの森は無かったはずなんじゃが…。
しかしわしの記憶も危ういかもしれん。
普通の森ではないことは確かじゃがの。
そんなに悲嘆にくれるでない。
ここに居るのはお嬢ちゃん一人ではないのは確かなんじゃから。
そのうち何かしら対策が見えるかもしれん。
[少女の頭に手をやって、落ち着かせるように撫でてやる]
寂しいか…無理もあるまい。
婆で良ければ今しばらく傍に居てやろうぞ。
[顔の皺を深めて笑みを浮かべ。少女の傍の椅子に座る。しばらくの間あやすように背中をぽんぽんと叩いてやる*ことだろう*]