情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了
[1] [2] [3] [4] [5] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
[黴と埃の香りしかしないような、日の当たらない路地の奥に
『カレワラ』
という、ボロボロで、蒼いペンキ塗装の剥げかけた看板がある。
風が鳴る度に、辛うじて柱に繋がる釘たちがぎいぎいと軋んだ音を立てる看板の、真下。
看板よりは幾分しっかりと立て付けられた戸が開かれる。
中から出てきたのは、齢20に届かないだろう程度に見える、その『店』の、たった一人の従業員。
三白眼としか言いようの無い目は、常に機嫌悪そうに周囲を探っていた。]
[その店がかつて情報屋として機能していたと、知る者もいるだろうか。
10年ほどの昔、カレワラという名の、銀縁眼鏡をかけた壮年の男が幼い子供と二人で、生きていた頃は。
但し現在では、店の看板だけがそこにそれがあった証。]
……ウゼェ。
[靴音を鳴らし、細い裏路地を抜ける。
眼前に広がるのは、かつての都会。
廃退した町並みを潜り抜けてきた乾いた空気を吸い、不快を吐き出すと、白い帽子の下、短い眉が歪む。
数日前、その店に投げ入れられた『情報を売ってくれ』との短い文章を書きなぐったメモを思い出して。]
[丁寧に、『――支払う、――で待つ』と、大層な金額と場所まで記されていたそれ。]
……チッ。
[その文面を全てそのまま信じるわけではないが、廃業した情報屋を頼ってくる馬鹿の顔を見てみようかと。
きっと、そこに行ってみようとしているのは、そんな気持ちの筈だ。
もやもやとした感情を蹴散らすかのように盛大に舌打ちしても、何も変わらないまま。
生きる人間はもう少ない、壊れかけた世界。
足を向けるのは、書かれていた場所は、壊れかけたビル群を抜けた先**]
[一般人には伏せられ、秘密裏に存在していた某所研究施設の実験体。その研究室は、10年には届かないが5年以上前に、周囲20km圏に汚染物質が蔓延した為に閉鎖・破棄が決定。
研究者達は無事逃げたが、実験体達は、逃げられもせず餓えにもがき苦しみながら、一人、また一人と死んでいった。長い時をかけながら。
―――生き残れたのは、
何も運が良かったからではない。]
[薄暗く、昏く、腐敗臭が充満する中。
部屋の全面に、何処からか這入り込んだ蛆虫達がのたうつ中、同じく蛆のたかる同じ実験体の屍体を食べて生き残った。]
[―――砂塵と強い日差し、容赦ない雨風に晒されたように色素の抜けた色をした頭髪。血は滴っていないものの、両眼に巻かれた布は真新しくはない。]
どう…して……。
[小柄な人影に>>0、向けられた言葉。
会話をしていた訳ではなく、離れた場所から呟かれた独白であり、周囲に人の気配もあった。]
貴方も彼女と同じかしら。
誰かの為に、なんて。安っぽいヒロイズムで自分を捨てられるお馬鹿さん?
[くすくす]
[くすくす]
[風に乗り、嗤う声は遠く何処までも。
こんな時代だからこそ、誰を犠牲にしても生きねばならないのに]
――……本当に、馬鹿な子。
[まるで妹のように可愛がってきた少女へと。
呟く声は酷く苦いものだった]
―――………
[女の声>>8>>9に喚起された、胸中の言葉にならない言葉を音にしようとして、僅かに唇が開きかけるが開くだけに留まる。
鼻腔を擽るのは少女の甘い香り。嘲弄の中に微か遣り切れぬ感情の棘を感じたのは気のせいか。]
[口を開き掛ける男の言葉を待つけれども、答えはなく。
改めてその容姿を見れば、この辺では見ない顔だと気付く]
貴方珍しい格好しているわね。
[目を覆う古い包帯と色の抜けた髪にどうしても目は行きがちになるけれど、その下の服装もまた、この辺ではあまり見ないもの]
ひょっとして――…
[風の噂に聞いた事がある、闇に葬られた施設の話を思い出す]
[特殊な人間を作るための、交配組織。
そこでは非人道的な実験が幾重にも繰り返されたと言う。
そこも今では、何か事故でもあったのか汚染されて廃墟と化したと聞くけれども]
……まさかね。
[膝を突く男の姿を見ながら一人語散る。
生存者は誰もいなかったと、聞いていたから。
こんな話し、今は廃業した情報屋が酔った時に口にした与太話だろうから]
[女の声は今は、風の音と今は同義、女へ返事はない。
少女の前に跪き、たどたどしくも、指先で掌で片足に触れ、そっと持ち上げた。]
…―――。
[少女の足に、口づける。
少女の双眸の色を見る事は出来ない。]
[頭は自重に任せるように垂れさせ、少女を見下ろす格好に。女の視線を皮膚で感じる。]
―――
[やはり言葉は出ないまま。胸中に浮かび上がる綯い交ぜになったものは、自分でも正確に把握は出来なかった。だから、]
可哀相だ……。
[正解と不正解を確かめるように音にした。]
[少女の足へと口接けを捧げる姿は、まるで聖人に額づく殉教者のそれ。
敬虔な仕種にも見えるその姿に、どこか禍々しいものを感じてふるりと身を震わせた]
…………。
[チリ…と、金属の乾いた音が耳元で響く。
風に煽られた耳飾りの音だと気付いたのは、少し経ってから]
ドロテア。
私はもう行くわ。あんたの使ってた部屋も処分しなくちゃいけないし。
……天国で、また逢いましょう?
[もっとも自分が天国へ行けるならば、だけれど。
そう胸の裡だけで呟いて、
殉教者と聖女の二人に背を向けると、塒としている宿へと戻っていく**]
― 壊れかけた ビル街 ―
[地盤ごと歪む舗装に、積もる瓦礫とガラス片。
中ほどの数階層が剥き出しの鉄骨のみとなって、
悩ましく地上へ項垂れる態のファッションビル。]
[かつては威容を誇ったビル街も、
いまでは常に崩落の危険を伴う。
災厄を僅かにも逞しく生き延びた人々でさえ、
物資を漁ろうとした先人たちが建物の倒壊に
巻き込まれるのを幾度か目の当たりにした後は
――繁栄の記憶もいろ濃いその地を捨てた。]
[穴の開いた壁面から、乾いた赤い日差しが差し込んでいる。
吹き込む風も乾いており、風景は見るものに閑散とした印象しか齎さない。
夕暮れ時のようではあるが、思えばいつからか、太陽の色はずっとこんな調子で赤いままで、朝も夕も無いようだ。]
―――ここへ――ば、――を…
[かつてはガラスが外壁一面を形成していたが今はその骨格を残すのみ。人の消えた街並を見下ろす高さのこの建物が、かつて街のシンボルとして栄えていた事を記憶しているものは最早少ない。]
―せると……―――はまだ――――ない
[割れた窓を通り抜ける風が、男の呟きを掻き消す。]
―砂塵の町―
[吹き抜ける風に乗り、天を舞う白い影。
それは手頃な高さの建物を見付けると、ふわりと身を翻しその屋根に降り立った。
腰を掛け、ぶらぶらと両足を揺らしながら見下ろすは、見た目だけなら自身と変わらぬ年頃の少女>>0の姿]
イケニエ、だっけ?
[アハハ、と、笑う声は朗らかとも言える響き]
バッカじゃないの?
そんなんで誰かが救われる訳ないじゃない。
[嘲笑の声は相手に届いただろうか。
どちらにせよ、少女はこちらを振り向くことなく、粛々と己の使命を果たそうとしている]
可っ笑しいなぁ。ニンゲンって。
[少女を見下ろし嗤うその背には、一対の純白の翼があった]
ーどこかの道端ー
[ここは地獄か煉獄か。草木薫る緑の大地と言われたこの土地も、廃墟以外のなにものでもなく、土埃が舞い上がり、生命の存在も希薄である。
そんな時代に相応しくない小太りの少年が一人、うつろな瞳で歩いている。]
にいさま、にいさま、お腹がすきました。
今日の夕食は何ですか?
[160にも満たない背丈に不相応な、小汚い外套をずるずる引きずって歩いている。]
[はてさて、彼の言うにいさまという存在は見当たらない。
そして彼も虚空を見ながら歩き続けている。]
にいさま、にいさま、僕を置いてお出かけなんてずるいです。
僕は、貴方のたからものなんでしょ?
さては、約束を破って僕の出来の悪い「きょうだいしまい」を見に研究所へ行ったのですね。
[そう呟き、しばらくぼーっとしていたと思ったら、突然目の前に落ちていた鉄棒を拾い上げ、怒りに任せ、そこらじゅうを叩き始める。]
にいさま、にいさま、にいさまのばかばかばか。僕だけのにいさま、あんな試験管から生まれた化け物に構うなんて!
[鉄棒が、あらぬ方向に曲がって棒でなくなった頃、やっと気持ちが落ち着いてきたようだ。]
お腹がすきました。
食べ物…、食べ物…、赤くて柔らかくて…、新鮮な…
[街をずるずる徘徊し続ける。]
ー壊れかかった ビル街ー
けふけふ…、どうして埃っぽいのですか?にいさまと過ごした家はこんなに汚くなかったのに。
[空腹を訴え続けるおなか、埃っぽい街、崩落寸前のビル群。彼の軽い頭では、いつまで経っても理解ができない風景だ。]
ごはん…、食事…、メシ…、エサ!
[ビルの入り口だったと思われる場所に、疲れ果てて動けないのか、行き倒れと思わしき人が横たわっている。]
―廃墟のビル街―
[白い翼は、風の吹くままに空を舞った。
下界の人間たちがこちらを見ていることに気付けば、殊更気持ち良さそうに。
彼らの決して届かぬ高みを見せ付けるように]
あら、
[そうして、荒廃したビル街に差し掛かった頃だったか。
他の人間よりも高い場所から、こちらを見上げる視線に気が付いた]
……地上では流行りなのかしら。ああいう格好。
[崩れかけのビルばかりでは安易に着地する訳にも行かず。
その場で旋回しながら馬銜をくわえた男を眺める]
[そこからの彼は別人と思われる動きで、行き倒れに襲いかかり、外套から取り出した肉切り包丁で襲いかかる。
血飛沫をあげ、声もなく絶命した行き倒れに神の祝福を。]
お腹が空いても、マナーは守らないと、ですよね、にいさま。
[顔についた血飛沫を手で拭いつつ、ぺろりと舐める。手を合わせて食事にありつけた感謝を祈り、じっと今日の食事を鑑賞する。
感謝の心で満ち満ちた後、包丁を使って、食事を食べやすい大きさに切り分けた。
静かなビル街に、ゆっくりゆっくり何かを噛み砕く音が響き渡る…。]
[1] [2] [3] [4] [5] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了