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―境内・深夜―
[アンがやって来る様子を、木陰から眺める少女がひとり。]
ねえあなた、何をしているの?
[拾った何かを確認しようとしたところで、背後から掛けられた透き通る声に、アンはびくりとして振り返る。
その手の中で、キラリと光ったのは手鏡だった。]
[少女は鏡に気付くと、足音をさせずに、すぅっとアンに近寄っていく。]
その鏡はね、むかしむかし、ここの神社に祀られた神様の持ち物なのよ。
ヒトが触れてはいけないの。
[アンの手から鏡を取り上げ、解説は続く。]
触れた者には凶兆が訪れる――
そう云い伝えられているから。
あなたはその運命から逃れる事ができるかしら。それとも…
[気味の悪さからか、少女の言葉を全て聞き終える前に、アンは足早に立ち去ってしまった。]
・・・・・・いっちゃった。
ちょっと脅かし過ぎちゃった、かな。
[小さな手の平に納まるくらいの手鏡を見つめ、少女はくすりと*微笑んだ*]
―過去―
なんでだよ!何でお前だけ帰ってウミがいないんだよ!
ふざけんなよ神田!何が幼馴染だ!てめえがいながら!!
お前なら、お前ならウミを任せられるって・・・!
・・・俺が探す。もう誰も頼りになんか、なるもんか。
そうさ、ウミは俺を待ってるんだ・・・。
絶対探してやるさ。ウミ、待っててくれ・・・!
絶対に、探し出してやるからな・・・!!
ふ、ふふふふ。そうさ、きっとあいつは待ってるんだ・・・。
俺が探すんだ・・・!
ずっと、それこそ産まれたときから、一緒に育ったんだ。
赤ん坊のときのあいつの匂いさえ覚えてる。俺はあいつを幸せにするって、小さいころに誓ったんだ!母ちゃんに結婚はできないって
言われたから、その代わりに任せられる男を見つけるって・・・。
・・・でもそう言ったとき、あいつちょっとさびしそうな顔してたけど。
神田も小さいころから一緒だったし、あいつなら幸せにできるって思ってたのに・・・!
たまにヤバイ匂いしてたけど、気のせいだって信じてたのに・・・!
くそ、やっぱりあいつに任せたのは間違いだった!
ウミ、絶対にみつけてやる・・・!
お前を見つけて、幸せになるまで見届けないと、俺は何もできねえよ・・・!
―煌星学園・職員室―
・・・へへへ、わかってますって先生。
悪いと思ってるから今日も来たじゃないですか。
でも俺も、今しかできないこと、ってのがあるんですよー。
去年は進級させてくれたの、感謝してますよ?
でもあと少し、あと少しの匂いがするんですよ・・・。
あいつさえ、みつかれば・・・。
・・・って、すいません!いえいえ、聞いてますって。
制服?今日は土曜日だから必要ないのかと・・・いや、すいませんって!
―煌星学園・廊下―
ふう。ちょっと時間くっちゃったな。
松柏駅、か・・・。
今度こそ・・・みつけられるさ。
[校庭で部活を楽しむ学生を窓越しに見る。
ランニングの掛け声、部室からの楽しげな声、
遠くからは調理部だろうか、焼きたてのパンのにおい]
ウミも本当は、この中にいたのに・・・。
待ってろよ、ウミ。今度こそ迎えに行くからな・・・!
-学校・教室-
[補習も終わり、椅子に寄りかかって伸びをする]
つまんないのー。
クレープたべたぁい!!
[立ち上がると机の上の教科書などを乱暴にカバンにしまい始める]
[―公園・昼間―]
ジジ犬、ジジ犬、おおあくびー
ジジ犬、ジジ犬、歯がないよー
[奇妙な歌を口ずさみながら神社敷地内のベンチに腰をかけて絵を描いていた。
鞄の中にはクレヨンや絵の具、切り貼りする為のものか、折り紙、鋏、定規、カッターなど様々な道具が詰め込まれており、スケッチブックは統一性の無い絵で埋め尽くされている。
描いている絵はお世辞にも上手いとは言えず、その拙い線の上から虹色に塗りつぶしていった**]
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