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─ 水流れる柱の上にて ─
殺し合いゲーム?馬鹿な。
そんなこと、”システム”が許すわけ──…
[ない。とは言い切れなかった。
既にそれが許容されているかのやり取り。
人ではないと主張する者らの存在。
3rdや6th、戦いに馴染まぬと見えるのはその程度か。
遣り取りに口を挟むことはしないまま、
彼らへとひとつひとつ、顔を向けていく。
やがて頭痛を覚えたといった風に頭を振った。]
…なんなんだ。
[ため息の代わりに、声が落ちる。]
─ 5F フードコート ─
[ふわりと、周囲を温かな気配が包んだ。
賑やかに明るい喧騒が周囲を包んでいる。
目を開けた。香ばしい香りが漂ってくる。]
食堂…?
[少し違う。今までに見たことのないものだ。
馴染んだ世界よりもずっと明るく開放的な場所。
丸いソースを纏ったものらが鉄板上を転げている。
その香りを嗅いでいると、ひどく腹が減った。]
まずは腹ごしらえをしろと…、いや。
[このゲームがそんな親切なわけはない。
立ち止まって考え込んだ刹那、右手首に振動が走る。
足を止め、手元の端末に視線を落とす。
考え込むような難しい沈黙が*落ちた*]
─ 5F フードコート ─
へえ、これは…
[大きく”たこ焼き”と暖簾のかかった
コーナーを見上げ、そして視線を下げる。
じゅうじゅうと記事の焼ける音がしている。]
これを貰っても?
[透明なパックを指すと、どうぞと答えが返ってきた。
パックを袋に入れて貰っていると、右手首に振動が走った。
袖を捲って、端末を見遣る。]
”2ndが0thと接触”
”2ndが包丁とアイスピックを入手”
”2ndがエレベーターで移動。5Fを通過”
[ずらりと並ぶ”もう一人”の行動に瞬く。
そうして記された、己の未来。]
これが”ルール”か。
ということは俺の行動も…ん?
”たこ焼き屋で、たこ焼きと錐を入手。”
ああ、その手にしているものを貰えるかな。
どうもありがとう。
[日記に記された通りに、たこ焼き返しの錐を店員に要求してみる。
すんなり貰えたそれを、服のポケットに忍ばせ辺りを見渡した。
武器としては心許ないが、ないよりはマシだ。]
[その時、再び右手首の端末が振動した。
ちらりと見遣った日記の告げる内容に目を見開く。]
”向こうから11thがやって来た”
[がさがさと鳴るビニール袋を手に、
視線を鋭くして辺りを見渡す。
見れば向こうからも、容易に姿は捉えられよう。
視界の端に、エレベーターが平和な客を乗せて動いていた。]
[再び右手首の日記が振動を伝えたけれど、
それへと視線を落とす余裕はなかった。
だから、3rdがエスカレーターから来たのに気づくのは少し遅れた。
フードコートの前に歩み出た。
明るい照明が廊下を綺麗に照らしている。
隠れるよりは、ひとまず動ける場所の方が良いとの判断だ。
11thが気付かなければ、そのままやり過ごせもするかも知れない。
手元のビニール袋から、美味しそうな匂いが漂っている。
それを左手首に引っ掛けたまま、
ポケットに突っ込んだ右手で錐を握った。]
[11thの良く目立つ紅い髪が揺れる。
手にしているのは彼女の武器かと当たりをつけた。
辺りを見回す様子は、さほど危険な風にも見えないが]
───おい、
[このまま逃げ去ることは考えた。
むしろ半ばそうしかけた。
しかし何にせよ、相手の情報が少なすぎる。
接触の機会は逃すべきではないだろう。
結局は、距離を保ったまま彼女へ声を掛けてみることにした。]
[声を掛けるより早く、日記によって気付かれたか。
彼女が何かを覗き込む仕草をチラと目にする。
それをしっかりと見ようとしたが、出来なかった。
警戒するように身を屈める様子に、
すぐに物陰に走りこめるよう足を緊張させる。]
えっ、
いきなり刺すとか、しないだろ……
[普通。と、言いかけた言葉が舌の上で凍る。
ひょっとしたらそれが普通か。と、改めて思った。
ぞわりと指の先が冷たくなる。]
どんな相手かも分からないのに。
[反撃を警戒したのだと思われればいい。
戦いに慣れていないのだとバレなければいい。
強いて余裕を見せるように、肩を軽くいからせ見返した。]
俺はカノウヨシアキ。1stだ。
あんたも慣れているみたいだ。名前は?
[朱唇が物騒な言葉を口にして微笑むのに、
やはり刺さずに良かったと内心胸を撫で下ろす。
会話の出来そうな様子に気を良くしたのもつかの間、]
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