[茶会の行われている一室に。
紫色の霧が窓の隙間から入り込む。]
―――――――…。
[霧は館の主の隣に留まろうとするが、先客に気付き。
部屋の扉の隙間をすっ……とすり抜けて廊下へと。]
[紫色の霧は廊下へ留まり。徐々に人の形を成す。
紫を纏う女の姿へ。]
・・・いきなりは刺激が強いかねぇ。
あの可愛い弟子が分化会にやって来た時も確か……ふふ。
[思い出したように笑うと、茶会の行われている部屋の扉を4度ノックして。
がちゃり、と扉を開けて部屋の中へ。]
やぁ、アン。久しいね。
そちらのお客さん方も。こんにちは。
私もお茶会に混ぜてもらってもいいかい?
[「せっかくの晴れ舞台なのに…」と、例えるなら見せ場を親や教師に邪魔されたようなふくれ顔を向けるアンに]
いいじゃないかい。たまには私も立会わせておくれよ。
ヘイケ。ヘイケ・ローグス。
アンとはそうさね……古い付き合いってとこかねぇ
[客人達に簡素な自己紹介をすると優しく微笑み、茶会の席へ着く。
当たり前のように指を躍らせ、ポットを浮かせてカップに紅茶を注ぎ。紅茶の香りを楽しみ。]
今日はアールグレイかい。
[砕ける角砂糖の被害を受ける少年を見て]
…アン。お前ったら相変わらずだねぇ。
すまないねぇ。許してやっておくれ。
こう見えてこの子も久しい客が嬉しいのさ。
[アンと、未熟な魔法遊びのできる子供達を嬉しそうに見守りながら、のんびりと紅茶を口に含む**]
ふふ…あっはっは。
賑やかになってきたもんだねぇ。
悩みも希望も果ては混乱するも若い証さ。結構結構。
[次々と部屋に集まる未熟な魔法遊びができる若者達のやりとりを見て顔が綻ぶ]
ガモンさんか。アンも隅に置けないねぇ。
[鉛白の魔法使いとアンを交互に見て、くすり、と笑う]
手作りの菓子だったのかい。
良い腕だ。ここにくる楽しみがまた一つ増えたねぇ。
ふふ…空を飛ぶのが怖いなら、霧になってふわふわ漂うのもまた情緒があっていいものさ。
力の使い道は人それぞれさね。
空を舞う蝶…それもまた優美で良し。綺麗なもんだよ。
そこの先生は大事なものを落としちまったのかい。そうさね…あの橋は、歩いて渡るには過酷かもしれないねぇ。
ふむ…携帯電話…。
[説明をするアンを見守り紅茶とスコーンを楽しみつつも、意識は窓の外――橋のあたりを見つめてなにやら探すようにイメージを浮かべてみる*]
散歩かい。元気があっていいねぇ。
[見送りながらも、橋の周辺を探る中で見つけた小さな小さな気配に]
…おや。
もうすぐ日も沈む。夜の森は暗くて危険さね。
[ぽつりと呟くと、指をぱちん。と小さく鳴らし、いくつかの扉を開いてやる。
散歩に出る者の為に、あるいは迷い子が夜の森で一人きりの怖い夜を過ごさなくても良いように。]
[窓の外を眺め、遠くで子供達が騒ぐのをまるで近くで見ているかのように感じ、微笑む。
外を映して脳裏にへと伝える為の媒介――ネックレスの小さな小さな千里眼の水晶がきらり、と光る。]
…おや。
なるほど。錠を付けときゃ落ちないか。備えあればなんとやら。ふむ…うまく付き合ってるようじゃないかい。
今更言うのもなんだがヒナ先生もネックストラップにしておくのが良かったようだねぇ。
…あの橋はやっぱり歩いて渡るには過酷かねぇ。川が落し物だらけになってしまうよ。
[千里眼の水晶をコツン、と指先で弾けば映るはまた違った光景。]
[窓の外からの少し冷えかけた風に、空を見る。
沈み行く陽。
水晶が再びきらり、と光り。小さな小さな気配。]
……おや。
[席を立ち、にこりと微笑むと、空気に溶けるように紫色の霧となり、窓の外へとふわり舞う。]