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― 4F ―
[男はいつからそこにいたのか。
それを知る者はいないだろう。
なぜなら、和装を解き、まるで従業員のような顔で、その横を通り過ぎていったのだから。
そして、クルミとネギヤ、
その様子を、まるで見えないかのような顔で、眺めていた。]
ああ、
ネギヤさんは、あざとく、強いですね。
昨日、話した時に思ったとおりです。
[そして、クルミが押さえつけられる。
クルミとの約束。
クルミが誰かを殺すなら、クルミとヨシアキを信頼する。
それもあって、
彼らの戦いを見つからぬように見ていた。]
[だが、傍観しているのがクルミの日記に映っていただろう。
クルミの日記を奪ったネギヤは、エレベーターまでたどり着いてから、きょろきょろとしはじめる。
そして、彼が無人のエレベーターに乗り込み、その扉を締まる時には、神の日記の力で、その中に、彼の前にもういた。]
ネギヤさん…こんにちは。
クルミさんの日記、精度はいいですか?
[浮かべるのは、笑み。
それは、鬼の…彼の世界でいう狼の…。]
貴方の話は、わかりやすかったです。
貴方の世界は、貴方が死んで、
生きる世界だってことも。
[もちろん、それは、違うと言うだろう。
わかっている。]
チン……
[次にエレベーターが会いた時、
そこは屋上だった。
その時には、もう、ネギヤの首は、怪我をさらにえぐったビニールテープがだらりと下がっていた。もちろん、その身体はエレベーターの中に倒れふす。]
――……さよなら、ネギヤさん。
[クルミの日記と、そして、彼自身の日記を手にして、屋上に出た。
後ろで、ネギヤを乗せたままのエレベーターは閉まる。]
――……ああ、本当に朝焼けは綺麗ですね。
[そして、カツリカツリ…と足を踏み出すと、屋上から、柑橘マークのタブレットを下に放り投げた。]
[ネギヤの遺体は、エレベーターの中、
店が開店すれば、たくさんの客と一緒に上下行ったり来たりするだろう。
より、多くの人に悲鳴をあげさせながら。
それでも、まるで、それがアトラクションのひとつであるかのような存在に。]
さてに……。
[次に、クルミの日記を続けて放り投げてることが頭に過ぎらなかったわけではない。
だけれども、それをすることはせず、そのまま踵を返す。]
[セイジとデンゴ、
向こうから気づくことはないかと眺めるが、
それまでの和装ではない。
サロンエプロンから扇子を出して、広げる。]
そうですね。
彼らには会いたいです。
[会う未来に頷いて、そちらに歩き出した。
その時、ソラの遺体も見る。グリタの横に。]
おはようございます。
ソラさんは死んだのですね。
[そして、ほどなく、ヨシアキとクルミがそこに現れる。ソラを呼ぶ悲痛な叫びは朝焼けに響き渡った。]
――……デンゴくん、ソラさんは誰に?
[強い人だったはず、だからそうデンゴに尋ねてながら、
風だけにではなく揺れるフェンスの元、セイジの傍に寄る。]
――……セイジさん、
どうしました?寒いですか?
[震えているようにも感じて、フェンスの横から顔を覗き込む。見えた表情には、眉を寄せた。]
――……
[そして、その手に手を伸ばす。
フェンスに絡んでいる指を一本一本剥がしながら、その背中を後ろから抱きフェンスから遠ざけた。
それから、落ち込んだ様子できっと俯いているだろうセイジの身体をそのまま支え、デンゴを見た。]
彼は、どうしたんですか?
[そして、セイジが離れて行かぬよう、その肩を寄せたまま、
もし、デンゴからのネギヤの死の報告があっても、
表情変えぬまま聞いている。
聞かれれば、答えるだろう。
ネギヤを殺した事を……。
男がグリタも殺したこと、広まっていることはまだ知らないが、それも言われれば肯定する。**]
[ただ、セイジのことを言われて、
でも、知っている。
セイジは、自分で選ぶ、と言ったから、
セイジが自ら死を選ぶならそれには何も言うつもりはない。
彼が死んでも、
仲間が最初からいなくても、いても、
自分は一人である。
それに変わりはない。]
貴方の世界が
さきほどの貴方でみえました。
貴方の世界は、生き残るべきでしょう。
[偽りのない、むき出しのクルミの感情に、
そう思ったこと、述べて……。
ただ、去りゆく背中に…。]
クルミさん……
本当に守りたいもの。
本当に守るには私たちの手は少なすぎますね。
[それをどういう意味にとるかはわからないけれど、
そのあとは何も言わずにクルミを見送った。]
[再度日記をとりにきたクルミを見送ったあと、セイジに向いて…。]
貴方は……
殺さないでください。
[それは、男には珍しい、願い。]
[不思議だった。
いつのまに、彼にこう思うようになったのだろう。
最初は、一番、
殺し合いに慣れた者だろうと思って、近づいたのに…。*]
[そして、行ってくるには、そのまま見送る形になる。]
ああ
[階段に向かうセイジをそのまま見送る。
そう、自分も、二番、マシロと話すことがある。
そして、扇子を開けば、
フユキがマシロと会っていることが示してあった。]
― 3F ―
[そして、三階、フユキとマシロの前に男は現れる。]
ごきげんよう。
お元気そうでは、ない、ですね。
[手負いの二人を前に、男はとくに感情のない表情で現れる。]
フユキさんの状態はわかっています。
マシロさんは、ソラさんと、ですね。
さきほど、デンゴくんからお聞きしました。
ところで、
マシロさん、
貴方にとってグリタさんは、
どんな存在だったのですか?
[フユキがもし席を外そうとしたら、外さなくていいと首を振るだろう。
いや、鬼であることはもうバレている。
ならば、マシロを一人にするようなことはないか。*]
ちなみに、私が最初、グリタさんと組んだことはご存じですか?
[それから、ついでとばかりにそう聞いてみる。]
グリタさんとは協力しようと言いました。
彼は快諾してくれました。
そんな彼を、私は殺しましたが。
>>130>>131
子ども扱い?
[マシロの言葉に瞬いた。]
グリタさんは、自分の世界を救いたいと、おっしゃっておられました。それに、私は協力しようと思っていたのですが、
他から聞いたのです。それと同じくらい、
いえ、あのグリタさんが取り乱すくらいに、守りたい者がいると、頼みにきたのだと。
[そして、考えて…。]
マシロさん、貴方はグリタさんのご家族に似てたのでしょうか?
[そこはまるで一人で言うように…。]
もし、そうなら、私はやっぱり早まりましたね。
[そう、後悔している。密やかに。自身の勝手な思い込みで、彼を殺してしまったことを。]
わかりました。
[フユキに声をかけて、立ち去ろうとするマシロに、そう、告げた。
怪我で、何かいろいろ我慢しているのはわかっていた。
そして、同時に、生きることに貪欲であることも。]
ありがとうございました。
[時折、感じる殺気に、
男は、目を伏せて、
開けたときにはもう、二人は前にはいない。
ただ、すぐに扇子を開くようなこともしなかった。**]
[そして、扇子を閉じたあと、
長くためいきをついて……。]
私という存在は、
誰かのための、意味。
青い照明は、なくても、生きていけるけれど、
あることにより、
存在は浮かび上がる…。
[そして、いずこかにと歩き出す。**]
[
『5thは1stの銃弾に倒れる』
その記述はすぐに届いた。
その場所へ男が足を運ぶことは容易い。
だが、そこにたどり着いた時、
予想通り、マシロが傍にいて、眉を寄せる。
彼らは鬼の仲間が来た、と思うだろう。]
ヨシアキさん……。
[ヨシアキが銃を手にしてのを見て、
自身のポケットを確かめる。
それは、あった。]
[そして、サロンエプロンの前に手を入れた。
そこに鈍く光るもの。
もし、ヨシアキがマシロに銃口を向ければ、それをヨシアキに突きつけるつもりで。]
[ヨシアキはどうやら、フユキを殺すつもりらしい。
扇子の振動を感じる。
しかし、それを確かめることもなく……。]
マシロさん……。
どうしてほしいですか?
[ヨシアキとマシロのラインには入り込み。背後の彼女に聞く。
どんな答えでも、マシロを庇う位置に変わりはない。]
[ヨシアキから、どうして?と聞かれれば、
聞き返すだろう。
なぜ、フユキを殺すつもりなのかと。]
――……理由、
納得できれば、止めることはしません。
[あえて、扇子は開かない。
フユキの運命をまだ知ることはない。]
[後ろのマシロの様子はわからない。
だけど、構わず……。
そう、予言が的中するのなら、
マシロからは殺されるかもしれないけど…。
グリタの名前などもう出すつもりはない。
むしろ、ヨシアキからも、男がマシロを守っても意味はない、と言われてもいる。
だが、……]
[男は、それでも、今はマシロを助けることを考える。
グリタがそれを望んでいなくても、別に構わなかった。
だから、もし、マシロに問われても…何も返事はしない。]
[クルミがきて、ヨシアキを庇う。
もちろん、そうするだろうと思っていた。
クルミが今守りたいもの、それがヨシアキだから。
だから、クルミに危害を加えるつもりはない。
そして、マシロには、どうして、ではなく、今の状況を。]
マシロさん、
さっきも言ったとおり、今、鬼は3人です。
フユキさんが死んで、
あと一人、鬼以外が死ねば、
このゲームは終わるでしょう。
[クルミが立ちふさがったことで、銃下ろす。そして、マシロに振り返る。]
その最後の死ぬ一人に、
今、貴方は近いかもしれません。
[それから、マシロの前に、ごとり、と奥のは、
黒い、拳銃。
彼女のその肩、撃つことはできるかどうかもわからない。]
私は、ヨシアキさんを殺すことはできません。
それを、どう使うかは、
貴方の自由です。
[そして、血を流し、意識途絶えたフユキのほうに向かう。]
[そして、意識途絶えた冬樹の肩、ゆる動かす。]
フユキさん……。
貴方は、このまま死にますか?
それとも……。
[男は、フユキに話しかける。]
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