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朝
今日も、冷えますね…。
[何時もと変わらぬ病院の早朝。
昨日の雪が界隈を白く彩る中、
野木は定刻に出勤した。
同僚達の噂話の中で、一際耳に残ったのは
[305号 ボタン]の名と――]
回想・ロビー
[真心を伝えるのは難しい、
そう消沈する医師へ、眉尻を落とした]
いやァ… 俺ちはアンタさんみたいな学力はねェし
真心だってな…
結局伝え切れなかった、唯の人生の落伍者なんだァよ
[無力さを感じるのは自分の方だと、
ははは、と自嘲の笑みを零し]
んでも、俺ちは今…
先生の役に立てたのかね
だったらば、
……今日を生きた甲斐があるってもんだよ
[明日を生きる楽しみは?
あるのだろうか。
家族を失い、母を喪おうとする男の目の前に
明るい明日は、あるのだろうか。
今はこの若い医師の未来を思うことで満たそうと、
「んじゃあな、先生」と手を振り、別れを*告げた*]
人生に、落伍者なんていませんよ
学があろうと、金があろうと
それで人の価値は決まりません
貴方のおかげで、私は今日助かりました
誰かを助ける事ができる
十分、価値のある人生ですよ
[生きた甲斐がある。
そう言う男性に、いくつか頷いて。
別れを告げる男性に、手を振った。
さぁ、そろそろ仕事の時間か。
そう思っていると、ナースから声がかかる。
オペが入っています、と言う話。
そろそろだと思っていた。]
はい、今行きます
[今日の勤務が終わったら、*写真を探そう*]
新しい朝
[白い便箋に書かれた手紙を読む。
昨日の午後、看護師が届けてくれた手紙。
もう何度も読んだから
貰った文章は全部覚えてしまった。
青空の色は、たくさん知っている。
夏の深い紺碧や、春の淡い天色。
雨上がりは勿忘草色。冬の秘色色。
南国の空は瑠璃色だった。
窓の外へ視線を向ける。
天満さんに教える、私の想う空色は、
海と雪と空が混じり合う位置の色が良い。
この部屋から、その色は見えない。
見に行かなくちゃ。伝えるために。**]
[きのう、屋上でたばこを吸って、それから部屋にもどりました
もどると、お客さまが来ていました
かつみさんと、そがさんです
ふたりとも、かみさまのおともだちでした
おみやげや、そう言ってかつみさんはわたしになにかをくれました
それはふぐさしでした
かみさまが、すきだったもの。]
[ありがとうございます、ちょうどよかった
わたしはふたりにお願いをしました
もちろんお金は払うから、と言いました
これは、ひろくんやさわださんではだめなお話でした
だって、きっと叶えてくれないから
かつみさんは、わたしがゲームで勝てたら叶えてくれるといいました
わたしは頷きました]
[今日は、しあわせな気分です
ゆめを見ました
かみさまと、傷のにいさまと、ねえさまふたり
それからひろくんと、さわださん
みんなでお鍋を囲んでいるのです
暖かそうなゆげがゆらゆらと立ち上ります
みんな、みんな楽しそうです
この時間がずっと続けばいいのに、そう思いました]
[目を開けると、ひろくんがいました
隣で眠っています
そういえば、昨日も泊まってくれたのでした
ひろくんはぐっすり眠っているようで、静かな寝息が聞こえます
わたしもまた眠たくなってきたので、ゆっくり目を閉じました
あったかい。]
[あれは真夏の土曜日だった。
陽射しの強い午後、兄と一緒に、
乗用車で海水浴場を目指した。]
二年前・夏の午後
[兄が運転する車の後部座席に沈み、窓に作った隙間から吹き込む風に煽られた髪を押さえる。兄は助手席に座った恋人と談笑していて、私の方を見る事は無い。風に掻き消えて何を話しているのかは知れないが、二人が笑っているから幸せな話なのだろう。
海に着いたら、私も大学の友達と合流する予定になっている。学生最後の夏休み。子供で居られるモラトリアムを惜しんで、就職活動の隙間を縫って、忙しく遊びまわっていた。]
[すぐ後ろに、大きなトラックが着いてきていた。長距離運転の疲労からか、たまにふらりと車体が揺らぐのがバックミラーに映っていて、不安は感じていた。けれど、兄は恋人との会話に夢中で。]
お兄ちゃん…ちょっと休んでいこうよ。
喉、乾いたし。ねえ。
[サービスエリアの看板が見えたから、声をかけてはみたが。風が邪魔をして聞こえなかったようで。看板を過ぎ、後方のトラックとの位置関係もそのままに、私たちを乗せた車は真っ直ぐに進んだ。]
[そのすぐ後だった。
いよいよ運転手の意識から解放されたトラックが、車間距離を詰めて私たちに躙り寄ったのは。酷く乱暴な音を聞いて、後ろを振り返る間さえなく、私は、未来を失った…――*]
二年前・秋の夜
[身体に、正常なところはひとつも無かった。潰れかけた内臓も、破れた皮膚も、千切れた神経も、なんとか縫繋げて修復されたものの。痛みと熱に苛まれる悪夢のような日々。
傷は至る所に残ったし、複雑に砕けた骨が刻んだ神経の復活は望めない両足が冷たく思い。
誰にも会いたくなくて、私はすべての見舞いを断っていた。こんな姿、死んでも見られたくない。友達にも、家族にも、誰にも。私自身の目でだって見たくない。元より両親との折り合いは悪かったし、兄は罪悪感からか私を直視はしなかったから、断る機会もそう多くは無かった。]
一年前・春の朝
[気付くと、ひとりになっていた。
顔や腕の目立つ箇所の傷は綺麗に塞がり、
見るに堪えない姿では無くなった。
でも、その頃には、
会いたいと思う人は居なくなっていて。
友達は皆、大学を卒業して社会人になった。
家族はそれぞれに忙しくしている。
私はこの白い病室を与えられて。
あるはずだった未来に縋り、
死にきれなかった事を悔いて生きる
今に続く日々がはじまった。*]
[勤務を終えた若者は、家でアルバムを開いていた。
あの男性の言うとおり、好きな場所の写真を探すためにだ。
絵心というものは、若者にはまったくない。
描いた数だけ上手になると、絵を生業にしている友人は語っていたけれど、ならばこそ若者には絵心がないのだろうと思う。
若者は、親が医者であるから医者になる、といったタイプではない。
小さな頃に命を救われて、などというタイプでもない。
知的好奇心を追って行った結果、医者にたどり着いたという者である。
学はあったかもしれないが、暖かい思い出や楽しかった記憶という物がまるで欠如している。
こうして振り返ると、なんと色のない人生であることか。]
だめだな、こりゃ
[だから、もともと写真などという物が少ない。
知的好奇心を満たすために旅行にはよく行ったものだが、どれも遺跡や世界遺産の類である。
どうも、年頃の女性が喜びそうだとは思えなかった。]
[ベットに転がり、横になる。
咥えた煙草は、貰い物の煙草。
小さな部屋に、雑音にしか聞こえないテレビ番組が流れている。
妙に寒い一日で、部屋では暖房器具が必死に熱を作っている。
冷蔵庫の中身は、ドリンクくらい。
調味料も、ほとんどありはしない。
医師という肩書きを取り除いてしまえば、同年代の若者達よりも、ずっと質素な生活をしている気がする。
外を見れば、まだ雪が降っていた。]
夏に雪の写真を見ると、あんなに綺麗なのに
冬に見ると、それが当たり前になっているのだな
[小さく呟くと、何か思い立ったようで。
アルバムからいくつかの写真を抜き取って、手帳に挟んだ。]
[そして、若者は眠りに落ちる。
何か、とてもいい夢を見た気がするけれど。
内容は、もうほとんど覚えていない。
確か、子供の頃の夢の話だった気がする。
若者が目覚めたのは、また着信音だった。]
なんだよ、いい夢だったのに
[夢は気がつくと泡と消えて。
誰かに話そうと覚えていたはずの事も、顔を洗うと頭から消えた。
だけど、今日はいつもより。
ほんの少しだけ、元気になれた気がした。]
さて、急ごうか
出番があるかわからない、私の舞台へ
[変な気分に浸っていたのは、夢のせいだろうか。]
[病院にたどり着くと、やはり今日も出番はなかったらしい。
内科の患者が、息を引き取ったとの連絡を受けた。
仕事をよこせ、とは言わないけれど。
救うチャンスももらえないとは、悲しいものだ。]
ご遺族にお悔やみを、よろしくね
私はまた、ふらついてくるよ
食事もとっていないんだ
[そして、今日は微糖と一緒に。
昨日買い忘れた、サンドイッチを買った。
男性から受けたアドバイスを元に、写真を持ってきてはみたけれど。
これで本当に喜んでもらえるのか、わからない。
変な緊張感があるものだな。
若者はそう思いながら、サンドイッチを頬張る。]
食べ終わったら見せに行こう
[緊張に押されて、ほんの少し*先延ばし*]
朝の夢
[薄く積もった雪をさくり、さくりと踏みながら
男は今日も病院へ、母を見舞う。
今朝の病院は、スーツ姿の男性が多い気がして
「お偉いさんでも亡くなったのだろうか?」
なんて、ぼんやりと馳せた。
気のせいかもしれないけれど。
母は、ゆっくりと、ゆっくりと話してくれた。]
そうかァ、正月の夢、見たのかァ……
[嬉しそうな母の横顔にそうか、そうかと頷いた。]
[正月。
独り暮らしを始めた養女も戻り、
皆で新年を祝う。毎年の恒例行事だ。
この時ばかりは金がなくとも豪勢に。
朝風呂を終えたら、娘達の待ちに待っていた
お年玉を渡す。
そうしているうちに、母が我が家へやってくる。
迎えにいってやればいいものを
俺は既に飲んでいるから、母は徒歩で来るのだ。]
『あけまして おめでとうございます』
[新しい年の始まりを、家族皆で祝う喜び。
おせち料理。
雑煮。
母の炊いた赤飯。
母の笑顔。女房の笑顔。娘達の、笑顔。]
[あたたかい記憶の中
過ぎ去っていった過去は夢となり
時折、男の心を癒してくれる。
うつら、うつら。
病室を後にした男は
休憩室で微睡の中に*居た*]
896号室から、屋上へ
[屋上へ出るには部屋着じゃ寒すぎるから
コートを羽織ってマフラーを巻いた。
海と空が混じる所まで
ちゃんと見渡せると良いのだけど。
どうかしら?と
窓硝子の私と首を傾げて顔を見合わせて。
私は静かに部屋を出た。
エレベーターを使って登った屋上では、
控えめな量の洗濯物たちが風に揺れていて。
冷たい風が、海の匂いを運んできた。
海の歌も少し明瞭に聴こえる。**]
[あのあと、起きたひろくんはお仕事に行きました
別れぎわには、優しく頭をなでてくれました
また来るよ、そう言って。
わたしはしばらく自分の書いた日記を読んでいました
覚えていること、いないこと、たくさん書いてありました
やがてわたしは日記を閉じました
そうして、いつものように屋上へ向かいました
煙草を吸うために
夢の中のかみさまも、たばこを吸っていました。]
―屋上―
[屋上に行くと、だれかがいました
ここの患者さんでしょうか
わたしはそのひとの邪魔をしないように、端の方へいきました
そうして、ハイライトに火をつけます
風に揺られながら空たかくのぼる煙を、わたしは眺めていました**]
[食べ終わったサンドイッチ。
重圧から逃げる理由がなくなって、仕方なしに立ち上がる。
たしか、896号室。
軽くノックして、部屋にはいったはいいけれど。]
…―――
いないじゃないか
[私の変な汗を返せ。
心の中で、そう呟いた。
しまった、部屋以外に彼女の行きそうな場所がわからない。
探そうにも、探しようがないな。
途方にくれた結果、メモ帳を破いて。
ここに来た旨を書いておくことにした。]
[背景クルミ様…―――
いや、それは違うだろう。
親愛なる?
それも違う気がする。
結局、形式にこだわっても意味がないと思い。
数枚のメモの廃棄の後、簡素なメモを残した。]
宿題を持ってきたけれど
いないようなので改めるよ
もしメモを見たら、呼んでくれると嬉しい
ユウキ
[うん、これだけで十分意図は伝わる。
きっと、たぶん、大丈夫。
自分でいくつか頷いて、メモを残して病室を出た。]
‥‥?
[「風に、拐われるよ。」
聞こえた声に、わたしは振り返ります
そこにはマフラーをした、女の人がいたのでした]
こんにちは。
[わたしはたばこを口から離して、にっこり笑ってそう言いました]
[私と同じくらいの年頃に見える女性は、
風に遊ぶ煙草の煙の中に居て。
笑う顔が少し現実離れして見えた。
からりと車輪を回し車椅子を進めて、
彼女の方へと距離を詰める。]
…こんにちは。
その煙は、美味しいもの?
[喫煙の経験は無いけれど、
彼女が持っていると煙草の煙は
甘いものかのように見えたから。
訊ねてみる。]
[この人が乗っているものを、わたしは知っています
車いすと言うのです
そがさんが乗っていたから、わかります]
わたしは、すきです。
かみさまが好きだったから。
[美味しいものかどうか、考えてみました
おいしい、よりは、好き、かなぁと思いました]
…かみさま。神様?
…神様は、あなたを救ってくれる?
[私を救う神様は居なかった。
信仰は太陽にしか
向けたことは無いのだけれど。
煙草の煙を追って空へと向けた目を細め、
再び見つめるのは彼女の顔。]
かみさまがいなかったら、わたしは今、ここにはいられなかったから。
[「神様は、あなたを救ってくれる?」
そう訊ねられて、わたしは頷きました
かみさまが、みつけてくれたから
かみさまに、ロッカと呼んでもらえたから
だから、わたしは今ここにいられるのです]
…素敵だね。
私の前にも現れれば良いのに。
神様とか、天使とか。
[非現実的な存在感の彼女が言う神様が
何者なのかを私が知る由もなく。
ただ、何かを信じる心は羨ましい。
少しだけ微笑んで、
マフラーに顎先まで埋めてしまう。]
‥‥でも、かみさまは、いっちゃったんです
わたしを置いて。
[わたしはもういちどたばこを咥えて、すうと大きく息を吸いました
重たいけむりがいっぱい溜まって、かみさまがいないさみしさをほんとうに埋めてくれたらいいのに、と思いました
それからふうと吐き出した煙、真っ白です
わたしはその煙がのぼっていく空を見あげました
かみさま、かみさま、
わたしのことが見えていますか。]
…いつもキミの中に居るから
神様と呼ぶのではないの?
離れていても傍に居るというやつ。
でも、寂しいね。
置いて行かれるのは。
[煙草の煙は何を満たすのだろう。
喫煙は緩やかな自殺だと誰の言葉だっけ。
彼女は何を見上げているのだろう。
儚げな彼女の傍へ。
もう少しだけ近付いて。
私は、巻いていたマフラーを外して、
煙草の火を避けて
彼女に巻きつけようとする。
少し、屈んでくれないかな?]
…あげる。
「…いつもキミの中に居るから
神様と呼ぶのではないの?
離れていても傍に居るというやつ。」
‥‥。
[女の人の言葉に、わたしはうつむいて、たばこを灰皿に落とし、ポケットに手をやりました
そこには、煙草の箱と、ジッポと、
それから、石が入っています
かみさまの、お墓の石です
お守りみたいに持っていたものです
これがあると、かみさまが傍にいてくれるような気も、時々はするのです
けれど、きっと、そんなわたしをかみさまは笑うでしょう
そんなただの石ッコロを後生大事にしてどうすんだ、と。]
[きぃ、と、車輪が音をたてました
顔をあげると、女の人はこちらに近づいてきていました
巻いていたマフラーが、今は外されています
わたしは、不思議に思って、彼女の目線の高さまでかがみました]
「…あげる。」
[そう言って、彼女は、わたしの首にマフラーを巻いてくれたのでした
それはほんわりとあたたかくて、なんだかあったかい気持ちになりました]
‥‥ありがとう、ございます
[でも、どうしてこれをくれたのでしょう?
お礼を言いながら、わたしは首をかしげました]
[珊瑚朱色のマフラーは、
彼女によく似合っていると思う。]
…私は神様にはなれないけど、
寒そうな首筋にマフラーは巻けるの。
どう、すごいでしょう。
[手紙だって書けるし、
お手玉だって上手に投げられるの。
少し前向きな気持ちになれたから、
首を傾ぐ彼女の顔を見上げて。
もう一度、微笑んで。
車椅子を動かして、屋内に引き返そうと。]
…手紙を書くの。宿題も待たなくちゃ。
だから、行くね。
また会おうね。キミ。
「…私は神様にはなれないけど、
寒そうな首筋にマフラーは巻けるの。
どう、すごいでしょう。」
[彼女の言葉に、わたしは少しだけ、きょとんとしました
おどろいたのです
それから、嬉しくなって、ふにゃ、と笑いました]
‥‥ロッカ。
ロッカです、わたし。
むっつの花で、ロッカ。
[屋内に戻るのでしょう、女の人に、わたしは名乗りました
きれいな色のマフラー、ほんのり暖かいそれをきゅうと小さく握ります
この人のことも、わたしはかかえていきたいと思いました]
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