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[階段を一階ぶんだけ降りて、フードコートへ向かう。
初めて彼女たちと会った場所だ。
ついさっきのような、随分前のような気もする。
あの時は賑やかに明るかった店内は、今はひっそりと暗い。]
何か飲もうか。
[まだ腹は減っていない。
けれど随分、喉が乾いた気がしていた。
水をコップに2人分手に入れて、真ん中ほどの席に着く。
人が来れば、すぐに目に付くだろう場所]
それで……、
そうだよ。
…───俺が、鬼役だ。
[けれど結局は顔を上げて口にし、
緊張にこわばる顔で、じっとクルミの目を見返した。]
[驚きのないクルミの様子に、これもやはりと思う。
ほんの僅か、苦笑じみて眉が下がった。
けれど笑みにはならず、続く問いに首を横に振る。]
いいや、それは違う。
俺にも完全には分かっていないけれど…違う。
あの人たちは多分…、すれ違った、んだろうと思う。
…クルミはさ。もう、分かっているんだろ?
だから俺に聞いてきたんじゃないのか。
[何を。と言わぬまま、曖昧な問いを向けた。]
ああ、ゼンジさんも鬼役だ。
[あっさりと肯定を返す。
彼女に知れている可能性は、既に知っていた。
クルミがゆるく首を横に振る。それへ首を傾げた。]
大事なこと…?
じゃあ、クルミは何を知りたいんだ?
神様、か…。
[困惑に眉を下げる。以前も聞かれたことだ。
そして未だに分からないことだ。]
それ、クルミはもう決まっているのか?
生き残るためには、それがないといけないと思ってる?
[だから逆に聞いた。問い詰める強さはない。
迷うように、視線がコップの上を彷徨う。]
……思ってるよ。どうして?
[クルミが顔を伏せる。
柔らかそうな髪が額に掛かって、彼女の表情を隠す。
でも声が僅かに震えている。
手はもう握れなかった。テーブルの距離が遠い。]
[テーブルの距離に甘えたのは、怖かったからでも、ある。
神の日記をチート日記と呼んだ彼女。
その反応が、どうしても怖かったから。…けど、]
……、あのさ、
[かたりと椅子を鳴らして立ち上がる。
2歩ほど歩いて傍らに行き、少し迷って彼女の頭に手を置いた。
抵抗がないのなら、少しだけ胸元に抱き寄せるようにして]
それ、…俺の台詞だろ?
鬼役だってバラしたら、クルミも…ソラも、
どこかに行ってしまうんじゃないかと思っていた。
けど俺の気持ちは、前と変わってはいない。
俺はさ…、鬼とか鬼じゃないとか関係なしに、
大切に思える人と生き延びたい。
自分の手の中に拾えるものだけ、拾っていたい。
[それは8thに語ったと同じく]
…っ、────…、
[クルミの言葉に、手が震えた。
彼女が俯いてくれていて良かった。
不意に目頭が熱くなって、言葉が途切れる。
ただ少しだけ、抱き寄せるだけでなく、
彼女の髪に頬を寄せるように顔を伏せた。
背に触れてくれる手の感触を感じながら、そうしていた。]
… ありがとう。
…、決めた。
俺は必ず、クルミとソラを守る。
仲間が何と言ったとしても、絶対に守るよ。
その為に、その他の人を排除することも──…
……俺はもう、躊躇わない。
…クルミらしいな。
[最初から彼女は、そうだった。
そこに惹かれた。知ってからは更に一層。]
ん…──分かった。
クルミは強いからなあ…頼む。
[ただ物理的なものだけじゃなく、彼女は強い。
腕の中の温もりを離して目が合えば、
泣き笑いのクルミの顔が眩しくて、どきりとした。
急に目のやり場に困って、思わず視線が泳ぎかけるが、]
──…ああ。
頑張って、一緒に生き残ろうぜ。
[笑顔に踏みとどまり、照れたような顔で大切な”仲間”へ、
スポーツの前にするように、打ち合わせる手を差し出した。]
痛そうだから、全力で逃げるよ。
言ったろ?足にはちょっと、自信あるんだ。
[冗談に冗談を返して、同じく笑う。
人を殺すことが良いはずがないと、言ったのは本当。
10thの叩きつけるような声も、今も耳に残っている。
けれど、もう迷わない。迷わないと───決めた。
小気味良くなった手の向こう、クルミの笑顔に、うん。と、頷く。]
ああ。2ndか12thだと思っている。
ただ、どちらにしても俺かクルミの動きは筒抜けになるから──…
ソラにも話しておかないと、いけないな。
彼女の気持ちは嬉しいけど、俺がきちんと話をしないと。
[やるべきことを数え上げる。
移動しようとして、一度、大きな欠伸をしてしまった。]
うん、頼む。
無理に隠したりはしなくてもいいけどな。
クルミが困ったら、困る。
[眠気を誤魔化すのに、水を一気飲みした。
大真面目に返し、案ずる言葉には、うんと頷く。]
そうするよ。ありがとう。
クルミは…、……大丈夫か?
[あまり一人にはしたくないと、
言葉ではなく表情で心配を告げて見遣った。]
[クルミの笑顔に、自然と笑みが浮かぶ。
コップを片付けて振り返る。
彼女の真似をして軽く伸びをしてみれば、
じんわり眠気が痺れのように駆け巡った。]
じゃ、探しに行こうか。
少し眠れるところ。
[促して休める場所を求め、
クルミとソラを探した要領で日記を使う。
結局は3Fのキャンプテント、
ソラたちの近くに、知らず仮の宿を求めることに*なった*]
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