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[駄目にしてしまった手紙は、宛先こそ分からないけれど。本当はとても大事だったんだろうなあと惜しくて、でも私に何か言う権利なんかない。というか、内容も相手も知らない。
悲しかったんだろうとか、白い封筒じゃなくてもっとおしゃれなのにすればいいのにとか、いろいろ考えた。でも、おしゃれを思うほどの余裕がこの子にはなかったんだろう。そんな顔に見えた。]
[夕焼けの中に赤みがかった髪の毛は綺麗に光って見えたのに、何だか今のこの子はとてもくすんでいる。髪の話じゃなくて、顔色の話。もちろん運動で少しは日焼けしてるだろう顔の肌色も、唇も、私と同じように二十歳にもならない健康的な色をしてる。
彼女の口元に浮かんだ笑みが気にくわなくて、私は思いっきり口をへの字に曲げた。
珍しいかもしれない、子供っぽいだろう顔。
でも、構うもんか。
彼女とは何の関係もないんだ。
どう思われたっていい。
何だかすごく、この子のしてることが馬鹿みたいだった。]
書きなお、さないかな
[白い封筒の中身、
掌圧の重苦に耐え切れず潰れちゃったわたしの文字は
それでも少しだけの澄まし顔をしてるんだろうけど、
わたしはそれをもう一度書ける気はしなかった。
だけど、でも、
語尾が言い切る形にならなかったのは
まさにわたしらしさの表れだ。
同じ白色を握っているのに、日中や朝の、
ボールで風を切るあたしらしさなんて欠片もない。]
[二十重にもタコを作ってきた手から
握りつぶした手紙から、
視線を外し顔を上げたら
そこには堂々たるへの字が浮かんでいた。
見上げる場所さえ違っていたなら、
それはまるでお月様かと一瞬思うくらい、
しゅっと、迷いなく、女の子の顔に浮かんでいた。
自分の気持ちを欠片も疑わないような顔で
感情に正直な幼児めいた雰囲気があるのに
細い眉の下の眼差しが、きゅっと強くて、
その強さに飲み込まれて、
わたしはぽかんと口を開けた。]
ふーん。
[別に、私には関係ないし。この子がどんな手紙を書いていようと、出そうと出すまいと。つまらなくて、誰か他にいないかなと視線を本棚の間から図書室の中へ。誰かの姿が、視界に飛び込んできたかも。
再び視線をあの子に戻す。への字をしたまま。
何だか間の抜けた顔してる、友達だったら可愛いなって思ったかもしれない。でもこの子は友達じゃないから、可愛いな、よりも何よ、の気持ちの方が上で。]
書き直さないんだったら、捨てたら?
[もういらないでしょ。
だったらもういいじゃん。
捨てちゃうんだったら奪い取って見ちゃおうかな。そんな気持ちさえよぎった。私はそんな、無神経なことをできる立場にいる。
この子のことを知らないからこそ、そんなひどいことを考えられる立場にいるんだ。手紙を受け取るべき人がどう思うかだって知ったこっちゃない。そういうのは当事者が考えることで、私には関係ない。
捨てないって言うなら、この子はどうする気なんだろう。*]
[『人気書籍コーナー』と貼り出された一角。
ベストセラーや話題の本が並べられている。
この棚は他よりも低く、車椅子に座ったままでも手が届く。
そのためしょっちゅう利用しているのだが、今置いてある本はもうほとんど読んでしまったものだった。]
はあ…
[今日何度目かわからないため息をまたひとつ。
迷った挙句に図書室に戻ってきたものの、本を読む気にはなれない。]
(あの2人はいつまでやってるんだろう。)
[顔を上げて、何やら言い合っている2人の女子生徒をちらりと見る。
図書室に入ってきたときにはすでにそんな様子だったので詳しい事情は分からない。
特に興味もない。
ただ「よそでやればいいのに」と自分もさっき男子生徒とやりあったことを棚に上げて思うのだった。]
[あれ、あれ、あれ。
わたしなにか怒らせるようなこと、してた?
一度離れた視線がもう一度ぶつかった。
いや、怒らせるようなこと、したけど。
ぶつかったけど。
あれでも、ぶつかったときは、
怒ってなかった、怒って、たのかな。
0.21秒の衝撃。
視線が戻った時、がつんとはたかれたような
そんな感触がしてぱちくり瞬いた。
星が散った。気がする。]
えっ
[捨てたら?
こともなげに言われた言葉。
わたしはもう一つ瞬きした。おまけにもう一つ。
でも、言葉の意味は理解できるのに
なんでそんなこと言われるのか、判らなかった。
22世紀の未来人と遭遇した気持ち。
知らず知らずに握る拳が強くなる。
もう封筒は悲鳴を上げない。上げないんだけど。
こんなぐちゃぐちゃになって
そりゃ、読めるだろうけど
渡しようもないものになった手紙は泣いたり、しないんだけど。]
/*
おや。更新しません ね。
失礼いたしました。
この村は突然死なし設定ですし(不安なのでもう一度情報を見直しますが)
村建ての方で更新時刻を23:30や24時に設定してエピを迎えましょうか
……そんなの、
あんたに関係ないじゃん
[でもなんでか、「捨てたら?」なんて、
いかにも簡単な調子で、
つまらそうに言われた言葉に
はいそうしますって返事できなかった。
かわりに。
話して2,3ふんも経ってない人に向けるには
フテキセツにわたしは険を混ぜた言葉を返した。
そりゃ、ごみみたいなもんだけど。
ごみみたいに、しちゃったけど。
掌のなかでくしゃっとなった白い紙が、
ボールみたいにまるまって、きゅっとなった。
わたしの眉毛もきゅっと寄ったんだと思う。]
[だってこれ、わたしのもんだもん。]
あたしがどうしたって、
あんたに関係ないじゃん っ
[図書館では、うるさくしちゃ駄目とか
他の人の迷惑になるとか、
そういうことが全然考えられなかったわたしは
なんでか知らないけど、
自分がなにをしているのかも考えられてなかったみたいで
本棚の隙間や女の子の向こうかわに見えた、
夕日なのかな、それともライト? にしび?
それが目を刺すように眩しくてツンとして
気付いてみたら
ピッチャー振りかぶって、投げた。]
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