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−廊下−
ん?
[名前を呼ばれれば、聞こえた方向へと視線を向ける。]
弓槻君。
ううん、まだ読んでいる本、読み切ってないのよ。
[隣に並んで歩く彼へそう答えた。]
あ、そうだ。
弓槻君は松柏駅、行くのかしら?
よかったら一緒にいかない?
あの駅、誰もいないじゃない。
一人だと不安になるのよ。
[弓槻が偽汽車の噂を知っているかは定かではないが、そう彼へ尋ね、返事を*待っている*]
そう。
おもしろい結末が待っているといいね。
[笑みを浮かべたまま彼女から、前へと視線を外す。
しかし彼女の問いかけに反応して彼女の方に向き直る。]
うん?
駅には、行く気ではあったけれど…今日は何かあるのかな?
うーん…まあ、多分目的は違うけど女の子一人で行くのは危なそうだね。
ふふ、喜んでエスコートさせていただこうかな。
[腹に手を当て軽く頭を下げて見せる**]
[職員室前の廊下で外を見ていると、教師である須藤が向かってくるのが視界の端で見えた]
やべ、モミジちゃんに言われたのに・・・。
[あわてて、須藤から遠ざかるように駆け出す]
ははっ!須藤・・・先生、またね!
―弓道場―
[バン――ッ
大きな音が弓道場を包む。周囲にいた数人の生徒からは、おお、と感嘆の声が。
そう、今しがた放たれた矢は、見事中心に近い位置に刺さったのだった。
だがその隣には、惜しくも的に当たらず、土に突き刺さった状態の矢があった。
寺崎はゆっくりと弓を下ろすと、こちらを見ている部員の方を振り返り口を開く。]
さて……。
さっきの君と、今の僕の動き。どこが違ったかな。
[直ぐに答えを言って教えるのではなく、相手が思考を巡らせるように指導するのが寺崎のやり方だった。相手に、腕の角度が悪かったのだと気付かせるため、次期主将の彼が手本を見せていたのである。
後輩の男子生徒―1本目の矢を放った部員―から、想定していた通りの回答を聞くと、寺崎はその部員の肩に手を置き、にっと笑って見せた。]
よーし。分かったならもう一度。
感覚は自分で掴むしかないからなっ。
[そう告げると後ろに下がり、成り行きを見守る事にした。]
[練習を重ねる間に、土曜の午後は過ぎて行く。
チャイムが鳴ったのを区切りに練習を止め、自前の弓を専用の袋に入れて片付ける。
高校指定のジャージに着替えてから、弓を左手に持ち、弓道場を後にした。
廊下を歩くと、土曜なのに制服姿の生徒が多い事に気付く。
普段は部活動の生徒しか居ないはずだし…。一瞬考え込んでしまったが、思い出した。]
…ああ、隣のクラスが補習だった。
それで人が多かったのか。
[行き交う生徒を見て自己解決。
部活を終えた今、学校には特に用事も無いし…と、教室の前を通り抜けて玄関へ向かう。]
―玄関前―
[そこで、制服姿では無い女生徒の姿を見つけた。
明らかに体育系の部員ではなさそうだし、私服のままの彼女を不思議に思い、やや離れたところから声をかけてみる。]
えーと……、村瀬さん…?
部活やりに来た感じじゃないけど…忘れ物でもした?
[村瀬六花。普段はあまり接点の無い人物だ。
1年時にクラスが同じだったが今は違うし、久しぶりに話しかけたような気がする。]
―学園・教室内―
やっと…終わったぁ…。
あーもう嫌。補習なんかこの世から消えちゃえばかぁ…!
[補習をミッチリ受け、ぐったりとうな垂れていたところに成瀬のクレープ食べたいとの叫びを耳にし]
おぉ〜!リウいいこと言う〜!
いいねいいねっ!
やっぱ疲れた脳には甘いモノだよねっ。
あたしもっ…………もにょもにょーん。
[一緒に食べに行きたい、と。
そう言いたかったのだが、全てを言い終わる前に成瀬が須藤に窘められているのを見て、咄嗟に発言の方向転換を試みた結果がもにょもにょーん。だった]
[須藤が教室から出て行ったのを確認してから、成瀬の方を見やると申し訳なさそうな笑みを浮かべつつ、軽く両手を合わせてみせた。
ほんのりと罪悪感のようなモノを感じていたのだろう]
……って、あ。
例の駅って、もしかして松柏駅の事?
はいはーい!あたし行くよ!
幽霊電車とか超おもしろそー。
ヨシアキも興味あるんだったら一緒に行こうよ。
[視線を成瀬から長澤へと移すと元気に挙手をしながら参加表明をし、誘いの言葉をかけてみる。
そのまま成瀬の方に再び視線を戻して]
リウは偽汽車って知ってる?幽霊電車。
暇だったらリウも一緒に行こーよ。**
そうね。
このまま面白い結末で迎えてくれるといいのだけど。
[一遍の文章を思い出してそう答え、くすりとほほ笑む。
「今日は何かあるのかな?」の言葉に]
ん?
偽汽車の噂、確かめにいくのよ。
[知らなかったかしら?と首を軽く傾げた。
弓槻の返事と自分へと、腹に手を当て軽く頭を下げるその仕草にこそばゆくて顔が熱くなっていくことに気付く。
このくらいで赤くなる自分に落ち着け、と心の中で言い聞かせ、こほんと咳払いをした。]
弓槻君、ありがとう。
[そう礼を述べて、玄関へと向かって行っただろうか。
もしかしたら彼と話をしながら玄関へ向かったかもしれない**]
[ケンに声をかけられ、声の主を探してキョロキョロと辺りを見回す。現在のクラスメイトでは無い彼の姿を認め、記憶を手繰り寄せる]
んーと、んーと……ケンくんだー!
[思い出せたのが嬉しかったのか、両手を上げて名前を呼んだ。そしてすぐに手を下ろし]
六花ね、補習忘れてたのね。でも思い出したから来たのね。でも遅かったのよ。だから先生にごめんなさいしに行くのね。
ケンくんも補習?
[人懐っこい笑顔を浮かべて聞き返した。
今では散々注意されてやらなくなった走り幅跳びの砂場でお城を作ったり、チョークを教壇に並べて電車や動物を描いたりしていたことは去年同じクラスだった彼は知っているだろう。
当時クラスでも遠巻きに見られ勝ちだった六花にはこのように話しかけてくれる相手は嬉しい存在だった]
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