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[周囲の奇異の目は意に介すこともなく、バクに近寄って手を差し出す。握手を求めているようだ]
椎名君、だったね。俺は君に賛同する。
どうやら、君もあの事件の関係者のようだね。あぁ、詳しいことはいいよ。……辛いだろう。俺もそうだ。
[バクが握手を受け容れようと、受け容れまいと言葉を続ける]
ただ、だからといって特別扱いするつもりはないがね。君が怪しいと思えば、そうーー投票、するさ。
[近藤の言葉に気づいたように、我に返り周りを見回す。近藤以外の、さまざまなものが信じられなくなっている目。それは、半年前の自分と同じ目だった。そしておそらく、自分の従姉妹とも同じ目・・・]
・・・ああ、悪い悪い。ちょっと興奮しちゃったな。でも近藤?さんだっけ。そこのおじさんの言う通りだよ。そしてあの
声の、言う通りさ。この中に、ナニカがいて、そいつを殺さないと俺たちは出れないんだ。・・・怪談とかでたまにあるだろ?そういうルールなのさ。
みんな、誰かは知り合いがいるよな?本当にそいつは、前から知っている奴か、ちゃんと見極めてくれよな・・・!
[うつむき加減で震えていると、ぼぅっと妙な音が聞こえたような気がして、顔をあげる。
そこには青白い炎のような光の塊が浮遊していた。
声を出すことも忘れ、その炎に見入っていると、それらは段々と数を増し、一人の女生徒を囲み出した。
そして――]
……っきゃあぁああぁっ!!
[自分と成瀬を庇うような体勢を取ってくれた長澤の背中にしがみつく。
女生徒が倒れた後、炎はそこらへんを漂いながらよく分からない事を囁き出す]
鬼って何よ…!喰らうとか、殺されないようにとか、殺せとか意味わかんないっ…!
[まさか自分がこんな非現実な出来事に巻き込まれるだなんて夢にも思わなかった。
0時になっても警笛はならなくて、やっぱりただの噂だったねーなんて笑いながら帰るつもりだったのに。
こんな事、こんな事…予想してなかった。
そう言えば。こういうオカルトごとには椎名が強いのではないだろうか。
そう思いついて、救いを求めるような目で彼を見やり]
バクせんぱっ……
[そこで三枝や小鳥遊の、知り合いの戸惑っている顔を見て、一瞬顔をゆがめる]
・・・本当はやっぱり、俺一人できたほうがよかったんだろうな。特にモミジちゃんは、誘ったりしてごめんな。絶対守る、とは言えないけど・・・。モミジちゃんがいつものモミジちゃんだったら、できる限り守るよ。
[小鳥遊は自分が巻き込んでしまった。パトロールのことなども知らないため、そう思って責任感を感じていた]
[近藤の、握手を求める手をじっと見つめる]
ああ、関係者って言うか・・・。別に言ってもしょうがない話しだしな。まあでも、あんたは確かに話が早そうだな。ただその分、ちゃんと見極めないといけなさそうだよな・・・?
だから、とりあえず握手はなしにしておこうぜ。俺から見たって、あんたも投票の候補、だからな。それが特別扱いしない、ってことだろ?
バクせんぱっ……
[そこで止まる。彼の様子が何かおかしい事に気がついたからだ。
こんな状況なのに、彼はやけにテンションが高い。
オカルトが好きだからとかそういう感じではない。
それに呼応するかのように、近藤も話し出す。
しかし二人が何を言っているのかがさっぱり分からない。
怖くて、訳が分からなくて、ただひたすら長澤の背中にしがみつく事しか出来なかった]
―回想終了―
[教えてくれ、と問いかける長澤に向き直り微笑む]
ふむ。この混乱した状況で誰に話を聞くべきかすぐさま見抜ける君は、なかなか頭の回転が速いね。
成績が悪い? そりゃ真面目に勉強してないだけだろう。ここから帰れたら松前塾に来なさい。
[本気とも冗談ともつかない営業トークの後、近藤が知っていることを手短にまとめて話す。
不必要に残酷な描写は避けたが、一定の間隔をあけて生徒が殺されたこと、疑わしい人物を別室に閉じ込めた結果、死んでしまったらしいということは隠さずした。
職業柄、要点をまとめて話すことには長けている。普段の授業なら居眠りをしていそうなタイプの学生たちも、事態が事態だからか神妙に聞き入っていた]
ちなみに、この話のほとんどは生還した生徒から聞いたものだ。彼女はもう、塾も学校も辞めてしまったがな……。
正直言って半信半疑だったが、あれを見てしまった後では信じざるを得ないだろう。
[一気に話し終えると、さすがに疲れたように座席に座り込んだ**]
─回想・駅へ向かう道すがら─
どうしよう、メールの返信、きていないけど……。
もうこんな時間だし、……でも、
……あっ、うんん! 何でもないで……何でもないの!
[二つ折りの携帯電話を開いては、閉じて。 新着メールの有無を確認する。
移動中、同行者たちに断りを入れて、「ノートのコピーを届けても良いか、共に肝試しに行かないか」という内容のメールを村瀬に送ってみたのだが、未だ返信はない。
独り言を聞きとめて鷹野が気遣ってくれたのには首を振って、何でもないからと笑顔を返した。 気を散らしてごめん、とも。
敬語になりかけた語尾を崩し、名乗ってくれたファーストネームで後輩たちを呼んでいるうちに、気持ちも徐々に解れていった。
後輩たちは可愛いし、けれど下の名前なんて呼びなれないために、気恥ずかしくって頬が火照る]
……クレープ?
[今度は鷹野の呟きに首を傾げ、美味しいクレープ屋さんを紹介し合うなど、交流を深めたのだった]
[駅が近づき、ノートのコピーは日曜日に届けることにしよう、とようやく決心したその時。
『コハルちゃん!』
丁度、思い描いていたままの友人の声が前方から聞こえた]
──六花ちゃん!
…ん。
大丈夫よ。
こんな状況だけど、さ。
座ろ…?
[自分もぎこちなく笑みを作り、座席を示すだろう。
窓は闇のまま。]
…どうしたらいいか、考えなきゃ。**
[成瀬と共に長澤の背後に隠れつつも、深呼吸を繰り返し、何とか平静を取り戻そうと試みる。
やはり状況が状況だし、落ち着けはしなかったが…さっきよりはパニック状態ではない、気がする。
近藤の話に耳を傾けながら、先程倒れた女生徒の安否を確認しなくては…などとほんやりと考えていた。
そうは思うものの、どうしても彼女に近づくのが怖かった。
昔飼ってた猫が死んでしまった時に、その体に指一本触れる事すら出来なかった。
怖かったのだ、死に触れるのが。
確認をした訳でもないのに、何故かあの時と全く同じ感情を、今抱いていた]
……帰り、たい。
[恐らく誰も聞き取れないような小さな声音でそう呟くと、ぎゅっと目を閉じて椎名と近藤が言っていた事を理解しようと頭の中で必死に情報整理を始める。
正直なところ、この状況であんな風に振舞える二人に狂気じみた何かを感じてはいる。だけど、嘘を言っているように思えないのも事実だった**]
[視線を巡らせた先には同行していた面々は勿論のこと、合流したばかりの三枝達や先生、練習試合があると別れたはずの寺崎ケンに知らない男の人、そして…
鬼火が自分達を取り囲み、歌うように言葉を発するのを聞く]
……六花、ここイヤなのね。
[しゃがみこんで耳を塞ぐが、この電車から降りれないということは本能的に感じ取っている]
[突然窓を叩く音がして顔を上げた]
ケンくん……。
[寺崎が椎名に視線をやるのを見て同じように視線を動かす。
何やら興奮状態の椎名やこの状況に歓喜すら見出している近藤の様子を見て恐怖を覚える。しかしそれより恐ろしかったのはあの鬼火]
アンちゃん……。
[抜け殻のように倒れている二宮の姿を見つつ、須藤と近藤のやり取りを聞く。現状がどういうものか、近藤が話す内容は理解が追いつくのに苦労する]
鬼さん、かくれんぼ?見つけなきゃいけないの?
[鬼火が発していた言葉を思い出す。嘘だと思いたいのに、幻だと思いたいのに脳裏に焼きついて離れない]
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