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[遠慮のなさは、擦れた女にも伝わろう。
蛇めく彼女の鱗を探すに似る手つきが、
太腿から昇り骨盤のかたちを確かめて、
緩く甘く腰裏を摩りながら窪みを降りる――]
[柔く身を揺らして、するり
隣家へ跳ぶ足場、それだけのはずだった
宿の庇下、其の部屋へと――滑りこむ。]
骨でも 抜いてくれるのかい
[室内へ降り立つと同時、男は口の銜を離す。]
…お嬢ちゃん
[年齢もそう遠く離れているとは見えない
――毒蛇めく仕草の彼女をそう呼んだ*。]
[男の大きな手が肌の上を這えば、艶めく唇から漏れる、甘い吐息。
何かを確かめる様にごつごつとした手が這う度、ふるりと震える身体。
恍惚とした顔でその手を受け入れる]
…… ……んっ。
[柔らかな尻をきつく掴み上げられても、悲鳴を上げる事はせず。
それどころか、男を見上げる顔は何処かうっとりしたもの]
骨以外のモノも、お望みならば……。
[室内へ降り立つ男の足元に跪き、銜を外した男の顔を見上げながら。
その手は柔らかく男の脚を撫で、その中心へとゆっくりと登っていく。
お嬢ちゃん、と。
名前ではなくそう呼ぶ男に、曖昧な笑みを浮かべて]
ああ、それとも。
骨抜きにするほど激しいものを、お好みかしら?
[顔に掛かる黒髪を指で描き上げながら、ふわりと微笑んだ*]
― 時間は前後する>>30 ―
[落暉残照していた濁った赤黒い空も、今は一面どろりとした墨を流し込んだように夜闇を濃くし始めている。]
―――…お腹、空いた、な。
[ぴちょ――ぴた―――――ぴた――――]
[祭壇の最上段から、ゆるゆると流れてくる血の絨毯が、男の爪先を濡らす。祭壇へ顔を上げる。何処かで潰れた蛙の鳴き声を洩らす教祖の声。]
[本物の絨毯を歩むように、そっと、一歩ずつ階段を登ってゆく。凝固するにはまだ早く、粘度のない血が一歩ごとに足裏を濡らす。]
これ、匂い。
[途中で踏み付けたのは双眸を真横に切り裂かれた教祖の身体。ごつりという音がしたし、感触からは頭も踏んだのだろう。]
可哀相、だった、
[匂いの元に近づき、血の広がる床を探る。]
――砂塵の街・宿の窓辺――
おやん
ほんとうに随分とサービスがいいらしい
[膨らんだ衣服越しに触れられる脚は、
前日の浅い疵が心地よくひりつく。]
仕込んだオトコを褒めるべき…?
[灼熱抱く身に、女がいつまで
触れていられるかは知れず――
笑みの曖昧さを追求する野暮は犯さずに
…やがて身体の芯へ辿り着く手指に任せ]
ん
[絡みつく艶は、視線とも肉ともつかず。
香りばかりはクレオソート臭がかき消す。]
たとえばこういう殺し文句、
お嬢ちゃんも…使うんじゃないかい
[微笑みにかかる女の黒髪を片手に掴むと、
覗き込む己が面へ向けてくっと仰向かせ――]
[見上げさせる面持ちは、
笑みを薄うく広げていて]
…『 普通じゃ だめなの 』ってね
[尖らせた舌先に沿って どろぉ と
300℃超のコールタールが、娼婦の美貌へ
艶かしく迸る軌跡を――――*描いた*]
[血塗れの袋を片手に街をさまよい歩く。
ウルスラとの待ち合わせ場所は何処だったか]
・・・アの阿婆擦れ、連絡つかないネ。
生首持て待つ身にもなてほしいヨ。
[無線機を鳴らせど応答は無く。
久しぶりの大口報酬で随分豪勢なバカンスが出来るだろう。
それでも余った分はどうしようか――
そんなことを思いながらも、待ちぼうけの苛立ちは隠せない。
ウルスラの置かれた状況など、女は知りもしないか**]
仕込んだ男はもういないわ。
[蝮の娘となった時に、身も心も喰らってしまったから。
男の中心から手指を離し、薄く笑うその舌から零れ落ちるどろりとした赤黒いシャワーをうっとりと見上げて]
男って、本当に――……。
[その言葉の続きは発せられないまま。
悲鳴を飲み込む音と、肉の焦げる嫌な匂いだけが小さな部屋を満たして**]
[掌と指が、鳩尾の辺りから胸部、鎖骨、首と辿り――首から上がない事を知る。次は両手で、首から肩、腕部をなぞり、腰から脚、爪先へと、輪郭を辿る。
周囲の切れ切れの音から拾い上げ、意味らしきものに繋ぎ合わせれば、生贄の少女は、神に捧げられる前に、教団に仇名す者(或いは別宗教者からの刺客)により、呆気なく殺されたのだという事。]
……―――……
[音を洩らす代わりに、頷くように頭が揺れた。]
[頭がないから、涙を零していた事は知らない。
頭がないから、脳を食べる事もない。]
……―――――…、
[生贄としての衣装。其れは一般人が身につける物よりは上等な仕様だろう。喩え教祖が偽りの教えを掲げていたとしても、狂信の徒達が、神の生贄に相応しいよう装わせたに相違ない。
そんな事は知らず、手触りの滑らかを指先に感じながら、少女の衣装を破き、唇を開いた。]
[舞台上の演劇を、舞台下の舞踏を、コンクリートの壁影に隠れ見詰めている。
赤く濡れた浄化の翼は遥か高みへと消え。
その矢を受けた獣人じみた空腹人はどうしたか。
天使へと、無為から作り出す武器を投げつける両目を隠す男が段上へ――
生贄になるはずだった首無しと、瞳を切られ醜く呻く教祖は、その後どうなるか。
そんなことは、『カレワラ』の知った事ではない。]
……まア。
ここまで出来たナラ、花丸ヲやるヨ。
[滅茶苦茶になった儀式、救いを無残に潰された群衆は、混乱を抱えて悲観するしかないのだろう。]
特に、アノ天使が殺ッテくれたのが最高ダナ。
[弱者を突き落とす救いの手を思い出し、にたりと哂う。]
しかシ……
もし対立デモすることになれば、厄介ナ。
[その惨劇を演じた者達。
サーディはまだ良い、怪我を負い退いた天使も。
同じく怪我を負った獣と、人ならざる不可解な能力を見せ付けた二人組みは、三白眼には己の理想を叶える危険以外には映らない。
力ある者が生き残る。
それが真理だと思うも、こちらにだって、何をしてでも叶えたい願いもあるのだ。]
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