[1] 絞り込み / 発言欄へ
[考えは、アンが首だけの
姿になる前と変わっていなかった。
何が起こっているのかわけがわからない。
でも、理屈は抜きでみんな降りるべきだ。
誰もエレベーター内に居るべきじゃない。]
[1フロアひとりしか降りられない現状、
皆が我先に扉へ殺到しないのはさいわい。
そこはやはり、此処が
エレベーターガール養成校だからか――
少なくとも、自分が震えるほどこわくとも
皆を押しのけて逃げ出そうとしないのは、
先に逃したい友人がいるからに他ならず。]
[インスタントヒーローめいた感傷だが]
( それでも。
――…"追い出される"ほうが、
さいわいなのではないかしら。)
[そう考えていたから、
エレベーターを降りるらしいナオへ頷いた。
行って、と。掴み合いや罵り合いにならず
降りられるうちに、降りたほうがいい と]
[そうして、前に立つチカノの背中越しに
降りゆくナオの後ろ姿を見ていたはずが。
照明がちらついた次の瞬間、]
… Σ いたっ?!
[やたら低い位置にある額が、
ナオのつまさきに蹴飛ばされていた*]
行ってくるねっ。
[そう言ったつもりだったのだけれど、まともに声がでていたかどうか定かではない。]
[一つ上の階に走り出そうとして]
あ痛。
[何かに蹴つまづいた。
振り返ると]
───っ!!
…………サヨちゃん?
[蹴飛ばしてしまった少女の自分を見返す目が、少し恨みがましく見える。]
ごっ、ごめんね、……その、いたかった?
[撫でてさすりたいのと怖いのと。]
チ、チカノちゃんの落とし物とってくるから。
アンちゃんも──連れてくる。
[危うく、アンを「持ってくる」と言いそうになってしまった。]
待っててね!
[一つ上の階への階段に向けて走り出す。]
[転がって見上げる無機質な天井。
手も足もない。立ち上がれない。
ワカバは立ってくれただろうか。
混乱のなか、そんなことを想い。]
ナオ …ううん。
[首から下がないから被りを振れない。]
[1] 絞り込み / 発言欄へ