なーんか、な。
環境変わりすぎちゃって、
[冬香はカウンタに頬杖をついて、やわらかい日差しに揺れる街路樹の影を目で追った。]
いーかげん、仕事も探さなくちゃいけないしさ。
[また小さく、ため息。]
[冬香の家は四人の姉弟と両親、出戻り姉の娘の七人家族。だった。
事の発端は二年前。なんだかあの頃、色々なことが一度に起こったような気がする。
春。大学を卒業した末の弟がいつまでも家族に甘えていないで自立したい、と言って家を出ることになった。子供の頃の甘えん坊の弟の印象をずっと持ち続けていた冬香には、まさに晴天の霹靂だった。
小さい頃はいつもいじめて泣かせていた弟だったが、いなくなってしまうと何かぽっかり穴があいてしまったような、そんな寂しさを覚えた。]
[それから暫くして、下の姉が再婚するかもしれないと言い出し、夏休みの間に娘を連れて近くのアパートに引っ越していった。結局いつの間にか再婚話はなくなってしまったようだが、今もそのまま母娘二人で暮らしている。
秋には長姉が地方への転勤を打診された。仕事一筋で家庭に入るなど露ほども頭にない彼女は、あっさりと承諾してばたばたと荷物をまとめて出て行ってしまった。
急に半分になってしまった家族。家の中は以前よりずっと広く感じた。それでも、自分はきっとこのままここで暮らしていくのだろう、漠然とそう思っていた。]
[が、一番大きな変化が、よりによって自分自身に、訪れることになった。
忘れもしない。その年の暮れ、雪の夜。]