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[びしょ濡れになりながら、海辺の洞窟にたどり着く]
ここなら、雨風はしのげます。
嵐が去るまでやりすごせれば、島からも脱出できるでしょう。
食料と燃料、これで足りますかね…。
火をおこしますから、まずは体を拭いてください。
[屋敷から持ち出してきた荷物を置き、タオルを手渡そうとペケレを振り返った]
[洞窟の入り口に立つ女。濡れたままの髪を張り付かせた顔に、表情は無い。
時折走る稲妻に光る、ナイフ]
…おや。これは参った。
一番信用できると思った人が、宇野さんのお仲間でしたか。
[タオルを持ったまま、肩をすくめる]
そんなに、僕が警察の容疑から外れたのがご不満ですか?
僕は彼女を殺してなどいない。
「殺した」のは、容疑者だったあの男です。金に目がくらんだ、ね。
姉…?ほう。
[面白そうに、目を細め]
擦りつけるも何も、彼が自ら引き受けてくれたことですよ。
報酬と引き替えにね。
[構えたナイフに視線を落とし]
法の網を逃れた者を裁く…なるほど、必殺仕事人気取りですか。
でもね、見ればわかります。
そんなもの、扱い慣れていないでしょう?
[奪い取ろうと、一気に距離を詰める]
っ、く!
[覚悟はできている、そう言った女の刃は、予想以上に迅かった。
肩を掠め、白いスーツに朱が滲む]
この……っ!
[頭に血が上る。必死の相手と揉み合いながら、崖へと追い詰める]
法を超えることに夢中になって、いなくなるインディアンは……君の方だ!
[ようやく奪い取ったナイフ、女の喉元をめがけて切りつけた]
くそっ!
[ナイフは喉を逸れ、女の肩へ。とどめを刺そうと振り上げた手を、思わぬ力で掴まれる]
な……っ!?
[足下に岩の感触がなくなり、体が宙に浮く。
『海にいきましょうか』
脳裏をよぎるのは、食堂に貼られていたあの歌詞。
5人のインディアンの少年が法律に夢中になった
1人が大法院に入って、4人になった
4人のインディアンの少年が海へ出かけた
1人が燻製のにしんにのまれ、3人になった]
ああ……
[残りは3人か、とそんなことを思った。
最後に視界へ捉えたのは、女の涙か、*雨粒か*]
[例え、現世で司直の手を逃れたとしても]
[死後の行く末は地獄だろうと思っていた]
[それくらいは、覚悟していたのだけれど]
[深い深い、海の中]
……ねえ、ペケレさん。
[嵐も波も届かない、静かな暗い青の中]
貴女は……いいんじゃないでしょうかね。
[手首を掴んだままの女に、呼びかける]
多分、道義的にはね。
やっぱり、僕の方が悪人なんじゃないかな。
[それは幻かも知れないけれど]
貴女まで一緒に沈むことは……ないんじゃないかな。
[本当の彼女の姿は、とうに離れているのかも知れないけれど]
皆さんと一緒に行った方が、いいと思いますよ。
ちらっと聞こえた感じでは、何だか楽しそうでしたし。
合コンとか、何とか。
[それでも、その手を握り直して]
途中までなら、お送りしますから。
……さあ。
[軽い調子で言って、*微笑んだ*]
……頑固な人だ。
[楽しそうに、苦く、笑う]
[風も、波も、もう何も届かない海の底へ]
[どこまでも、その手は、*繋がれたまま*]
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