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「儀式を潰した」ことガ「儀式」。
それマデ含め一つの謀る流れだったト?
[おどけて見える黙礼に、三白眼は細くなる。]
ここでハ、とは。勿体つけタ言い方ダナ。
そういう意味ダ?
―回想・砂塵の街―
…別段、
謀りはしてないと想うけどね…
誰もがいつもの調子さ
[やや他人事のように応えて、
軽業師はふいに柱へ跳び乗る。]
さて
だって 勿体ないだろ
誰もが、いつもの調子さ
[体の向きを変えながら、男はカウコへ
もう一度、含める態で同じことを言う。]
…すこし間がよくなくはあるが
うん
[返答の代わりに投げ付けた苦内。
無論、それに怯むような相手ではない。
キン、と軽い金属音と共に、苦内は弾き飛ばされ]
あぐぁああああ!!
[絶叫。
地を蹴った左脚、腿がぱっくりと割れ鮮血が飛沫く。
骨ごと断ち斬られなかったのは、先に投げた苦内が僅かに狙いを逸らせた証左か]
よ、くも、地上人、め……
[下ろしていた両腕を上げ、構え直して牽制に一発。
一閃が矢を弾き落とす間に、ふらりと舞い上がる。
力無い羽ばたきで距離を取ろうとするも、相手の手には長大なライフルがあった]
[右手に抜いた矢は四本。
その全てを弦に引っ掛けるように番え、聖痕に宿りし力を送り込む]
これは天より来たる有翼人の……崇高なる、使命。
[視界が霞み、狙いが定まらない。
しかし浄化の力が、矢の速度と威力を高め、何よりある程度の追尾性を持たせる。
それを同時に四つ――最大限に籠められた力が、昇り掛けの陽光にも等しい輝きを放つ]
邪魔をするならば――死ね!
[発射音が響き、白が数枚宙に舞う。
擦れ違うように四条の金色が、絡み合う螺旋を描き賞金稼ぎへ殺到した。
傾き、落下しつつある視界に、穴を穿ち肉を焼く浄化の光が見えた]
[――堕ちる。
ぎこちない受け身で転がり、仰向けになって静止するが、ライフル女からの追撃はない。
横目に見て、広がる血溜りの真ん中、彼女がもう動かぬ事を確認した]
――は、……
[ゆっくりと、胸の内の空気を吐き出す。
地面に展翅の如く広がった翼。
その左側に、ゆっくりと、紅色が染みつつあった*]
…そうそう、
お前さんのことは、
なんて呼べばいい?
[白い帽子の男が全うな応えをしようと
その名で呼ばず――緩い頷きを返す。]
じゃあね、「よき隣人」
あんまり真面目に生きてちゃだめだよ
[尋ねられたことへの見返りは求めず、
気怠そうに夜陰へと*駆けていった*]
[地面に這いつくばり、
脇目も振らずに無心に血を舐める姿は見えない。
石炭を摂取し内側からゆるり温まり始めた、ベルンハードの身体の熱と血臭と音と気配を感じる。]
「炉」を、起こして
[拳を握れば、
其れの内側で、ぽっ、と熱が弾ける。
暖かく、柔らかく、周囲を圧するものになる]
[――――事は、なく。]
[絶叫が辺りを支配する。]
―――――…(くすくす)…―――――
[拳を更に強く握れば、
一段と火花散らし内腑を灼く。]
[人間からすれば、厭な焦げ臭い匂いが周囲に漂い、
脂肪分をたっぷりと含む身体は、開いた口から屠殺される家畜のような鳴き声をあげ続けたか。其れとも、呻く侭で夢の刻、幸福の時間に縋りながら息絶えたか。
ベルンハード―――実験体0551号であった、
少年の心の裡を察する事までは誰にも出来ない。]
[金属片が寄せ集まり、歪な銛が形成された。]
[ふっ―――――]
[無造作に手が振り下ろされれば、
其れはベルンハードの頭へと突き降ろされる。]
[乾いた音と共に硬い頭蓋骨が割れ、
瓦礫に毀れ落ちるのは、灰色の脳味噌。
銛の先端は、顔の前面を貫いている事だろう。*]
―庭園の在ったビル―
[――己が身の裡に起こったことは、
軽業師の男が誰よりよく覚えている。
そして、苦痛に関するデータの採取を
つとめていた、研究施設での経験は
ベルンハードの身に起こることを
呆れるほど正確に察知して――
現実へトレースされるさまを見ることになった]
……
[過日――自分の「炉」にあった熱源と
その触媒は――…思い出したくもない]
[足首に傷を追った軽業師が飛び退った距離は、
さほど遠くはなく。間近で見下ろす爆裂、断末魔。
沸騰した脂肪が泡立たせた生皮が、
黄色くふやけたように浮いている。
弾けた腸管が、詰まった内容物ごと
裏返っては襞に沿って焼け縮れていく。
わざわざ噛み砕かれたコークスは、
ベルンハードの口腔や食道にも
へばりついてどす黒く煤煙を上げた。
鼻梁を潰すように打ち下ろされた槍が
とどめとなったかどうかは…甚だ疑問。]
[それから、再び無造作に、
ベルンハードの頭を貫いた物を引き抜く。
先端付近に、脳の一部や血液が付着している。
鼻を近づけ匂いを嗅いだ後、ぺろりと舐めとり、嚥下。]
[カラン、と銛を放り投げる。]
[屍体の頭付近に膝をついて屈み込み、割れた頭蓋骨の中から、脳味噌を掬い取り、口に運んだ。プディングのように震え、喉奥に送り込まれてゆく。暫しそうやって喰べた後、顔をあげた。]
[――かつん、
アイノの翼を染めたのと同じ瀝青(れきせい)が
足首の傷を妙な方向へ固めてしまわぬように、
軽業師は尖った靴の底を床へ軽く叩きつける。
視線は、穿った銛持つ旧友の手から…面持ちへ。
――そのとき目にした口元の仕草に、
思わず言葉をなくし暫く黙って彼を見ていた。]
[わらいかける表情を、しらない]
…おい
[大股で歩を寄せる。]
[彼の頬へ手を伸ばす]
[旧友の肌を灼くほどに手が熱いことも忘れ。
軽業師の男は急いた手話を其処へ綴り送る。]
( ― マティウス ― )
( ― いるのか、いないのか ― )
( ― 其処に ― )
[膨大な熱量の接近。
灼け跡を残しながら綴られる手話。]
いるよ。
[綴り終えた手を掴む。]
ここに。
[掌が焼け爛れながら、答える。]
その為に造られたのに……、
何処にも、
もう、行く場所なんて、
ないのかな
[残る片手をそっと添える。
手を両手で包み込むようにして項垂れた。
明瞭な意識の侭、話しかける。]
[出来そこないの実験体と賞金稼ぎの女が息絶えた頃。
女は愛しそうに少女の生首を腕に抱いて、その頬を撫でていた。
見開いた眸は閉じさせて、だらりと飛び出した舌は口の中に収めさせる。
そうすればほら。腕の中に在るのは、生きていた頃と変わらない少女の姿]
やっと……手に入れた。
ドロテア……。
[するりと頬を撫で、温もり無くして久しい唇を、紅い舌でちろりと舐める。
舌先に伝わる濃い死の味に、くらりと強い酩酊感にとらわれる]
大丈夫よ。
すぐにまた、喋れるようになるわ。
……私があんたを産み直してあげる。
[ぎゅ、と。
素肌の腹部に押し当てる様に、ドロテアの首を抱く]
供儀は一度死んで蘇る。
救世主と同じように。これが本当の儀式――…。
私はリリスから聖母になるのよ。
[歌う様に囁くその顔は、まさに聖母のように慈悲深いそれ]
[強く強く。
腹部へと死した首を押し付ける。
肉がひしゃげ、皮膚が裂ける音と共に、ぐちゅりと粘性の音を響かせ別の個体であったはずの首は女の腹部へと溶けあい、混じり合い融合する。
そうして――……]
[――蝮の娘。
それは、施設がまだ少女の面影を残す頃に女に与えた名前。
幾度となく古き皮を捨てて新しく生まれ変わる蛇を不老不死の象徴だと盲信した者の手に寄り、人と蛇とを掛け合わせた融合体《キメラ》である事を知る者は少ない]
ああ……でも。
この子を産み直すには、足りないわ。
命が、足りない……。
[腹をさすりながら思うのは賞金稼ぎの女。
何度かの性交の合間に産み付けておいた蛇は、その身体の中でまだ生きているだろうか]
[意識を集中させれば、有翼人の発した大いなる光に照らされ、その表面を焼かれた賞金稼ぎの身体の内部で、蠢く分身の存在に気づく]
生きていたのね、良い子……。
[サーディがまだ生きている間に、蛇の中に蓄えさせていた命がまだ健在であることを知り、紅引く唇が口端をあげる]
戻っておいで、私の可愛い子供だち。
其の身に蓄えた命を、母に渡してちょうだい。
[その言葉を合図とするように、死したサーディの身体が一瞬震えると――]
[サーディの下腹を食い破り、飛び出す無数の蛇]
早く、はやく……。
戻ってきて、私に命を――……。
[歌う女に誘われるように、蛇たちは一斉に駆けだす。
寄生した宿主の命を女の元へと届けるために**]
俺は不真面目に生きている。
唯、不真面目に対して、真面目なだけで。
[返す言葉は、もう自分以外には聞こえぬ響き。
ゴム底のブーツの踵を鳴らし、同じく慣れた夜街の闇へと溶けて行く*]
沢山の音が聞こえる。
[其れは、生贄の少女に投げかけた時と、
同じような響き>>0:7を持っていた。
砂塵の街で、ほんの少しでも異常な状態を見つけられれば、皆集い、手に手に武器持ち向かうかもしれない。]
― 街の地下 ―
[腐るゴミ溜めの中。
汚れた生命はコンクリートに囲まれた暗い地下深くにも。
むしろ、弱者ほどここには溜まろうか。
その中に隠される『カレワラ』の武器庫の一つを、対異形のもの用にと開放するよう双子の使いに指示を出す。
拳銃やナイフ。ライフルや手榴弾、あるいは火薬。さほど高い威力のものも無いが、数は多い。
とはいえ、先代の後に長く使わなかった場所、どの程度現役に使えるものがあるかは知れないが。]
……っタク、とんでもネェ親父ダナ。
[それが弱者に持ち運ばれる様を少しだけ眺め、その場を後にする。
跡継ぎは、これを先代がどのように集めたのかも知らなければ、何の為に集めたのかも知らない。
重要だと、誰にも渡すなと、
死ぬ前に手渡された暗号で書かれた資料の内容は、解読の一枚目『研究所』の単語までで挫折し、ボロボロの店の奥、隠し扉の中に埋もれるまま。]
[街を奔る無数の蛇の集団や、有翼人と街の賞金稼ぎの衝突、熱孕む屋上庭園の在ったビル跡、そのどれも人の目を引くには充分な物だろうか?
街に精通する『情報屋』なら、容易く掌握出来る類の情報だろう。]
―庭園の在ったビル―
だったらなんで、そんな…
[言いかけた折、手を掴まれた。
忽ちの白煙、皮脂と皮下脂が溶融する臭い。
祭壇を遠くから見ていた折、相手がベルンハードと
行動を共にしていたらしきを思い出し…唇を薄く開く。
或いはあの少年の稚気に影響されたのだろうかと]
…そうかい
…うん?
[完成品。
僅かに尋ねる気配させるも、言は次がれ]
…マティウス…
[項垂れる姿に、熱い手は引けず。]
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