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―回想・深夜の自室―
[真っ暗な部屋は雷雨によって生み出される稲光に時折照らされる。外は大雪から雷雨へと変わり果てたのに、この部屋はやけに静かに感じた。
ベッドで寝ることはせず、腰掛けたままのニルスは轟く雷鳴に臆する事などない。やがてゆっくりと腰を上げれば、窓へと近付いてカーテンを開ける]
いつからこんな天候になったんだ…。
[それに気付かぬ程、ニルスは失望していた。人間にも、ナッキにも、自身にも。
外を見つめる視線はいつもの冷たさはなく、ただの無だ]
―現在・自室―
[起きて暫く経つが、ニルスは部屋から出ようとはせず何か考えている様子だ。カーテンは閉ざされたままで、続く悪天候もあり部屋は薄暗い]
[思い出す昨日の光景。様々な人やナッキの心情が衝突し、当時顔には出さなかったものの、それらはニルスを酷く失望させた]
[思い出せ。マティアスは亡き者の為に。ユノラフは盲目の友の為に。ミハイル、クレスト、彼等は互いの為に。
―――さて、イェンニは何の為に?
彼女は一体何を思い、何をどうする為に、僕へ憎悪と殺意を向けた?]
[あの時、大広間に居る者はそれぞれの“大切なもの”を守る為に動いている気がした。ニルスは心理学者ではないが、それぐらいの心の動きなどは見て解った。
そんな中で彼女だけは。
どこか“独り”のような気がして。
守るものが“自分”のように見えて。
まるで――――]
…僕のようだよ、イェンニ。
[真夜中に見た灯りは幻ではなく確かに其処に在った。それに導かれるように歩いていたイェンニ。
今日はダグからの報せもなく、きっと死んだのはあの二人だけだろう。
…今朝は極彩色を見かけなかった。
やはり彼等は蝶になどなれなかったのだ。
大広間へと行けば彼女は居るのだろうか。然すれば憶測は確信へと変わる]
彼女が、ナッキ。
[そう言えば他の皆はどう反応するだろうか。特にユノラフなど見ものだろう。彼は彼女のことを信頼している様子だったから。
これで玩具は揃った。
あとは遊んで、飽きたら捨てるだけ]
[考えの纏まったニルスは眼鏡を掛け、部屋を出て行った]
[思わず咄嗟に止めたものの別にユノラフやイェンニを助けようと思ったわけではないのだが、今殺されては困る。
辛うじて止めることは出来たものの、背後から近付いて初めて気付いたダグの頭の傷にびくりと怯む。
ふと気がついた彼の声>>88を聞いたのも束の間。
止めた手は振り解かれ、ダグの手は握られた拳へと変わりユノラフの横面を殴った]
ッ…!?
[恐らく、渾身の力を込められたであろう一発。普段は物静かな養蜂家からは想像もつかないその荒々しい姿にニルスはかける言葉も出ず、呆然とした様子でただただ見るだけだった。
泣いているイェンニは、そのまともでない光景に声をあげるだろうか]
[何を思ったのか養蜂家はポーチと頭巾を外して此方へとそれを渡してくる。
ニルスは黙って受け取ったが、疑問が残るばかりで眉を顰めた。
そして次から次へと彼から紡がれる言葉たちは全て理解出来ずに、目の前の光景はあっという間に過ぎていく。
―――気付けば、ユノラフが彼の首を刺し、盲目のマティアスを引き連れ部屋から逃げていた。
部屋に響くは、昔、彼と出会った時に気付けなかった蜂の羽音]
結局、君のことは最期までよく解らなかったよ。…あの時は有り難う、ダグ。
[最後の言葉は聞こえただろうか。
皮肉など混じっていない、純粋な感謝の言葉。
それが彼と出会った時に分け与えられた蜜への礼か、彼の“村”へと近付いたことを許された事へのものかは、ニルスだけが知ることだろう。
慌てる様子もなく、それだけ言ってしまえばニルスも大広間から出て行った]
―自室への道行き―
[手には養蜂家から渡された頭巾とポーチ。雀蜂が飛び交う前、彼は頭巾を被る真似をして見せたが…]
…君とはもっと、話すべきだったね。
あれだけじゃあ被って逃げろと言っていたのか、死んだ後の蜂の世話を頼まれたのか、何だったのか。…全く解らない。
[そのどちらでもない可能性もあるが、そんな事は彼しか知らないのだろう。
ニルスは呆れた様子ながらも、少しだけ寂しげに笑んで自室へと戻っていった]
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