パッケージのイラストが冥王星人って、随分マイナー路線なのね、今年は。
[結城が買ってきたわたあめに手を伸ばしながら、袋をまじまじと眺めた。
半ば変装大会になっている室内を軽く見渡し]
何となくどういう人選だったか。解ったような気がするわ。
[ポツリと呟き食後のお茶を用意した。]
[人数分のお茶を淹れ]
でも見回り係りと言ってわざわざ人を集めておきながら、テキトーに見回るだけってなんか変よねぇ。
畑くんはダウンしても、アンが突然飛び出していっても、何にも言ってこないなんて。
一体何のために人を集めたんでしょう?
[お茶を啜りつつ首をかしげた。]
森山さん、名簿見つけてくれたのね。ありがとう。一体何処に落ちてたのかしらね。
[深々と頭を下げ感謝の意を述べた。と、目にした名簿に妙な染みが付いていることに気付き、何となく背筋か寒くなるような錯覚を覚える。]
……あ、そういえばお兄さんは見つかったのかしら?
[話題を変えるように菊子の兄の事を訊ねた。]
[勝利の雄叫びを上げる菊子に、クルミはほんの少しだけ口許を緩めた。が、やはり能面なのには変わりは無いのだが。]
そう。アンが急に飛び出していって。畑くんは突然ばたんきゅー。じっちゃんの名にかけて原因を解明したくても、あまりにも情報が無くて。
[菊子に相槌を打ちながら二杯目のお茶を注ぐ。]
名簿は通信室に落ちていたの?
[発見場所を聞くとどきんとする。確か通信室は…]
血糊…あ、でも人の血じゃないんだ。それは良かった…のかな?
[お茶をゴクリ]
通信機械も壊れていたんだ。わたし血糊にびっくりしちゃって、そこまで見てなかったわ。見回り係として失格よね。
[バネがびよーんの言葉に、記憶を辿ってみる。確かにモニタや色んな部分が壊れていた。
しかし異変に気付いていながら事務局に連絡をしないことを職務怠慢と言われるのが嫌なので、あえて知らない振りをした。]
でも悪戯にしては手が込んでいるわよね。通信機械を壊すなんて。事務局には…言った方が良いのかもしれないわね。
[菊子が特選和菓子セットに手を伸ばしたのを見て、そろそろ追加も必要だしと思いながら。]
森山さんのお兄さんは結局見つからなかったんですね。お気の毒に…。
[迷うにしろこれじゃ遭難だろうとぼんやりと考えながらわたあめを頬張り]
見回りが係の仕事ですが。考えようによってはお上が投げやりの方が、こっちもテキトーに事を済ますことが出来るので、良いと言えば良いんですけどもね。
だったら何故人を集めたんだろうって話に戻ったりするんですが。
[ソファに不貞寝しながら携帯をいじっているクラスメイトをちらりと見て、ますます上の考えが解らないといわんばかりの表情を浮かべた。]
この状況だから判るって事も有るんじゃないかしら?
[芳秋の言葉にクルミは湯飲みを置き、何処からともなく出てきた水戸黄門の頭巾に視線を向け]
選考基準は、ずばり変な人。
[部屋を見渡しズビシ!]
集める…こと? 何のために? 若葉さんと森山さんは転入してきたばかりだし。接点がまるで見当たらない人を集めてどうするつもりなのかしら?
[若葉の考えに首を捻る。]
心当たりは…
[言葉を切り、空を仰いだ]
違うって…。全力で否定する人ほど、自己評価と周りとの評価の差が開いていたりするんだよ? 斎賀。
ごらん、あの達磨を。普通の人間だとあの達磨を見て、普通で居られようか? いや無理だ。でも斎賀は慌てず取り乱さず、しかも同じ空間に居る。これこそが変でなくて何と言うのだろう?
[同じ穴のムジナといわんばかりに、生温かい眼差しを芳秋へと向けた。]
確かに。標本調査であるならば、むしろバラバラの方が都合が良い。そうなると若葉さんや森山さんが選ばれたのも納得できますし、結城センセーや畑くんが呼ばれたのも辻褄が合います。きっと。
[親指と人差し指で顎を挟むようにしてつまみ、ふむと頷く。]
ははは、やだなぁ斎賀。世間の流れには逆らわない方が楽に生きれる処世術に決まっているじゃないの。
人の評価は人の評価。自分の評価は自分の評価。朱に交わったら赤くなればいいじゃないの。表面だけでも。
[芳秋を見るクルミは、いつの間にか白髭の生えた越後の縮緬問屋…のパネルの後ろ。]
報告ですか。あ、事務局なら今度は特選洋菓子セットを貰って来てください。
[若葉と芳秋のやり取りに微笑ましい視線を投げかけながら、結城の言葉を聞きことづけ。]