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[男は、揶揄には乗らず、黙って顎を引く。]
……… 獣ってのは…、
…もともと、笑わねェもんです。
特に。
…おれは…、獣のうちでも…、
臆病モノですから。
[言いながら、
自分が笑ったところを思い出そうとしてみて、]
……
…それで、不都合も、ありませんでしたしね。
[結局。記憶の中に、自分が笑った顔は、思い当たらなかったようで、陰気な男は、ぱちりと瞬いた。]
……
[滑稽。といわれた、魂だけの手へ視線を落とし、
開いて、握ってみて、]
……
"自分を殺した奴らなんて。
不幸な目にあってしまえばいい。"…とまでは…
…… 仰らないんですね。
[男の声は、淡々と、どこか確認を取るようで]
[握って開いた手は──"見よう"と思えば
透けて、その向こうの床を映し出す。]
……
[コーネリアスや、ステラの姿も。]
…滑稽かはわかりませんがね。
おれは、墓守ですンで。
…あんまり、死者にそのへんをうろつかれると、
気持ちの良いもんには感じませんが……
おれは…、あんたとこうして──
もう一度話せているのが、
…狂ったおれひとりの妄想だか、
まぼろしじゃァ、なけりゃ良い、と……
思いますよ……。
…… あんたは、滑稽だ。と、
お思いになりますかね?
[尋ねて、続く言葉に、頷きの代わりだか、
前髪の影の下、瞼をそっと下ろした。]
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