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顔を洗うのは……湖か、管理棟でしたっけ。
[大きく伸びをすると、変装もせず扉を開けて外へ。途中、人影を見ると足を止め]
……熱心ですね。撮影旅行でしょうか。
[写真家がしばらくシャッターを切る様子を眺めた後、ゆっくりと管理棟に向かい歩く]
ふふ。明るい花の下に、幽霊は似合いませんね。
何を見ているのですか?
[ハナミズキの樹の下、風にはためく白いシーツを纏う少女に声をかけたのだった]
─回想・昨夜─
なんじゃあこりゃあ……。
[窓の外に咲き誇っているのは、可憐なハナミズキ]
まるで……あの時の……いや、そんなまさか。
[ぽかんと口を開け、魅入られたかのように花を見上げる。
まるでうわごとのように呟いた後、はっと我に返ると無理矢理口を閉めて、軽く首を振った]
[やがて聞こえてくる不穏な単語たち]
崖崩れかァ。
1日くらいのんびりしようと思ったんだがなぁ……。
[やれやれと大げさに肩をすくめる]
[そのままゆるりと皆と食事を取り話をする。すぐに助けに来るだろうと楽観的な口調]
夜で歩くのは危ねェから気をつけとけ。
風も強い見てえだしな……。
[軽く注意をして、早めに上がる]
[管理棟→自室]
しかしほんとに狼の鳴き声みてぇだなァ。
いやな気配だぜ。
[ぼそりとひとりごちる]
─回想・終了─
─自室・朝─
[隅の布団がごそりと揺れて、顔をしかめたままむくりと起き上がる]
今日も風が強ぇなァ。
ハナミズキも満開だし、花見ってことにもなりゃァいいんだが。
電話も通じないたァ嫌な感じだぜ。
[ぶつくさと独り言を言いながら、顔を洗い、髭の三つ編みを編みなおす]
[いつもの夢]
車内を流れる軽快なジャズの音。心地のよい彼女の話し声。
大きなトラックが ゆっくりと 白い車線を越えて こちらへ向かってくるのが見える。
大きな衝撃を感じて体が宙に浮く。
頭を強く打ち 眩暈の中 彼女の声が 頭に 響く
「助けて!!シートベルトが引っ掛かって・・・テンマ助けて!!」
声のする方へ 手を伸ばし 道路をはいずりまわり 彼女を探す
「テンマ」 彼女の声が遠くへ 遠くへと…
ミズキ…ミズキ… [ただ うわ言を 繰返す]
[朝。
身支度を整え、家屋の外へ。]
雪はまだ積もっているな。ひゃっほう。
[緊張感の欠片すら見えない駄目大人。
昨日に引き続いて雪遊びをしようと管理棟付近へ向かう。]
おやおや風雪センセぇ。
ナンパですかなぁ?んんん?
[白い布の塊に何やら声を掛けているらしき風雪を見つけた。
こちらには…多分、まだ気付いていない。]
………。
[悪戯心に火が点いた。
その場で雪玉を丸め、風雪目掛けて投げつける!]
[ぺしゃり、と音がして視界が白に染まった]
……あうちっ!
[顔についた雪を払い、眼鏡を拭いて雪玉の飛んできた方向を見る。そこには口笛を吹く天敵の姿]
オウ、ナニスルノデスカ。
ニッポンジン、ヤバンデース。
[動揺を押し隠しながら、抗議の声を上げる]
─テンマ・バク棟前─
ここか?
[傍らの少年に問いかけ、中の人物がおきていれば気づくであろう大きさで、扉を少し強めにノックする]
何をおっしゃるうさぎさん。
雪合戦は別に野蛮ではありませんぞぅ?
月乃風雪センセ、みーつけたぁ。
[わざとペンネームをフルで呼んでやった。こちらはめっちゃ笑顔。]
[二つ目の雪玉を軽いステップでかわすと、斜め上を見ながら]
はてさて、どなたかと勘違いされてるようですのだ。
記憶にございませんのことよ。
……で、ユーはこんな所まで何しに来たのですだか?
[お返しとばかりに雪玉を作って投げっ]
[避け切れないので右腕でガード。
果てしなく人の悪い笑顔を浮かべつつ。]
それこそ愚問という奴ですなぁ。
原稿回収ですよ、原稿回収。
そうそう、風雪センセ宛てのチョコ配送という副業もありますがねぇ。
[起床して少しすると外に出た。白く染まる地面を踏みしめ、静かな村中を歩いていく。左手には傘を、右手には30cm定規を持ち]
……はあ。
[吐き出す息は白く濁る。周囲に目を向ければあちらこちらにハナミズキが見え]
しっかし、なんでしょうなぁこの花水木。
季節外れもいいところでしょうに。そう思いません?
[雪玉を投げる手は一時止め、風雪に同意を求めてみる。]
[顔の雪を拭いながら]
ギブミイチヨコレヱト!
本当、仕事熱心ですねえ。
なんて、本当は息子さんに会いに来たんでしょう。それと、あの写真屋さん?
[にこりと笑ってみせ、続く言葉にハナミズキを見上げて]
本当、何でしょうね。何か、天変地異の前触れか何かでしょうか。
そういえば、この村に伝わるお話……ご存知ですか?
あ。良かった。ごめんなさい、いきなり。
[扉の中からドウゼンが出てくるとホッとしたような表情で、
朝から見聞きした義兄の様子を伝え]
えと、俺、案内しますから。こっちです。
その、がけ崩れって、やばかったらやばいってこと……
いや、ううん。何でもないです。
先生も、こんな騒ぎで大変ですよね。
[ちょっと不安になって、言葉にしようと思ったけれど、言霊のことを思って首を振った。自分たちの棟に到着すれば、ドウゼンさんのノックを待ってガチャリと扉を開けて]
オッサーン、生きてる?
ここに息子やペケレセンセがいるなんて知りませんでしたぞぅ?いやホント。
ま、チョコレートは後程管理棟にでもお持ちしましょうか。
伝承…ああ、風がどうこうっていうあれですかね?
お医者さんが話を聞かせてくれましたが。
花水木と、関係あるんですかねぇ。
[風雪につられて、見上げる恰好に。]
そういや、風雪センセって甘いもの好きでしたっけ。
いーいお知らせがありますぞぅ。ファンの子からのチョコレート、結構あったりするんですこれが。
[にやにや。]
? ああ、貴方は……
[かけられた声に振り向き、ビセの姿を見る。管理棟で会った記憶のある彼女に、まず一礼し]
はい。雨園孝治、と申します。
どうも、おはようございます。
[呼ばれた名前を肯定してから、挨拶をした]
そうですか?まあ、そういうことにしておきましょう。
チョコは……そうですね。お願いします。わざわざありがとうございます。
お医者さん?ああ、あの白いお髭の方ですか。
もし土地の人なら……何かもっと詳しいこと、ご存知かもしれませんね。
[ハナミズキの樹に近づくとそっと手を当て、樹に向かって何やらつぶやいている]
ちょ、オッサン、すっげー汗じゃねぇか。
[部屋に入ってみれば、目に入るのは横たわってうなされている義兄。
思わず駆け寄って、手を出そうとするもドウゼンを振り仰いで]
せんせ、どうしよう。オッサン、大丈夫かな。
俺、なんか出来ることある?
おはようございます。
あらあら。これはご丁寧に。備前貴子と申します。
[丁寧な一礼に、こちらも畏まってぺこりと頭を下げ、改めて名前を名乗る]
そういえば、昨日も室内でこの傘、ずっと持っていらっしゃいましたよね。
大事なもの、なんですか?
[軽く首をかしげながら、聞いてみる]
あぁ、そうですなぁ。
後程会う事があったら、聞いてみますか。
…風雪センセー?何してるんですかな?
[風雪の挙動に首を捻る。]
そうですね。しばらく村の外にも出られないみたいですし、すぐに会えるでしょうから。
ああ、これですか?
突然お化粧に目覚めた理由を、直接彼女に聞いてみたのですが……なかなか照れ屋さんみたいで。
[突然の強い風に、葉擦れの音]
熱はない……か。
[こめかみや頭や腕など数箇所を軽く押し、反応を見る]
寒気や体のどこかに痺れや違和感はあるか?
オレの言っていることは分かるか?
何か変なものは見えたりしていないか?
[普段より少しだけ柔らかな口調で問いかける]
備前さん、改めて宜しくお願いしますね。
[傘について問われると]
ええ。これを手放すわけにはいかないんです。
彼らの攻撃を防ぐために……
この黒い傘は必要なんです。
完全に防ぎ切るというわけにはいきませんが……
[頷き、やはり彼らにまつわる説明を]
[問題のない反応、もしくは眠っている様子ならば]
まぁ……疲れかねェ。
[緊張を解いた口調でバク告げる]
おい少年。
今は熱はねぇみたいだから、汗拭いてあったかくして寝かせておいてやれ。
頭……額を濡れタオルで冷やすのもいいが、あまり冷やすのはよくねェから気をつけな。
何かあったら呼んでくれ。
もしもーし。木は口をきかないと思いますぞ、風雪センセ。
いやまあ、作家のイメージとしてはそれでいいかもしれませんが。
[強い風と、葉擦れの音。]
うう、寒っ。
ごめんなさい。落ち着きます。
[ドウゼンに言われて、深呼吸。
パタパタと奥の部屋に下がると、ごそごそと毛布持ってきて、診察が終わるまで待機した。
疲れだと聞けば、ほっとしてぺこりとお辞儀]
分かりました。せんせ、色々ありがとうございます。
また何かあったらよろしくお願いします。
……えと、あの。昨日通れなくなった道以外、道ってないですか。通れるようになるまで、どのくらいかかるか分かりますか? 疲れてるなら、予定切り上げて帰った方がいいのかなって。
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