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照れてる時は、可愛いのに
無表情な仁は、台詞が怖い
[ドアを塞いでいる、仁を見つつ
霊もくすぐったいのだろうかと、脇腹をつつく
つんつん、つんつん]
だって、笑ってる時のほうが、可愛いもの
[真顔で、そう言うのだけれど
呆れたように笑う様子に]
ほら、そっちのが可愛い
[くすぐったかったのかと、勘違いをした]
その手の感覚があるわけなかろう?
[試しに紅の脇をこちょこちょする]
…な?
[人間たちの焦りを思うと申し訳ないような和やかな一瞬だった]
可愛い…?
[愕然とした顔で紅を見る。その顔はすこし赤くなっていた]
な、ななな、何を言うか。
[ドアを押さえる力はそのままだが、
明らかに動揺している]
ん…―――
感覚、ないね
やっぱり、器を借りないとだめなのかな
[少し、寂しかった
女の器に入っていれば、少し違ったろうけれど]
波長の合う子、いないかなぁ
[ゆらり、周りを見てみるけれど
憑依できそうな体はなくて]
残念
仁を抱っこしてあげようかと思ったのに
仁、照れてる・・・―――
[明らかに動揺している様子
くすくす、笑いながら]
可愛い人だね、仁は
[赤い顔に、手を伸ばしてみる
無論、意地悪をするためだ、幽霊だもの]
何って、悪戯
幽霊だもの、悪戯するのが仕事でしょう?
[手が触れたなら、そのまま顔を寄せて
ふぅ、と息を吹いてみる]
何をしたら照れるのか、実験
実験…って…お前な…
[顔が近づいてビクッとなるが、息を吹いてこられて]
だから感覚はないと言うておろう?
そんなことより、近い近い
[周りで皆が見ている。変に思われないか冷や汗ものだった]
いいいいい厭というよりな、
ま、周りの目がだな…
か、かか、勘違いさせるとだな…
[人間の時の感覚が戻ってきそうで焦り、
しどろもどろになっている。
顔は真っ赤になっていた]
周りの目・・・――――?
[きょろきょろ、周りを見回したけれど
気にするような視線は、感じなかった]
亡者は、そんな事気にしないし
人には、私達、見えないし
勘違いするような人、いないけど
へ?…は、はは…そ、そうだな…
勘違いしていたのは…こちらだったか…
[苦笑いになり、フイッと目を逸らした]
反応がなくて…悪かったな。
[目を伏せた]
なぁに、仁
すねちゃった?
[目を逸らす様子に、首をかしげた
本当に、人間みたいな子だ]
機嫌なおしてよ、ね?
[顔をつついたり、してみるけれど
感触は、やはりなかった]
キタネ…
キタネ…
クス… クス… クス…
[耳に飛び込む声に歯の根が合わず、ガチガチと音を立てる。
人体模型の目から目を離すこともできない。]
照れる・・・――――?
[幽霊なのに、照れるのかな
いや、彼は人間に近いんだったか]
なんだ、恥ずかしかったんだ?
[白状した様子に、くすりと笑う]
いいじゃない、恥ずかしがらなくても
長い時間をかけて、出会ったのだから
そっか、まだ無理、か
[ふむり、考えてみたけれど
どうしたらよいのかも、わからずに]
人間同士だと、こういうの、恥ずかしいの?
でも、私の記憶だと
こういう事する、人間もいたよ
た、たしかにこういう事する人間はいたがっ
[真っ赤になって騒ぐ]
俺はこういうことはしたことないんだよっ
[ヤケになっているようだ]
そうなの・・・――――?
初めてだと、恥ずかしいものなんだ?
[自分が人だった頃の記憶を、手繰ってみた
けれど、記憶など永劫の闇の彼方
取り出す事は、出来なかった]
でも、したこと無くて死んじゃったら
寂しいね、きっと
[ヤケになって白状したらなんだか気が楽になった]
それとも…してくれるのか?
[冗談めかしてニヤリと笑い、戯れのように言ってみた]
して欲しいなら、してあげるよ?
[肉体は無いから、本当に減るものでもない
冗談めいた口調に対し、真顔で言ってみた]
霊体にとって、言葉は契約
願いは呪力、思いは糧
言葉に出して願えば、それを叶え
それによって生まれた思いを、糧とする
そういうものだもの
それに、別に厭じゃないしね
そういうものだったか…
言葉は…契約…
[霊になって20年足らずではまだまだ赤子のようなもので、知らないことも多い]
では…「して」、ほしい。
[願いを口に、した。]
ん・・・―――
いいよ、してあげる
[両の手を、仁の頬に添えてみたけれど
やはり、感触はない]
んー・・・――――
感触が、欲しいな
[くるり、指先を回してみる
物理的に干渉するには、結構な力を使うけれど
願いだもの、仕方ないよね]
これで、少しの間、触れるよ
―――――…ッ!!!
[声にならない叫び声。と、同時に全身に激痛が走る。
校舎に入るところから記憶がなく、気づいたら準備室にいた。
そして、耐え難い恐怖と苦痛に晒され…
...は錯乱状態に陥る]
一人は、寒いもの
永劫の夜空に、束の間の黄昏を
[ゆっくりと、体を寄せて
温もりの宿らぬ、この身であるけれど
何かを与える事が、出来るのならば]
少しの間、体が触れ合える、束の間の時
その間は、好きにしていいんだよ?
どうして、欲しい?
うん、いいよ?
好きにして、いいからね
[背中に腕がまわる感覚
久しぶり・・・とすら言えぬ程の昔
そんな時の向こう側で、感じた事のある感覚]
あたたかい、ね
[ゆっくりと、抱き返して
仁に、体を預けた]
[感覚がなくなるまで、抱きしめていた]
…ありがとう。
[ちゃんと目を見て、礼を言った]
もっと早く出会っていたら、いろいろ教えてもらえたであろうに。
[笑みがこぼれる]
今からでも、遅くはないよ
私達の時は、永劫に続くのだから
魂が、常世に至るまで
[感覚が、無くなってきた
もうすぐ、時間がなくなってしまうのだろう]
抱きしめるだけで、よかった?
[首をかしげてみた]
[傾げられた顔を見ていてつい言葉が出てしまった。]
…口づけを…
[してみたかった…と、
…俯いて呟く。そこまで望んではいけないだろうと思いつつ。]
もう・・・――――
ちゃんと、言えばいいのに
言葉にしないと、駄目なんだからね
今回は、特別
[感覚が、消えてしまうまえに
腕を仁の首に絡めたまま
そっと、瞳を閉じてみた]
こういう時、人間は謝るものなの?
[よく、わからない
記憶の海の中には、答えはない
だから、不思議には思ったけれど
不快には、思わないのだからよいとしよう]
ん・・・――――
[唇で、そっと触れた時に
なんとなく、懐かしい暖かさを感じた]
・・・――――
[暖かい、ね]
[そうか、と思い当たる]
俺に、この光景を見せないためだったのか…
[目の前で苦しむセイジを見て]
ありがとう
[素直に礼を言った]
さて、そろそろ奴も連れて行く時間であろうか
紅、お前の器が動かないなら、ここ、抑えていてくれぬか?
[準備室の扉を抑えてくれるように頼む。もし断られるなら、他の仲間を呼んだだろう。]
[一緒に行こうという声とは別の声が聞こえる]
「痛いのが辛いなら
連れていってくれと頼むが良い
楽になるぞ」
楽に…なる…?
楽に…なる…のか…?
[声をかけたのは仁に残った人としての思いやりゆえか。
それとも、自分が体験したことを思い出したゆえの優しさか…―――]
意地を張ってもいいことはない。
もう…お前は…逃げられない…。
[早く連れて行けと言ってくれと
どこかで願っていた]
[なおも語り続ける]
お前にできるのは
連れていってくれと言うことだ。
魂の契約を…結ぶのだ。
[悶え苦しむセイジに淡々と語る姿は
紅の目にどう映っただろうか]
魂にとって言葉は契約…
これは人間どもには分からぬこと。
お前の器に伝えるのは容易かろうが、
他の二人には…どう伝えるつもりだ?
それとも…伝える必要も…ないものかの?
[紅の方を見て、首をかしげる]
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