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―四辻村・井戸―
うん ありがとう
[「手」を借りてもいない来伝氏へ礼を言う。
水の赤さについて尋ねられると、井戸を見て、
少し考えて、川を見て、指先を川上へ向ける。]
鉱山のあとから 温泉が出てる
そのいろ
[一旦返答をしておいて、能面のような表情の
少年は来伝氏をしばし凝視して――――曰く、]
…神さまが 湯治をしてるんだってさ
[変声期特有の、低く掠れた声で付け足した。]
【 施設 :「御湯治場」が追加された。 】
[少年の湿ったシャツは白く、シミひとつない。]
はるばる、ようこそ?
[物慣れぬ態で来伝氏へ歓迎の言葉をつぶやくと
手足の長い、猫背気味の少年は去っていった。]
*ゆっくりしてってね*
え、……ああ。
どういたしまして。
[己が少年の役に立ったという事実などは知る由もない。礼には惑いつつも応じて、微かに笑み]
鉱山の跡の温泉、か。
[少しの間を置いて返された答えに、小さく頷く。それにしても赤過ぎるのではないかとは思ったが、その感想までを口にする事はなく。少年に凝視されれば、何処となく居心地悪げに少々視線を泳がせつつ]
……神様が?
[赤い水。湯治する神。この村には確かに特有の信仰が存在するらしい。思考しつつ、少年の歓迎には笑って頷き]
ああ、有難う。
そうさせて貰うよ。
[ひらりと軽く手を振って、去る姿を見送った。変わった少年だった、と思う。あるいは――変わった村か]
……温泉。
行ってみたら、何かわかるかもしれないな。
[呟き、男は歩き出す。赤い水の元らしい場に、行けたならいいとは思いながらも、其処を目指してというわけでもなく――男にはその場所はわからなかったし、見るべき場はまだ幾らでもあった――村中を進み]
[封緘。朱印は茶封筒に合わさり、光に翳せば血のような色合いを見せていた。]
差出人は書かれてないな。
これは何処から?
[ピリッと小さな音を響かせ、封を切り始める。
塩昆布にジャムをかけたお茶請けも、最初食べた時は信じられない思いだったが、慣れれば旨いとノギは思っていた。アンへ、ジャム添え煎餅とお茶と、苦笑じみた身近な者へ向けるような気さくな笑みを向け、]
「…。おまわりさーん!」
[…リリ。
封筒を千切る手が止まる。]
【 『ジャム煎餅』がアーカイブに追加された。 】
[男はそのうちに村の一端へ辿り着いた。傾斜した地に形成された小さな集落。其処此処に背の高い木々が生い茂り、薄暗く見通しが悪い。これまで見てきた村の様子とは違い、人気が少ないというよりは、本当に誰もいないようだった。恐らくは過疎が進んで住む者がいなくなったのだろう。古い家屋の間を歩いていき]
……あれは……火の見櫓か。
[高い位置に建てられた塔らしきもの――火の見櫓を遠く視認する。あれも今は使われていないのかもしれない。
それから、無人の家屋を*覗き込み*]
[勢い良く駐在所に駆け込んできたシャツ姿の男。
所謂企業戦士の装い。四辻村では目立つ姿だ。]
そんなに慌てて、どうしましたか?
[首元のネクタイを緩めて走っていた所為か、酷く慌てた様相にノギには見えた。]
[こんな村へ一人で?とも思ったが口には出さず。
山が暮れるのは疾い。男―瑞原剛―を、駐在所で宿泊させる可能性を脳裏にめぐらせながら。]
失礼だが貴方は?
俺はノギ。この村の駐在警官です。
[帽子のつばに触れ、小さく会釈。]
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