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─駅─
[いつもなら通勤ラッシュでごった返すはずの構内は、がらんと静まり返っていて。]
…何だ、これ。
[今日は祝日だったろうか?そんなことは無いはずなのに。
定期を使って自動改札を抜ける。
人気の無いホームは、長く長く広い。]
『―ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ―』
[食卓の上で携帯が振動する音。
携帯は母親の物で、アラームが鳴っていただけだった]
かーちゃん、一回帰ってきたんだ。
[店がらみの電話がかかってくるから、
携帯はいつも肌身離さずだったはず]
かーちゃん…?
[ふと気付く孤独。寂しさ。
ベランダから外に出れば雪が降っていた]
雪だ!!
さみーっ!!
[一瞬ぱあっと嬉しそうに目を輝かせるが
ブルブルと身を震わせて急いで部屋に*引っ込んだ*]
…何を、言って……?
[少女の言葉に首をかしげる。
電車の気配のしない駅。
耳鳴りを伴う、頭痛。
遠く、雑踏のざわめきが聞こえた気がした。]
やっぱり、なんかあるんだ………
親父、生きてんのかなぁ………
美夏ちゃん、大丈夫かなぁ………
[頭に響く、不思議な声。それはきっと、あの人の]
………ズイハラさん………
[気がついたら、眠っていたらしい。着信メールを確認していると、俺はおかしなメールを見つけた。]
11/1 MON
差出人 アン
件名 わかるでしょ?
内容
もういないのよ。
誰も、いないのよ。
[意味がわからなくて、俺は外に出た。やはりそこには誰もいなくて。孤独、その為だけにあるような世界。そこに、俺は言い様のない不安と、小さな安心を感じていた。]
「誰もいないのよ。」
[不意に聞こえた声に振り返れば、そこには昨日の少女………アンが立っていて。美しいはずの黒髪は、何故かとても恐ろしくて。見慣れたはずの制服が、何故かとても異様に見えて。]
アン………お前、なんでここに………
[俺の質問には答えず、彼女はこの世界の事を語る。消えた人々、死者の思い、帰る方法。そして、自分はこの世界に長くいられないという事。一方的に俺にそれを伝えると、黒髪の少女はくるりと背を向けた。]
「サヨナラ、ジュンタ」
[何度も聞いたサヨナラは、何故か心に刺さった。]
待て、アン!もう少し話を!
[彼女は表情すら変えず、消え入るように去っていった。]
[日はまだ高い。俺は学校に行っていた。下駄箱に収まった上靴達に温もりはなく。職員室にも人影はない。いつも、休みだと言うのに青春してる野球部の叫びも。体育館からいつも聞こえるはずのバスケ部の声も。テニスコートで和気藹々としていたテニス部の黄色い声援も。そこにはない。]
なんなんだよ………なんなんだよここは!
[久しぶりに着た制服は、誰に見られるわけでもなく。珍しく履いた上靴は、誰もいない廊下に足音を響かせるだけで。]
「まだ信じられないの?」
[何処からか聞こえたその声に、俺は振り返る。すぐ横にあった理科室の中で、たたずむ一人の女生徒がいた。長い黒髪のその人は、何故かとても異様な雰囲気がした。]
「私のいう事、まだ信じられないの?ジュンタ。」
[雪は、ちらちらと降り積もる。冬に広がるその空は、灰色の雲に覆われていた。葉を失った木々が寒そうに、その枝を擦り会わせる音がした。]
アン………なんでお前はここにいる………?
―駅前のコンビニ―
[無機質に開くドア。
誰もいない店内。
賞味期限の切れたおにぎりが並ぶ。
店内に流れるノイズはその異常さを増長させた。]
……夢でも見てるのかしら。
[起きたその自宅に両親の姿はなかった。
ここに来る道のり、途中に誰とも会うことはなかった。
電車の通過する音も聞いていない。
おそらく電車が動いていないのであろう。]
塾サボれるなら、それでもいいのだけれど。
[誰もいないコンビニを出ようと振り返る。]
「私はいつも、ここにいる。貴方を見てる。」
嘘だ、お前は俺を見ていなかった!
「いいえ、見ていた。ずっと、見ていたよ?」
なら……ならなんで!どうして!
俺はこんな一年を送らなきゃいけなかったんだ?
俺は、俺は………!
[彼女の瞳は、とても悲しそうに見えて。ふいに、言葉を失ってしまうのだけど。それでも、俺は彼女に。久しぶりに会えた彼女に。伝えたくて、伝えられなかった言葉があり。]
アン……俺は………ずっと…………
[その言葉を紡ごうとした時、ふっと美夏の顔が頭をよぎり。]
−回想−
[ジュンタがオムライスを注文すれば、来るまでの間2人で会話を楽しむ。人が他にいないことには気も留めず。
運ばれてきたオムライスを前にスプーンを取ろうとすれば、ジュンタが運んで来た女の子を見て声をかけるのに気づく。]
知り合い…?
[似ていたとだけ答える彼にこてり首を傾げる。何か居心地が悪そうにしている彼にオムライスをお腹に収めながら]
どうしたの?
何かすっごい居心地悪そうな顔してる。
[食べ終わればジュンタが慌てたようにテーブルにお金を置き、何か変だと店を出ようとするジュンタの後を慌てて追う。]
あんまりオムライス美味しくなかった?
[ジュンタがおかしいと言っている意味が分からずとんちんかんなことを尋ねる。]
人がいない…?
あ…言われてみれば、誰もいないね。
親とかいるかって…。
[確かに回りを見渡せば先程と同じように雪はひらりと舞い続けているのに、人の気配は感じられない。
気にし始めれば、音のない世界に耳がキーンと痛くなる。ジュンタの言葉の意味がわかればこくりと頷いて]
うん。家に帰ってメールする。
[彼にそう告げて自宅へと慌てて駆けて行った。]
−回想:終−
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