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[最後にやってきたゾウサクに挨拶をして]
まさか道端で全員集合するとは思いませんでしたけどね。
[以前とは違いひとり足りないことをにおわせる]
[浮かんだ思いは口に出されたのかどうか。]
[しばし後に面々と別れて歩き出し]
ぶわっ、
ちょ、なんだこりゃ?
[一瞬吹き付けた風に運ばれてきた紙切れに、顔面を直撃されてしまった。]
──んー?こいつは……。
[見ると、明らかに子供が書いた字に、赤ペンでいくつもの丸がつけられていて、]
「小父さんごめんなさーい」
[向こう側から、子供の謝る声がする。]
ああ、せっかく満点とったテストじゃないか。大事にランドセルに入れとかなきゃだめだろう。
[頭を下げてから走り寄ってくる男の子に自分も向かっていき、]
お母さんにちゃんと見せるんだぜ。
[改めて、ごめんなさいをいう子供に、ニヤリと笑って、「100点」と書かれたテスト用紙を手渡した。]
[礼を言って、走り去る少年を見送ると、再び歩き出す。]
100点満点か。俺は殆ど縁がなかったよなぁ。
いっぺんとった時は──
[一人ごちながらの足どりが、不意にゆっくりしたものになった。]
…。
……。
…………。
お前さんの見立ては正しかったねぇ、テンマさんよ。
[空き家探検がばれて、閉め出しを食らった日の遅い夕食。何故かいつになくごちそうが並んでいた。
悪童で、成績もあまり芳しくなかった自分が、偶に学校で誉められたりした時に並んでいたような品々。]
鼠小僧参上!って壁に書いていったようなものだったんだなあ、あの時は。
寄り道しないで真っ直ぐ帰りゃあよかったんだろうが……
[三度動き出した足は、雑貨屋を経て、和菓子屋に向かう。]
すまんが、これ一杯分の漉し餡を分けてもらえるかい?
[店の主に差し出したのは、雑貨屋で買い求めた、かなり大きめなタッパー。]
……。ああ、そうだな。成人病防止に、こいつを食べきるまでは、毎日ジョギングでもしようかね。
[病院のベッドに横たわる相棒。
枕元にはよくドラマで見る心電図が
ピーッ、ピーッと長い間を取って
音を鳴らしている。
レンがそこに駆け込んでくると、
それまで閉じていた病人の目が薄く開いた。
そこで、レンに向かって囁くような声で]
……大丈夫、だったか?
ああ、もうバッチリだったよ!
そんなことより、まずお前が病気直さないと
何にもならないだろうが!
[自分の命よりも番組オーディションの方が
大事だと言わんばかりの態度でいる相棒に
怒鳴りつける。
落ち付いてください、という
医者の注意で我に返って]
[怒鳴りつけられても
相棒は意に介することなく。
いや――既に喋る気力すらない状態だった。
会話ができるのも奇跡的と言えるような]
……よかった。
もう少しだけ待ってくれたら俺も……
いくから。
せっかく、だから……
やろうぜ、新ネタ。
……あのかえるのTシャツ、
捨ててないよな?
[力なく微笑んだ次の瞬間。
心電図の音が変化する。
かける言葉が見つからないレンに
相棒は続けて話す]
……ありがとう。
お前のような相方がいて、俺は、
幸せ『だった』よ。
[それだけ言って目を伏せる。
最後だった。
心電図は一定の音を立てたまま。
体のどこもピクリとも動かず。
そのうち温もりも消えてしまうだろう]
……なんなんだよ。
そっちから誘っておいて。
ネタもろくに書けない癖に。
ひとりじゃ何もできない癖に。
ひとりで勝手に行くんじゃねえよ!!
[罵ろうと怒鳴ろうと、行った彼は戻らない]
[そこで目が覚めた。
何年前のことだったろうかは思い出せないが
確かにそれは――]
これが……?
俺の探してた「思い出」?
[それを受け入れてる自分が不思議だった。
対価の有無を確認するより先に
まずマネージャーに電話をかけた]
[電話に出た女性マネージャーは
コンビ時代からの付き合いだ。
聞けば教えてくれるはずで。
電話に出たマネージャーはいつもの調子で]
「おはよう。
って今日は確か完全オフでしょ?何?」
[一呼吸置いて、昔の相棒の話を切り出す]
……生きてないんだよね?
[マネージャーはその言葉を聞いて
ふ、と息をつく]
「……ようやく受け入れてくれるんだ。
そう、病気でね。
アンタがずっと『あいつはお笑いやめて
実家に帰ったんだ』って真面目な顔して
言ってるのが痛々しくてさ……
あたしは何も言えなかった」
「あたしだって信じたくなかったけど……
現実は変えようがないしね。
せめて墓参りぐらいはしてやんなよ。
寂しがってるよ、きっと。
好物のチロルチョコぐらい持ってさ」
[マネージャーの語る話を
レンは時折相槌を入れながら聞いていた]
……分かった。ありがとう。
「明日からはちゃんとしてよ。
間違っても泣きはらした顔で来ないように!
それじゃね」
[マネージャーはきっちり釘をさして
電話を切った。
そして彼は、まず横丁へと向かう]
―― 廃屋の映画館 ――
[――破れた銀幕に映る心電図が、
水平のラインを引き続けている。
背後でカラカラと回る映写機の音。
老婆を載せた車椅子のハンドルに
手を添えて、背広姿が佇んでいる。
無声にて流される映像は、病室の一幕。]
[駄菓子屋にあるチロルチョコは
コンビニと比べれば種類も少なくて
ふーむと唸る]
あいつがよく食べてたのなんだっけ……。
違うパッケージのしかないな。
[逝った片割れの台詞は、無音に聴く。
"幸せ『だった』よ。"
残される相手の背を前に押す、
想いが生んだそれは優しい呪言。]
意を汲む――
なかなか、為せることではありません。
真に思い出そうとしても
忘れられなかったのなら、
…きっと、
相棒と呼べる存在だったのでしょうね…
[やがてフィルムが途切れれば、
廃屋の映画館には暗闇が*訪れる*。]
ああ、そうだあれだよ!ミルク!
[しかしどれだけ探しても
小さい牛柄は見つからない。
しかし片隅に何かを見つけて、悪い笑みが浮かぶ]
あれ、50個ほど買ってもいいですか?
[その片隅を指さして、大人買いの準備をした]
─ 横丁の一画 ─
むー、和菓子の作り方だけ載ってる本ってのは、ありそうでないもんだな。
[ぶつぶつ言いながら、本屋で求めたばかりのA4サイズくらいの薄い本を、路上でパラパラとめくる。]
……全部自力で思い出したかったがなあ。
[断る理由もない店主の老爺は、
代金を受け取ると小さなポリ袋に
それをきっちり50個入れてレンに渡す]
ありがとうございました。
[どちらかと言えば店主が言うべき台詞を
行って、外へと出る]
[大人買いして駄菓子屋を後にするレンの背後、
老婆を載せた車椅子を押す背広姿が通りかかる。
毛糸の襟巻きに顎を埋めた老婆は
目を閉じたまま微笑んでいるよう。]
会長。
水飴でもお召し上がりになりませんか。
…お好きでしょう?
[声をかけると、老婆はこっくりと頷いた。]
[横丁を出ようと歩いていると、
難しい顔で本を見ているゾウサクを見つける]
あれ、ゾウサクさん?
歩きながら本読んでいると危ないですよ。
……。そうか、蜂蜜も皮に入れるのか。
[開いたページには、「おうちで作れるどら焼き」の大きな文字と、こんがり焼けた素朴な菓子の写真。]
しかしあれだ。昔はこんな本なんかなかったのに、どうやって作り方を知ったんだろうな、おふくろ。
お。お前さんは確か……。
[声をかけられてそちらを見ると、レンという名の青年が、手に袋を持って立っていた。]
バク転芸人さんだったか?
[おかしな間違い方をしている。]
いや、俺はバック転できませんし。
バック転してたのは呉服屋の主人ですよ。
芸人は間違いないですけど。
[さらりと修正して改めて挨拶をする]
こんにちは、今日はどうしたんですか?
仕事、って感じじゃなさそうですけど。
[ゾウサクが夢中になっている
本の表紙を見ながらそう言って]
ああ、自家製どら焼きに、何日か前から挑戦してるんだ。
おふくろが生きてた時分によく作ってもらっててな。
[この数日、出来上がったものは、食えない事はないが、遺憾ながら記憶とは程遠い出来栄えである。]
お前さんの方は……チロルチョコの買い占めかい?
自家製のどら焼きですか!
凄いなあ……。
お母さんもよく作れましたね。
うちじゃホットケーキぐらいでしたから。
[手製のどら焼きを食べたことのない
レンからは驚きと感心を交えた感想が出る。
続くゾウサクからの問いには]
買占め、って言うのは人聞きが悪いですよ。
売れ残りの在庫処分に協力したんです。
あまり子供に人気のなさそうな味ですしね。
[中のチロルチョコは全部コーヒーヌガー味だった]
[駄菓子屋の店主が、
墨で「いも飴」と書かれた容器から
木匙で掬いとったのは茶色い水飴。
受け取った老婆はそれをじいと
しばらく見つめてからねぶり始める。
秘書たる男は店主に代金を払い――
また車椅子を押して駄菓子屋を出る。
思い出を買った青年と、
思い出に辿りついた探偵を見かけたのは、そのあと]
[肯定も否定もする気にならなかった同業者の言葉。
『私の好きな人だけが笑ってれば、それで良いの。』
想い、彼らの笑顔が
其処から垣間見えたかは知れず――]
どうか、お風邪など召さぬよう。
[ポケットの裡から取り出した
【木彫りの小判】にささやかな願をかけた。]
[かつてゾウサク少年が空き家に隠したうちの一枚。
引越してきた一家が見つけ、縁起物だと喜んだ其れ。
ゾウサク少年は、存外に器用だったに違いない。
レトロ横丁の文房具屋では、
今でも肥後守を売って*いる*。]
[この日を最後に、
たばこ屋は窓口営業をやめた。
また表通りにやってきた黒塗りの車に、
背広姿は空の車椅子を積んで乗り込む。
いつしか薬屋の前、ケロヨンの足元に
見慣れない老犬が歩けぬ態でうずくまる。
その鼻先は、僅かに濡れた*さくら色*]
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