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―― 境内 / 集会所の入口 ――
[雛市 トキは、依頼人が口にする言葉をなぞる。]
―― 連れてかれる、…誰かが。
[ふと拾う商売の種を覚えおく態で、やや神妙に。]
[まっしろなフロックコートに、紺青色のシャツ。
支度を終えたばかりの活動写真弁士は暗幕を捲り、
映画の余韻を脱ぎ捨てるように陽光の下へ出た。
都会では近年とうに廃れた無声映画も、こうして
トーキーの配給届かぬ地ではいくらか需要がある。]
… きつねぐも、か。
[祭りの間、興行小屋として借りる集会場の入口へ
腰下ろす弁士は、足組む膝上へステッキを渡した。]
いなりぐも、って呼ばないのは
どうしてなんでしょうかね。**
[かかる声に、くいと顎跳ねて見上げる。]
ふふふ。
きっとしみしみで、うまずっぱいのですね。
[きっといなりずしの煮含めお揚げも、
巻寿司のたまご、椎茸、かんぴょうも。
村に到着したその日からいくどか顔を合わせる
よろず屋のあるじへと、にこりん笑みかける。]
はいっ。 かならず。
[彼女が作るお弁当や惣菜の味は、とてもいい。]
[汗は浮く。からりとした暑さに雫は滑る。
照りつける日差しに嫌気も刺さない村の夏。]
[ネギは白髪かあさつきか。薬味は七味か和辛子か。]
[各地特色ある豚汁、此処は如何にと楽しみに*して*]
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