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― 私の世界 ―
[硬球を投げる。受け取るキャッチャーミットの音が、ぱしん、と響く。
いつもと何も変わらない、穏やかな日。
来年卒業、つまり今受験生の私は、前の夏の大会で部活を引退した。
でも、正直いきなり受験なんて言われてもよく分かんないし、……何より、部活以上に好きなことなんてなかったから。
だから、私はまだ、後輩たちに混じって野球を続けている。
昔は、「女子が野球なんて……」と言われていたみたいだけど、今はそんなのナンセンス。
男女の平等化が徹底された今では、男の子のスポーツ、なんて言われてたものを、女子も平気でしてる。
おばあちゃんには、まだ信じられないらしいけど。]
[練習が終わって、濡れたタオルで汗を拭いて、服を着替える。
色んなものが機械化したけど、こういう単純作業はまだ全部、自分でやらなきゃいけない。
おばあちゃんが若いころの近未来予想図は車が空を飛んだりしてたらしいけど、そういうのはもうちょっと先の話みたい。
試験運用はしてるけど、実際に走ったりはまだしてない。
革の鞄にタオルと、ボールと、簡単な怪我の手当ての道具一式。
あとはノートに使ってる少し大きめの液晶端末と、個人認証データとか学生証とか、その他諸々が詰まってる手のひらサイズの液晶端末。
それから、おばあちゃんに持たされてる飴がいっぱい。
いつも通りの荷物が入ってるのを確認してから、端末の画面を付ける。
表示された時間を確認して、端末の鞄に放りこんで顔を上げたら……そこはもう、何だかよく分かんない場所だった。]
……えっ、ちょっと待って何の話?
ていうか、ここ……どこ?
[声が何処から響いてきてるのかとか、なんでこんなとこにいきなり居るのかとか、わけ分かんない事が多すぎる。
それを全部口にしてたらキリがないし、とりあえず何か重要そうな声に耳を傾けてみることにする。
世界を救うだとか、壊すだとか、死ぬとか生きるとか、……なんかどれもこれも、私には縁遠い言葉ばっかり、って感じ。]
世界を統べる者って……進路になるのかなぁ。
[だとしたら、ちょっと有難い気も、しないでもないけど。
結局、意味が分かるような、分かんないような。
そもそも、こんな現実味のないところでいきなりあれこれ言われたって、正直ぴんとこない。]
[何か困ったり、迷ったりした時は、飴を食べて落ち着くことにしてる。
甘いものは頭にも心にも良いよ、っていうのは、おばあちゃんの教え。
鞄の中を探って、飴がぎっしり入ってるポーチから一つ取って、口に入れる。
しばらくしたら、しゅわしゅわのラムネの味と感触が口いっぱいに*広がった。*]
[しゅわしゅわの飴が口の中で溶けてなくなるまで、私は辺りの様子を見てた。
自分を挟んで話す二人の会話内容とか、目の前にある巨大な球の傍にいきなり出てきた二人とか、12本の柱の上の12人とか。
そして何より、……生きるとか、死ぬとか、殺すとか。]
んー……つか、さぁ。
何で私たちなの?
選ばれしもの、ってさ、なんか基準とかあったりするわけ?
[世界を守るとか、新しい神を選択するとか、そんな大それたものに私が呼ばれる理由が分かんない。
甘いものを食べてる間に、余計に頭がこんがらがっちゃった気がする。]
でしょ?
ていうか、戦うとか、したことないし。
[魔法や超常現象に縁のない私の世界で、唯一少しだけ発達してるといえば科学ぐらいのものだけど、それも戦闘用じゃなかった。
殺し合いとか、世界が壊れるとか、そんなものに縁遠かった私の世界は、武器の類も存在しなければ、軍人だって過去の遺物。
それが急に殺し合いのゲームなんて、正直現実味がなさすぎる。
>>130 横の女の子に返事しながら、>>134少し離れたところで名前を呼ばれた気がして、ちらっとそっちを見る。
各世界から一人代表して来てるなら、みんな知らない世界の人。
視線を向けた先にいる子も、やっぱり私の知らない子だった。]
[>>138 女の子が飛びまわる様子は、何だかアバターを思い出させた。
大きなショッピングモールの壁に張られたスクリーンの中では見えるけど、こんなに近くで見たことはない。
ていうか、映像じゃなくて、ちゃんと実体がある?
自分のことをルリ、って言ってた子を、ついまじまじと観察しちゃうのに夢中で、危うく話の内容を聞き逃すとこだった。]
んー、……じゃあ、ランダムの可能性が一番高いかなぁ。
神に相応しい資格、とか、私が持ってるとは思えないし。
[勿論、理由だって思い浮かばない。
神になる権利の可能性。それもなんだか、手に余るものな気がして。
私は自分の手を広げてみる。マメが潰れた痕と、硬くなった皮膚がそこにはある。
だって、今まで野球以外のことなんてしてこなかったし。]
殺されるのも殺すのも、……やだなぁ。
[今、この状況で思えることなんて、そのくらい。]
うん、武器持ってー、みたいなのはないよ。
戦うなら、記録とか、勝負とか。
……もしほんとに殺し合いとかするんなら、ちょっとヤバいかなぁ。
[そんな事態になったら不利だろうな、っていうのは私にも分かる。
>>148彼女の世界は戦いとか争いとか、そういうのあるんだろうな、っていうのが言葉からも分かったし。
唸ってたって仕方ないのは分かってるけど、やっぱり首を傾げて、んー、って唸る。]
………困ったなぁ。
[生きる、死ぬ、殺す、殺される。生きる以外全部選びたくない場合って、どうしたらいいんだろう。
ゲームなら何処かにリセットボタンがあってもおかしくなさそうだけど、見回した限りではそういうのは見当たらなかった。]
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