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では、今は。
意味がある―――そういう事、ですわ?
[沈んだ瞳を眇めた目でじっと見る。
上げられた指の背を、そっと噛んで]
人狼の弱点、等は分かりませんか?
…、そう、残念ですわ。
[ウルスラの返答に静かに返した後
ゆるゆると手を下ろし――
業を煮やして居間から出ていくユノラフの背
彼の「見極める力」は次はいつ使えるのだろうと
その先に想いを馳せた*]
[投票箱に、紙が入れられていく。
その中に書かれた名前が開かれる]
処刑するの、ですよね。
わたくしたちを殺す為に――
[多数の票が集まったものを。]
こうして、投票が成されるのならば
人だと言われた人から…と、わたくしは思います。
もしまだ、ヴァルテリ様やレイヨさんが
見極める者だ、とおっしゃらるるのであれば
他の見極める者は被害にあわせては
疑われるかな…などと考えておりました。
[勿論、そのつもりが無いならば
見極める力持つものから―――とは思うものの]
とは、いいわけで…
実の所。
先程の怪我の治療から。
マティアス様の血の匂いが
頭から離れないのですわ。
[喉を手指が滑り降りる
恍惚の表情―――喉の乾きを癒したい]
…レイヨさん、が選ばれたら、
きっと…
手にかけようとするひとを。
喰い殺してしまいますわ。
[狂うた人と言われるだろう彼への返答は
ひどく、沈んだ声となった]
[投票箱]
[名前を書いた紙が入れられていく。
その様をじっと見て―――
自分の分も含めた全てが集まれば、
ゆっくりと歩み寄った]
この、投票は。
処刑者を決める―――と、
そういうもの、なのですわね。
人が生きるための暴力。
きっと、それは…
[紡ぐ言葉は語尾を消し。
暫し目を伏せてから、部屋へと戻るのだった*]
―夜―
ええ、ヴァルテリ様。
食べて、力に致しましょう。
ここから、にげる為の。
[告げて、輪郭を揺らがせた。
少しコツが掴めてきた。
血が着いても平気なように衣服を脱いでから
髪と同じ桔梗色の毛並みの狼の姿へと変じる]
[そして、狼の姿での力の加減が分からず。
扉を派手に壊してしまった。
桔梗色の毛並みが、トビラの破片とともに散らばるけれど
空腹に苛まれた若い狼は、気付かない―――]
…ん、
[食事を終えて部屋に戻り。
ひとの姿を取り戻してから見下ろすと
肩口から腕にかけて青痣が出来ていた]
あら…
いやですわ…
[扉を壊した時にできたものだろう。
たいして気にもせず眠ったが、
慣れぬ変異に身体はまだついていかず
きしりきしりと軋みをあげていた]
[それから茶でも淹れようかと台所へ向かいかけ
ヴァルテリの姿を見つけて歩み寄る]
あの、また、誰か…?
[はっきりとした声で問いながら]
[早朝の声の時は、眠っていたから。
問いのかたちは、他が聞けば
マティアスを殺した人物が
誰か、知っているからこそのものだが―――
血の匂いに気が緩んでいた]
そう、ですか。
…お辛い事を、ありがとうございます。
マティアス様は、
――――あ、
[部屋へと視線をゆるりと向けてから、
不意に、小さく短く、声を、漏らして。
そぅっと壊れた扉へと近寄ると
その壊れ口に指を這わせた]
かわいそう、でも、
人狼の可能性はあるのですわ。
だから…
[ヴァルテリの言葉に、頭を横に振ってから
続いた問いにはゆるやかに手を背の後ろに]
いえ、何でもありませんわ。
派手に壊れているな、と、思っただけですわ。
[言いながら壊れた扉を背にするように
じわりと立ち位置をズラした]
[マティアスの寝ていた部屋の壊れた扉
その割れた角にこびりついたものを
細い指先で剥がして握り込む]
…暖かいお茶でも、淹れますわ。
ね、皆様も。
[涙を流すユノラフを始め
マティアスの死に心痛める面々を見渡して。
出来るだけ穏やかな声を、向けた]
[マティアスの部屋を去る前、
叶うならばウルスラの肩を一度、撫で
それから調理場へと向かう
薬缶にたっぷりのお湯を沸かしながら
流し台に洗われた果物ナイフを見る]
…処刑、なんて。
ほんとうに…
[ポツリ、落としてから。
茶葉の入った缶を取り出して
ティーポットへと入れる]
…処刑、も。
何ならわたくしがしましたのに。
ヴァルテリ様、お疲れじゃありませんか?
[洗われた果物ナイフから薄い血の匂いを感じて目を細める]
[湯を落としてから、棚へと手を伸ばしていると
掛けられた声に、顔を、向けた。
困った風に眉尻を下ろして、頷いた]
ひとを、殺すのですもの。
例えその相手が誰であれ―――、
ここを、無事に出たって。
引き摺ってしまいそうですから…
大義のある殺人、が、
わたくしは…おそろしいのです。
[俯く様子は殊更悲しげな音色を落とす]
娘、が。
ヴァルテリ様のお口には…
実は、わたくしが合ったり
するのでしょうか。
[聞こえた言葉に冗談めいた声を返す]
でしたら、次はヴァルテリ様が。
タベタイ方を食べて下さいませ。
わたくしは、横からつまみ食いますわ。
[血の匂いににはまだ酔いそうだけれど
ふたり喰らって力が満ちてきたのか
我慢もきくようになってきた気がするから]
[ニルスの言葉にゆるりと頭を傾げる。
それから、嗚呼、と呟いて]
扉が、壊れていましたでしょう?
あれは昨日からではなかったと気がして。
何か参考になるものが無いかと、
わたくしなりに調べておりました。
何も、わかりませんでしたけれど…、
っウルスラ様、
[居間を目指して歩いていく彼女を見て
伸ばした手指の先が、
ニルスの服の裾に不安げに触れた]
[居間に入る直後ウルスラの慟哭めいた叫びを聞いた
周りを見渡して、様子を探る]
…どういうこと…ですの?
[掠れた声が漏れた]
レイヨ、さん、
危険な事は…なさらないで下さいませ…!
[疑いを持てば殺すと言い切ったニルスの
その横顔をチラと見て
表情には出さぬように言葉を向ける
それは、嬉しいのですけれども。
レイヨさん、
死ぬまでは、なんて。
あなたも、 死なせませんわ。
[護ると言ってくれている彼を。
決して死なせはしない]
血の匂いは、きっとクレスト様ですわ。
レイヨさん。
わたくしは、勿論、生きたいです。
でも、こうして声を、
聞いて下さるレイヨさんも。
共に…生きていて欲しいのです。
それに。
わたくしが本当に生きているか、
レイヨさんが死んでしまわれては
確認できませんわ?
[まるで死のうとしているように、感じて。
彼の方へ駆け出さぬよう、必死で自分を押し留める
[クレストの笑みからウルスラに視線を移し
レイヨへと顔を向ける]
…あの、
[発される棘の言葉の数々。
良い言葉も思いつかず、
彷徨わせる視線はニルスやヴァルテリへも留まる]
人間だと…、知っている、とは。
どういうことでしょう…?
[ニルスの様子に、その手にしたナイフに。
顔を強張らせながら震える声で尋ねた]
[気にしちゃいけない
そんな言葉に、返す言葉は無くて。
ただ視線はニルスのナイフに縫い留められていた。
ざわり、と 毛を逆立てながら]
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