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大変……か。
いや、ダンケさんほどではないと思うよ。
食べ物がなくちゃ生活が成り立たないんだから、責任重大だ。
[ダンケの無理矢理な励ましにくすりと笑い]
ありがとう。学校があるんだから、教養や娯楽だって、きっと必要とされてる……って、思う事にするさ。
[教室の片隅に置かれた、古びたオルガンを思い呟いた]
[男には先天的に左手が存在しなかった。左腕の肘から先がない状態で生まれたのだった。その特徴から子供の頃に儀式の対象に選ばれかけた事もあったが、結局男が神に奉げられる事はなかった]
高きにおわす 天の御神よ
迷える我等を 導き賜わん
[小さく祈りの歌を口ずさむ。歌声は柔らかくも凡庸なもの。ゆるりと踵を返すと、草履の軽やかな足音を響かせながら、村の何処かへと*歩いていった*]
……ご馳走様、ポルテさん。美味しかった。
[出された料理を平らげた所で、席を立つ]
貰ってばかりも何だし、何か手伝う事があったら言ってよ。
……お役に立てるかわからないけど。
[料理の腕は言うまでもないし、オルガン奏者らしい細い指は力仕事にも向いていない。
それでも、感謝の気持ちだけは伝えたくて、そう口にした**]
いやいや、この仕事はのんびりしてても怒られないからね。
結構気軽で楽しいよ。
[清治にそう言って、笑みを向け]
そうそう。それにほら、儀式の時だって神様に捧げる音楽を奏でるしさ、必要とされてるんだよ。
[儀式の時に奏でられる音楽を思い出せば励ますようにそう言って]
そうだな。また収穫の時期になったら、その時はお願いするよ。またね。
[家に帰る清治を見送り]
さて、僕もそろそろ帰るよ。ごちそうさま。
また、野菜が欲しい時には言ってくれれば持って来るよ。
[ポルテに料理の礼を言って、店を出た**]
セイジ君はもうお帰り?
え? 何か……?
[>>33 セイジの申し出に考え込む]
あ。子供たちと森に行く時にでいいんだけど……。
いちじくやあけび、ざくろ、スベリヒユが有ったら採ってきてもらえないかしら。
フキやヤマブドウは遅いし……クコはまだまだ先だものね。
私、この季節はすぐに赤くなってしまうから、外に出る時は大変。
[セイジを入り口まで送りながら、頼みを口にする。
扉を開く手は、昼の野菜取りの時の名残か、ほんのりと赤い。
ふと何かを思いついたように、いたずらっぽい笑みを浮かべた]
あ。ゲンジモノガタリって知ってる?
昔の人って歌を贈らないと一夜も過ごせなかったのよね。大変よね。
歌とか音楽ってそれくらい大切なものだったんじゃないかしら。
じゃあ、またいらしてね。
─小料理屋─
[やってきた村人に料理を振る舞い、代金代わりの食材や物品を受け取る。
そうして誰も居なくなった頃]
まだ早いけど、いっか。
[お櫃に残ったご飯をおむすびにして、ごまを振り大皿に並べる。
痛みにくい惣菜を小鉢にとりわけ、布巾を被せる]
『留守にしております。ご自由にお召し上がり下さい』
[割烹着を畳み、住まいの入り口の脇に置くと、メモをカウンターに残す]
─夜道─
[月明かりの下、うちわをもてあそびながら、下駄の音も軽やかに夜道を歩く。
川までたどり着けば、臆すことのない足取りで岩場を下りて、川岸へ。
下駄を脱ぎ岩に腰掛け、足を川に落とす]
もう蛍も居ないわね。
[うちわで扇ぎながら、のんびりと星空を眺めている*]
―回想・小料理屋―
うん。了解。じゃあ、明日にでも持って来るよ。
[言われた野菜のメモを取る。帰り際、聞こえてきた小さな言葉には、振り返るでもなく、ただ、少し困ったような笑みを浮べ]
ありがとう。また来るよ。
[背中を向けたまま、ポルテにそう言うと、小料理店を後にした]
―自宅―
ただいま。
[家に帰り着くと、誰に言うでもなく、声に出して]
いやー、今日も疲れたなぁ…
[寝床に寝転がり、窓から夜空を見上げる]
おや、今日は満月か。綺麗だな…
─川のほとり─
[月明かりに反射する水面を楽しそうに見つめていたが、しばらくすると足を遊ばせるのに飽きたのか、夜空を見上げ、そのまま仰向けに岩の上に寝転がる]
痛たた……。
[頭を打ったのか、右手を後頭部に置いた。
足を水に浸し空には満月と星が見える]
……
[いつしか*うつらうつら*]
― 診療所 ―
[消毒液を滲みこませた脱脂綿を赤い膝にちょんとあてる。]
わ、… わわ。
沁みちゃったかな?
んー、もう少しで終わるからねー。
――― はいっ、これで大丈夫だ。
お大事に。
─川のほとり─
[東の尾根から太陽の光が覗く頃。
横になったままもぞもぞと動き、伸びをする]
痛い。さすが岩場。
[また何処かをひっかけたのか、苦笑い。
川に入れていた筈の足はいつの間にか引き上げられていた。
半身を起こし膝を抱えるように座り込む。
それでも手をあてるとひんやりと冷たい。
足にいくつかの赤い虫食いのあとを見つけると、しかめつらで爪で十字を入れてみる]
帰ろっと。
[徐々に日が上る中、唐突に立ち上がり、少しよろける。
着物を整え、体についた枯れ葉を落とし、脱ぎ捨てた下駄を履き、からころと小料理屋へ]
─小料理屋─
[店には誰もおらず、おむすびも惣菜もほんの少しだけ減っていた。
住まいに上がり、水で身を清めて着替え、折り鶴の横に線香を上げ、厨房に戻る]
母さんが居た頃は頑張って片付けたものだけど……さすがにひとりだと無理ね。
[言い訳めいた呟きとともに、余った惣菜は堆肥に出す桶に落とす]
すべてのおむすびをざるに入れ水で洗い、匂いを嗅ぐ]
大丈夫そうだけど……出すのは怖いな。干飯にしようか。
[大きな簾を水で洗い、手の平ほどの大きさに薄く伸ばしたご飯を並べる。
すべてのご飯を並べ終えると、店の前に石を並べて高さを出し、その上に簾を置いた。飛ばないように四隅にも石を置く]
今日も天気が良さそうだし、子供達が遊びに来る頃には出来るかな。
[だいぶ明るくなってきた空を見上げる]
―自宅―
[日がだいぶ昇ってきた頃。寝床で目を覚ますと、ゆっくりと伸びをして]
ふぁー……
………
ね、寝坊したー!
[既に明るい外の景色に、慌てて支度をすませると、走って、それでも速度はゆっくりと畑へと向かう]
―翌朝・自宅―
[朝焼けの赤が空から消える頃、清治は目を覚ました。
大きく伸びをした後、布団を置き出し服を着替える。
学校の仕事は休みとはいえ、家で寝ている訳にもいかない]
ふー、今日もあっついなー。
あ、アンさん、おはよう。
[ガラリと引き戸を開け、目の前を横切っていった人影に声を駆ける。
女学生のような姿だが実際はもう少し年嵩で、あの服は単にお気に入りのようだ]
忙しいのかなあ。
……そういえば、アンさんちの隣の爺さん、寝込んでるんだっけ?
[しばらく娘の去った先を見詰めてから、本日の仕事のために歩き始めた]
[すん、と鼻をならして店に戻り、厨房をいつもより時間を掛けて片付ける。
一段落した頃に、何を作るかと、上がり框に腰掛けてぼんやりと考えていたが]
あ。久しぶりに母さんの料理でも作ろうかな。
[楽しそうに手を打つと、住まいに上がると押入れを開け、置くから古い箱を取り出す。
黄ばんだ紙に細かい字で連ねられているのは、見慣れた母親の字。
眼を眇めて読み進める]
塩きついなぁ。
[母に習った筈なのに、いつの間にか自分好みに変えた分量を確認して苦笑い]
やっぱり、野菜料理が多い。
[魚料理は干物程度、肉類はあっても添え物程度だ。
他にも何か無いかと箱を見ていたら、小さな帳面が出てきた]
なんだろう?
[早朝の患者でも時間を問わず診療をする小さな医師の姿を、扉の陰からじっとみつめる更に小さな人影。その手には昨日からずっと縦笛が握られていた。]
おはよー。
上手に吹けるようになった?
[影は首を横にふるふると振ってしょんぼりとした顔を見せた。]
[ページを開くと、先ほどよりさらに読みづらく小さな字で書かれている。
後ろのほうに進めば、見覚えのある名前がいくつか。読み進めるうちに眉を顰めた]
ばち当たりな。
[まじめな顔は長く続かず、ぷっと噴き出す]
『肉ばかり食べているとくさい』って酷い。
母さんが作るわけじゃないでしょうに。
あ。もしかして、だから野菜が多い?
[ページの最後で指を止める]
母さんの味ってどんなのだったっけ?
[しばらく考え込む。
さらりと母の名前だけを書いてゆるく首を振った。
帳面を閉じ、箱にしまい蓋をとじる]
―診療所前―
[井戸から水を汲んで、老人や女子供しかいない家へと運ぶ作業の途中。
診療所から駆け出して来る子供を見付けた]
あ、テンゴ。
おーい、あんまり走るとまた転ぶぞー。
[声を掛けるが、テンゴは『わかってるよー』と答えるだけで、振り向きもせずに行ってしまった]
やれやれ、あいつ一人でワカバさんの仕事増やしてそうだよな。
[呟いてから、桶を担ぎ直し]
こんにちはー。ワカバさん、水使います?
[診療所の中に向けて声を掛けた]
[清治の声に、縦笛を持った影はぴゅっと家の奥へと消えていった。おそらくそのまま食事を済ませて学校へと向かうのだろう。]
はぁーい。
今、行きまーす。
[ぱたぱたと扉の方へと出向けば開いて]
せーじくん、おはよ〜。
いつもありがとねー。
[ほにゃっとした笑みを向けた。]
[そのまま箱を押入れの奥に入れ、襖をとじる。
膝の上に残されたのは母の書いた調理法の帳面]
さて、何をつくろうかな。
[どこか上の空で、ぱらぱらとページを*眺めている*]
―畑―
ふぅ。今日も暑いなぁ…
[畑の草をむしりながら、落ちてくる汗を手ぬぐいで拭う]
おや、テンゴ君。元気だねぇ。
[途中、畑の横を通り過ぎたテンゴに声をかけたりしつつも、ゆっくりと作業は進む]
あ、おはようございます。
[現れた若葉に挨拶を返す。
彼女にも学校に通う年齢の子供が居たはずだが、既に見える所にはいなくなっていた]
いや……こっちが具合悪い時は、お世話になってますから。お互い様ですよ。
[柔らかな笑みを向けられて、少し戸惑ったような表情を浮かべる。
実年齢は彼女の方が年上のはずだが、顔だけ見るととてもそうは思えなくて、どうも接し方に迷ってしまうのだ]
そういえば、さっきテンゴが診療所から出て行ったでしょう。
あんなにしょっちゅう世話をしていたら、子供が二人居るようなものでは?
[冗談めかした表情で訊いてみる]
お水はそこの甕に入れておいてくれるかな。
無くなりそうだったから助かっちゃった。
[診療所と自宅の間に、子供がすっぽりと入る程度の甕が設置してあった。]
うん、デンゴくんは常連さんだね。
[続く言葉に、ふ、と眉を下げて]
――― あははっ
1人いれば2人いても3人いてもかわんないよぉ。
はい。……よいしょっと。
[桶の中身を甕へあけながら、若葉の笑う声を聞く]
う?
うーん、そういうものなんだ。すごいなあ……。
僕なんて、生徒が一人増えたらそれだけで随分と苦労するのに。
[自分の学校での経験を思い出し、頭を掻く]
[からり、からり。男はいつものように村の中を歩いていく。緩慢な歩調で、時折景色を眺めながら。人に会えば微笑んで挨拶をしつつ]
……ふう。
[降り注ぐ日光、熱を蓄えた空気。額に滲んだ汗を手の甲で拭った。日陰になっているところで少し休んでいてから、また歩き出し]
ダンケさん。
おはようございます。
[畑に作業をする姿が見えれば、そう声をかけた]
せーじせんせーも、大変だね。
[笑い終えた顔でそう言い]
うちの子、昨日から縦笛お気に入りみたい。
がんばってね。
[軽くプレッシャーをかけるような口調だが
子をあやすように背伸びをして清治の頭へぽふり手を置いた。
そのまま、またほにゃっと笑みを向けてから手を放して、爪先立ちしていた足をすとんと元に戻した。]
でも実際のところ
もう1人くらい子供は産まなきゃね。
1人じゃ少ないって、よく回診にいく先のお爺さんにも言われてるんだ。
[童顔とはいえ自分の年齢は理解している故の思いはあって、今度は少しだけ困った顔をみせた。**]
ん?ああ、栂村さん。こんにちは。
今日も暑いですねぇ。
[草むしりの途中、声を掛けられると栂村に挨拶を返して]
そういえば、もうすぐ豊穣祈願の儀式がありましたね。語り、楽しみにしていますよ。
[もうすぐある儀式を思い出せば嬉しそうに言う]
え、あ……はい。
[頭の上に、小さな手が置かれるのを感じた。
子供に対するようなそれに、顔が赤くなるのを感じて視線を逸らす]
うん……でも、妊娠、とか、子育ても、いろいろ大変だと思うし。
無理して産む事も、ないんじゃないかな……。
[弟妹のいない自分には、女性の妊娠や出産は余り身近な出来事ではなく。
男の自分がどういう態度を取ればいいのかもわからなかった]
ああ、でも、子供が増えるのは良い事だよね、うん。
それじゃ、また明日来ます!
[若葉に向けて片手を上げると、診療所を出て行った]
ええ、今日も暑いですね。
こう毎日暑いと、体調を崩される方も多いでしょうから……少し心配です。
ダンケさんもお気を付けて。
[青く眩しい空を仰いでから、ダンケに向き直って言い]
そうですね、もうそろそろで……
直に準備も始まるでしょうね。
有難う御座います。へまをしないように頑張りますよ。
[儀式の話に、静かに笑んで頷いた。最後は冗談のように言って小さく首を傾け]
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