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[暫くそうして泣き続けていればジュンタがいた場所に残された携帯からウィンターホールが流れ始める。
流れていた涙の痕をごしごしと手で拭い、縋っていたデンゴには]
ごめんね…。
[泣きはらした目で謝り、鼻をくすんと啜る。
彼の携帯を手に取り、表示を見れば「イマリ」の文字。]
………。
[誰とも話したくない。でも、この状況を伝えるべきなんだろうかと考えながら、通話ボタンをぽちりと押す。]
…………もしもし?
…ああ、かけてみるといい。
[異変については言えぬまま、イマリに頷いて、]
…メール?
[そこには、無機質な名前が5つ。]
…ジュンタ?
[欠けた、名前。]
[どれ位の長さの呼び出し音だったか。
それはとてつもなく長く感じられた。
出て欲しいけれど、出て欲しくない。
どちらであっても…彼に正直な自分を見せる事が。
いつも通り、会話する事が出来る自信は無かった。]
…あ!
[けれど。繋がった、とわかる、とつい声が漏れる。]
じゅ、
[ジュンタ。そう、名を呼ぼうとした所で]
……ミナツ、ちゃん?
[聴こえてきたのは、違う声で。]
[彼の名前を紡ごうとした相手が自分の名前を紡ぎ直すのが聴こえてくる。]
………そうです……。
[何か言葉を紡げばまた涙が零れそうで。ただ聞かれた事にこたえるのみで。
今、目の前であった事を伝えなければと思うのに言葉が出なかった。]
[電話越し、何かを堪えるような小さな声が帰る。
相手は問い掛けた名で間違いない様で]
…あの、其処にジュンタ、居る?
………連絡、貰ってたんだけど…
[自分の記憶から逃げる様に。
とぼけた様な質問を。恐らくはミナツにとって。
酷くなるかもしれない可能性のあるものを、
投げる。]
届いてますよ?
俺、お化けになっちゃったみたいで。
今なら、声がはっきり聞こえます。
………すんません。
[ゆらゆら、揺れている姿は陽炎のようであり。]
[イマリの問いにまた思い出したように涙が零れ始め、嗚咽が漏れる。]
……うっ……ジュンタ…消えちゃっ……たっ…。
[そう言えば、堪えきれずに声をあげ泣き始め]
ど…して…?
どうしてジュンタなの…?
[電話の向こうの相手に聞こえる悲痛な叫び。]
[不意に鳴る、俺の携帯。その着信音は、大切な……うん、大切な奴からの着信音。それに出るのは、愛した人。複雑。複雑。複雑。悲しくはない。だって皆、まだいるだから。]
………ごめん………
[呟いた言葉は、誰への言葉なんだろうか]
[まどろみから覚めた拍子に、制服のスカートから伸びている足がぴくりと動いた]
ここどこ……?
[寝返りをうって見上げた空は、いつか見た母親の喪服を思い出させた]
にぶいろ。
[相手の嗚咽に乗り、伝わる事実。
其れが頭をぐらぐらと揺らし、携帯を落としそうになる。]
……あ、…あの…ぇ…ぅ……
[口から漏れるのは、子供の言い訳の様な。
しどろもどろの、言葉とは呼べない、音。]
……。
[ミナツの声。叫びの様な其れを黙って聞き、]
……ごめん、あたし…
ごめん、なさい……
[反射的に、ぽろりと言葉が口をつく]
[電話の向こうで何かを言おうとしている彼女の声。
何を言おうとしてるのかわからない。
それでも泣き続けていれば、紡がれる謝罪の言葉。]
……ごめん……って…?
[彼女が何故謝るのかわからず、嗚咽を漏らしながらも尋ねる。]
[問われ、何も返せず、固まった]
ごめん、、本当に、ごめ
[応えるべき言葉が、うまく、出ない]
私、その…メールに…
[声は聞き取れないほどに、小さく]
[メールという言葉にはたりと思い当たる。彼女はきっとジュンタの名前を綴ったのだと。
口から責める言葉を紡ぎそうになる。
でも、自分も同じように違う人の名をメールに綴った。責められない…。
自分と同じようにこの人も言われた事をした。その結果。そう思えば責められなくて]
ごめん…な…さい…。
また…連絡します。
[そう言って彼女の返事を待つ事なくぷつりと通話を切る。
これ以上、彼女の声を聞いていれば責めてしまいそうだからそうすることしかできなかった。**]
[此方の言い訳の様な其れに、返る後輩の声。
それは、強く責める声ではなかったけれど。
…どんな言葉よりも、強く心を締め付けて]
――、あ、
[待って、とも云えず。
やがて声も何もしない、無機質な音が]
<ぷーっ、ぷーっ、ぷーっ……>
[鳴り響き、ミナツの声の代わり、となり]
――。
[それをただ、受け入れるように、
携帯を耳につけて、微動だにしない。]
馬鹿だな………俺が望んだ結果なのに。
[二人の電話を聞きつつ、ふわり漂う。]
………イマリんとこ、いってみるかな………
[彼女に想いを馳せれば、俺は彼女の元へと]
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