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[手にした黒い鞄は、重いまま。]
焼き鳥屋で、
砂肝を7連続で注文すると
[やがて横丁を抜け、雑踏に紛れる間際。]
「思い出屋」の裏メニューが…
というのは、ハズレ。
[まるでビジネスマンという
記号のような男が口にする、そんな*ひとりごと*]
とこやさん。あらものやさん。
ぎゅうにゅうやさん。
[異国の言葉のように繰り返す。
覚えきる前に、歩き出す男]
ありがとう。あなた、紳士なのね。
[ひよこのように、ついていく]
─ どこかの路地裏 ─
[どこかうきうきしたような足取りで歩く、薄茶のジャンバーを羽織った壮年の男一人。胸に時折手をやっては、笑みを浮かべている。]
へっへっへ。今日は旨い晩飯が食えそうだぜ。ありがたい。
[やがて男は、三階立ての古ぼけた雑居ビルに入ってゆく。
黄昏時。程なく灯りの点った窓には、
《萬屋探偵事務所》
との赤い文字が書かれていた。**]
[通りがかる人よりも、店を構えている店主に聞くべきかと。
良い匂いを漂わせている焼き鳥屋を見た。
焼き鳥屋の暖簾をくぐるときに、帽子とマフラーで顔を隠した人を見かけて一度視線を向けた。
芸人をいつか雑誌に載せたことがあったかもしれないが、顔を隠されていればそうたやすくは気づかない。
どこかのビルの一室に明かりがともったようで、路地裏にまた一つ光源が増えたのを背に、焼き鳥屋へと入った**]
[焼鳥屋の角を曲がるときに、
眼鏡と髭が印象的な男の顔が見えた]
前にインタビュー受けたときの
編集者さんに似てたけど……。
……まあ気のせいだよな。
仮にあの人でも、さすがに目的まで
同じってことはないだろ。
[自分に言い聞かせるように呟き、歩を進める]
[社に向かう途中にあったタバコ屋。
老婆が店番をし、年期を感じさせる
自動販売機が鎮座するその店先に視線が止まる]
大丈夫なのかよ。
[法律的な意味で。そんな言葉は飲み込む]
どっかで正体ばれて
「言うなよ、絶対言うなよ!」という
くだりはやりたいが、いかんせん人と会わない。
[というか正体ばれないと話が進まない]
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