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〔出掛かった言葉が詰まる。
代わりに奥から飛び出そうになる心臓。
まんまるに開いた瞳で扉を見つめ〕
―――。
〔息を、殺す。
何か、よくわからない言葉を紡いで
かつこつと扉をノックし続けるのは、
男性……の様だ。〕
〔軽い、パニックに陥る杏奈。
後退り、呼吸を忘れて居た事を思い出す。〕
〔再開する呼吸は震えていた。
何故此処に来訪者が?
フーユキせんせー?
……隠れても、無駄?
………年貢の納めどき?
……一つも理解できない単語が続く。〕
……ぅ
〔じくり、と胸が痛む。
緩い動作で抑えてはその場に屈み込んだ。
極度の緊張のせい、なのだろうか?〕
〔そもそも、人、なのだろうか。
人なら何故こんな場所に?
わざわざ此処へ訪れる理由がわからない。
……そんな思考が、杏奈を埋め尽くす。
編集者の思惑など、知ろう筈も無く。〕
……神様っ…
〔知るのは、恐怖。
人ではない、という仮の結論か。
普段の彼女から想像も出来ないほどの
震えと胸を押さえたまま紡ぐ祈り。〕
- 早朝・割り当てられた家屋内 -
〔瞳は虚ろ。
捉えるのは朝の光を受けて舞う、塵。
結局、杏奈は眠りに落ちる事が無かった。
押入れからシーツを引き出すと、
身体にきつく巻きつけて部屋の隅に埋まり。
そのまま朝を迎えた、という具合。〕
―― … 。
〔勿論、あらゆる事に手がついてない。
逃げる様にこの場所へ来て朝を迎えたのだから。〕
- →割り当てられた家屋前 -
〔丸まったシーツがちょこちょこと。
家屋の前へ踊り出ると見上げ、立ち止まり。〕
……。
〔言葉無く、望み続けるのは
世界を覆い溶け出しそうな、ハナミズキ。〕
―――、え?
〔遅れて出た、感嘆は疑問に近い。
寒さでかたかたと小さく震える白いシーツ。〕
〔恐らくの高さは10m程度。
ハナミズキの中でも大型なのだろう。
その真下、白のシーツが黒の真ん丸を揺らした。〕
――、あれ?
〔黒の真ん丸がはらり、散らす言の葉。
シーツから伸びた手が頬をなぞる。〕
え、え?……え?
〔其処には確かに頬を伝う、温もり。
流す本人すらその理由がわからない。
ただ、見上げていた。それだけなのに。〕
〔杏奈の胸が、きゅうと音を立てる。
雑巾をきつく絞る様な、あの感覚。
無理に言葉にすれば、其れが一番近い。〕
――。
〔指先に残る温もりを見つめ、逡巡。
ほぅ、と息を吐き唇をきつく噛み。
ハナミズキをもう一度見上げると〕
……御腹、すいた。
〔ぽつり、と呟いた。
白のシーツはそのまま管理棟方面へ向かう。〕
- 管理棟・玄関 コルクボード前 -
〔結局、一言で言えば世間ズレしているのだ。
杏奈はシーツを纏ったまま此処まで歩いた。
目撃した者が在れば不思議に思うだろうか。〕
えぇ、と
〔辿り着いたボードの前で、
文具を持参していない事に気付くが、
周囲を見渡せば用紙とペンは備えられていた。〕
〔一枚の紙とペンを手に取り。
ペンでこつこつと顎を叩いて逡巡。〕
よし。
〔貼り付けたメモを見つめ、真顔で頷いて。
白のシーツをふわり、と翻すと
何食わぬ顔で表へと歩き出す。〕
……、
〔辿り着いたのは、
管理棟近くのハナミズキの真下。
微かな風に揺れるシーツを纏ったまま、
潤んだ瞳は暫くの間、見上げ続けていた*〕
/*
アンは幽霊設定でいこうと思ってたのですが。
ちょっとテンマさんから、
幽霊でないにせよ、設定が被るような匂いを
そこはかとなく感じてたりします。
じゅりるりの考えすぎなら問題ないのですけど。
でもあの匂わせ方が気になる。
テンマさんが人狼だった場合、
此方は少し道を逸らした方がいい気がするので、
色々と見ながらかえられるよう、
方向はいくつか考えておこうとおもいます。
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