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おねがいごと、「忘れないでほしい」よりも「かみさまのおよめさんになりたい」がいいな
わすれないでほしいとも思う
けれど
じぶんがわすれられるより
あの人のことを覚えていたいから
およめさんがいい。
/*
かみさまはおよめさんにしてくれるって言ったけれど
そのまえにいってしまったから
だからわたしは
かみさまのおよめさんになりたいのです
[昨日は、ふたりを困らせてしまいました
泣き続けたわたしを、ひろくんはずっと慰めてくれました
それでも泣き止まないわたしを心配して、今日は泊まるよと言ってくれました]
[ひろくんは、かみさまとは違うけれど、暖かくて大きな手で撫でてくれました
大丈夫だから、と抱きしめてくれました
そのひとつひとつが優しくて、わたしはちょっぴり安心しました]
[どうしてここまで優しくしてくれるのでしょう
コイビトでもないはずなのに
わたしは訊ねます
するとひろくんは、ひどく傷ついたような、悲しい顔をしました
けれどすぐに笑って、わたしをぎゅうと抱きしめました
つよく、つよく
そうして、耳もとでそっとささやきました
六花のことが大事だからだよ、と
笑っていたはずのひろくんが、泣いているようにみえたので、わたしはひろくんの頭を撫でてあげました]
[朝おきたら、ひろくんはいなくなっていました
小さな机のうえに、書き置きがありました
いわく、おひるすぎにまた来てくれるそうです
わたしはがらんとした部屋のなかを見渡しました
一人だけです
ひとりでいるには広すぎるくらいの部屋は、おどろくほど何もありません
ベッドと、机と、それから、ひとつだけ
わたしがお願いして持ってきてもらったもの
かみさまがさいごに座っていた椅子と、それから、]
[煙草を吸いに行こうと思いました
けれど、ハイライトの箱の中はからっぽでした
買いに行かなくちゃ
わたしは部屋を出ます
お財布を持って
廊下に、たばこの自動販売機もあったことをおぼえています]
―自動販売機前―
[かみさまが好きだったハイライト
ときどきマルボロも買っていたけれど、ハイライトを吸っていることの方が多かったと思います
ハイライト、ハイライト
自動販売機の前で、わたしはあの青い箱を探します
みつけた、ハイライト、410円。]
[けれども、困りました
410円、それはいいのです
財布のなかには、小銭がたくさん入っています
だけれど、わたしにはわからないのです
410円を支払うには、何円玉がいくつ必要なのでしょう?
わかりません、わかりません
わたしはすっかり立ち往生してしまいました]
[>>17]
そういえば、前にもこんな事があったな、と思います。
その時は、男の子が手伝ってくれたのでした。
どんぐりみたいに大きくてぱっちりとした、きらきらしている目の男の子。
少し子どもっぽい顔なのに、意志のつよそうな表情が印象的でした。
お友達のお見舞いに来ているのだと、そう言っていました。
あの子はたしか、ぜろくんと言いました。
‥‥?
[そんなときです、足になにかがこつんとあたりました
ひろいあげてみます
コーヒーの缶のようです
手の先からじんわりと暖かさが伝わってきました]
‥‥あなたの、ですか?
[きょろきょろ、まわりを見ます
そこにはひとりの、白いふくの人がいます
その人のものでしょうか
わたしは缶を差し出しました]
「ありがとう、それは私のだ
手から缶が逃げてしまってね
捕まえるのに苦労していた所なんだよ」
[あははと笑う人、お医者さまでしょうか
わたしもにこりと笑って、缶を手渡しました]
逃がさないように、しっかり持っていてあげてくださいね
[「煙草かい?」その問いかけに、わたしはこくりと頷きます]
ハイライトと‥‥、ハイライトと、マルボロが、ほしいんです
[いつもなら、お札で払ってしまうのだけれど、今日はお札がありませんでした
小銭がいっぱい入った財布が、じゃらりと音を立てました]
赤いの、です
[わたしは自動販売機を指差して、答えます
ハイライト、410円
マルボロ、440円
足していくらになるのかしら
今のわたしは、それもわかりません
かみさまも、こんな感じだったのかしら]
その、すみません
ここからお金、とってください
[財布を差し出しながら頭を下げて、そうお願いしました
じぶんひとりで買い物もできないなんて、情けないなぁ
そう思いながら。]
[ぜろくんは、面白いことを教えてくれました
わたしはその時、マルボロを買おうとしていました
ぜろくんはわたしの代わりにお財布からお金を出してくれました
そうして、マルボロの話をしてくれたのです]
―とある見舞客の回想―
[見舞いを終えて帰ろうとした時、煙草の自動販売機の前に一人の女性が立っているのが見えた。
おろおろしていたから、困っているんだろうと思って声をかけた。
彼女は煙草を欲しがっていた様子で、お金も持っていたのに、それを支払えないのだと言った。
病室の番号を訊ねると、926号室だと言った。
そういえば、ここに勤めている看護師が926号室の人は買い物も満足に出来ないから、云々、と言っているのをちらりと耳にした覚えがある。
他にも、いかにも堅気ではなさそうな見舞客が来るから迷惑している、だとか、色々と。]
どれが欲しいんですか?
[彼女は、小さな声でハイライトと、マルボロと言った。
ハイライトと、マルボロ。マールボロか。]
お姉さん、マールボロの由来って知ってますか?
[そう訊ねると、彼女は首を横に振る。不思議そうな顔が可愛らしいと思って、俺もくすりと笑った。]
―Man always remember love because of romance only―
人は本当の愛を見つけるために恋をする、という意味らしいですよ。
[彼女は、ゆっくりと俺の言った言葉を復唱する。
俺は彼女の左手の薬指に嵌まった銀色の指輪を見て、笑いながらこう続けた。]
本当の愛、大事にしてくださいね。
[左手の薬指にする指輪など、婚約、あるいは結婚指輪以外の何物でもない。
どんな病気で入院しているのかは知らないけど、あんなに柔らかく笑う人なのだから、幸せになって欲しいと思った。*]
[100とかかれた銀色のお金が、4つと、4つ。
10とかかれた銅色のお金が、1つと4つ。
財布の中から取り出されました]
ありがとう、ございます
[ボタンが押されるとぽとん、ぽとんと控えめな音が鳴りました
わたしはお礼を言って頭をさげて、それからふたつの箱を取り出します]
926号室です
[かみさまと同じ、アルツハイマーとかいう病気のせいで数をかぞえられなくなったけれど、部屋の番号は覚えています
わたしはにこりと微笑んで、答えました]
/*
なかのひとは、アルツハイマーをきちんとは理解できていません
だから、そぐわない描写がたくさんあると思います
ごめんなさい、ごめんなさい
謝罪の気持ちは、ちゃんとあります
ユウキ、さん
[この人は、やっぱりお医者さまのようです
わたしは名前をわすれないように呟きました]
わたし、ロッカです
むっつの、花で、ロッカ
[ほんとうは、ちがいます
ほんとうは、リクカと読むそうなのです
でも、かみさまはロッカと呼んでくれました
それに、「リクカ」はたぶん、あのときに死んだのだと思うのです
だから、わたしはロッカなのです]
「困る事も多いでしょう」
[その言葉に、わたしは笑います]
でも、助けてくれます
ユウキさんも、ひろくんも、ぜろくんも、みんな
優しい人がたくさんいるから
[優しい人が助けてくれるから、わたしはまだ、生きていられるのです
けれど、そんな優しい人たちの事を、わたしはわすれたくないと思います
その人たちを忘れてまで、生きていたくはないのです]
「ほら、窓の外をご覧なさい
今日は貴方の名、六つの花が咲いています
冷たい世界を、優しい光で包みこむ
そんな花が、咲いていますよ」
[ユウキさんが手の平でさした方向を、わたしは見ます
窓の外から、ちらちらと白いものが落ちているのが見えました]
‥‥雪、
[わたしは、昔、雪が嫌いでした
でも、今はだいすきです
かみさまのことを、思いださせてくれるからです
顔がほころぶのを感じました]
「六つの花とは、雪の結晶の事
なんとも、美しい花だね」
[ユウキさんの言葉に、わたしは頷きました
雪は綺麗です
綺麗なかみさまの髪の毛と、おんなじ色をしている雪
「触れてみるかい」と訊ねられて、わたしはまた頷きました
わたしは好きになったけれど、かみさまは雪はあんまり好きそうじゃなかったなぁ。]
[お医者さまと一緒に、小さな中庭へ出ます
降りてきた白が、わたしの頬に触れて溶けていきました
手を受けざらにするように差し出せば、そこにも白が降りてきます
まるで、空からのプレゼントのようだと思いました
吐く息も白くて、たばこを吸っていないのにたばこを吸っているみたいです
ちょっぴり寒かったけれど、わたしは雪を手に受けることに夢中で、そんな事はどうでもいいのでした]
[>>29]
私が覚えているなかで、一番ふるい記憶はかみさまに見つけてもらった時の事です。
雪の降る、寒い冬の事でした。
私は親に捨てられたのでしょう。
薄い、白のワンピースを一枚だけ着せられて、裸足で道を歩きました。
お腹が空いて、足もすっかりかじかんで、動きたくなくなって。
道の端に座り込んでいた時に、ちらりちらりと白いものが降ってきたのです。
頬に触れたそれが冷たくて、私は嫌だなぁと思いました。
だって、ただでさえ寒いのに、もっと寒くなるなんて。嫌に決まっています。
凍えてしまいそうだと、幼いながらに思いました。
そうしていると、私はだんだん眠くなってきました。うとうと、瞼が降りてきます。
そんな時、誰かが私を抱き上げました。
「嬢ちゃん、こんな所で何してんだ?」
少し擦れたような、けれど優しい、落ち着く低い声でした。
私は薄く目を開けて、暖かい手に触れました。
この人の髪の毛は、まるで雪が積もったみたいに綺麗な白でした。
「おい、寝るなよ。死んじまうぞ」
おなかがすいた。
私はやっとの事で、それだけの言葉を紡ぎ出して、目を閉じました。
だって、この人の手は暖かくて、とても安心したのです。
[>>31]
雪が降ると、かみさまは寒がる事の方が多かったと思います。
そうして、寒いと言って、私を抱き寄せるのです。
かみさまにとって、私は湯たんぽか何かなのでしょうか。
そう思った時もありましたが、抱きしめて貰えるのが嬉しいので、私は喜んでその腕の中に納まるのです。
ねえ、かみさま。
抱きしめてください。
あの時みたいに。
ほら、雪が降っていますよ。
湯たんぽ代わりでもいいから。
「寒くないかい、大丈夫?」
[ユウキさんの言葉に、わたしは首を振ります
寒くない訳ではないけれど、そんなのはどうでもいいのです
だから、それは寒くないのと同じだと思いました
それに、]
わたし、嫌いじゃありません。
寒いの。
[かみさまが、抱きしめてくれた事を思いだせるから。]
寒い時は、ぎゅーってすればいいんです
かみさまは、よくそうしてました
[寒いのが苦手だと言ったお医者さまに、わたしは笑いかけます
かみさまも、傷のにいさまも、寒いときはぎゅーってしてました
あたたかくて、安心します
ひろくんは、恥ずかしがってあんまりしてくれなかったけれど。]
戻りましょう、ユウキさん
連れてきてくれて、ありがとうございました
[わたしは十分たのしみました。
そう言って、笑ってわたしはうながします
寒いひとに、無理に一緒にいてもらうのは悪いと思うからです
ふわりと白いものがわたしの鼻のあたまに降りてきたと思ったら、すぐに溶けていきました]
「ロッカさんには、そうしてくれる人がいる
それは、とても羨ましい事だよ」
[ユウキさんの言葉に、わたしは少しだけ、悲しくなりました
傷のにいさまも、今ではひろくんも、ぎゅーってしてくれます
でも、一番してほしかった、かみさまはもういないから。]
ユウキさんは、たばこ、吸いますか?
[病院の中へ戻りながら、わたしはそう訊ねました]
じゃあ、これ、よければ
[わたしは、さっき買ったばかりのマルボロを、ユウキさんに差し出しました]
Man always remember love because of romance only.
人は、本当の愛を見つけるために、恋をするそうです。
ユウキさんにも、すてきな人が見つかりますように。
[この文章の頭文字をとって、M-a-r-l-b-o-r-o.
これが、マルボロの名前に込められた意味だそうです
ぜろくんが教えてくれたのでした
優しいユウキさんにも、ぎゅーってしてくれるような人ができますように。
わたしは、この人のこともかかえていきたいと思いました]
ぜろくんが、教えてくれたんです
[ぜろくん、前にたばこを買う手伝いをしてくれた男の子
わたしが言ったのは、ぜろくんの受け売りなのです]
それじゃあ、ユウキさん、また。
[わたしはぺこりと頭をさげました
屋上にいって、煙草を吸おうと思ったからです
マルボロの方が、わたしは味がすきですが、もともと買うつもりだったのはハイライトです
そっちがあるなら、構うことはありません]
―屋上―
[ひらひらと舞い落ちる雪はどこまでも白くて綺麗です
わたしはその中で、ハイライトを一本、咥えました
それから、かみさまが使っていた銀のジッポで、そっと火をつけます
すうと吸い込めば、わたしの中にずっしりと重たい煙が入ってきます
この感覚が、今はたまらなく愛おしいと思います]
[咥えたたばこを口からはなして、ふぅと息を吐きます
ゆらゆら、ゆらゆらと空にのぼる煙が、空から訪れる雪と対照的でとても素敵です
こんな雪のなかでたばこを吸うかみさまは、とても素敵だったなぁ
思い出すだけで、しあわせな気分になります
けれど、かみさまがここにいないと思うと、悲しくもなるのです
ポケットにしのばせた石が、ちょっぴり重たくなった気がしました]
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