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水鉄砲なんてこの寒い土地で持つほどの酔狂ではありません。
まあ、忘れものを拾った駄賃ぐらいは戴いてもいいですよね?
[かちん、と小さな音が響く。
本気でなければそんな音はしない]
…そうですね、噂の舞台俳優殿の消息。
それから、この列車で下手な芝居をしながら
兵隊さんたちが運んでいるものの正体、でしょうか。
あなたが御存知なら、で構いませんよ。
[レンズの奥の瞳に、笑う気配は見えなかった]
[黒兎の真実。秘宝のありか、言葉は魅惑的だが]
──さぁ、どうだか。
[秘宝のありかを示すものがあんなに安易にそれも濡れたような状態で
置き去りにされるものではないと考えたらしい。けれど]
!
[丁度それは列車が大きく揺れた瞬間。
僅かに、掴んだ手と拳銃の先がぶれる]
(しまった)
[思った時には遅い。転げ落ちるマトリョーシカ。
黒兎を拾い上げた小さな姿の消失、窓の外へ]
Istua(くそ)…!
[手がかりではないけれど手掛かりの可能性は持っていた小さな影。
列車からもう、随分と遠くなっていた]
/*
あー、やべえ。英語のつづりまちがえてるから
いみじたいまちがえてううううううううううううううううううう。
Paska!
こうだ。終名さんマジすんません。
なれないことばはつかうなってことですね!
[銃をしまえる状態に戻して再び外套から腰裏へと戻す。
一歩近づいたように見えて、また一歩遠くなった事実だけが横たわる]
…さて、どうしたものか。
[次第に騒がしくなっていく一等車。
幾らか身の置き場に迷いながら、小さく肩を竦めた]
−コンパートメント−
[ハラショー、ハラショー。聞こえるのは歓喜の声。
何がどうハラショーなのかまでは聞こえなかったが、閣下という名詞はあった]
(…なるほど?)
[実際の人物なのか。それとも、変装なのか。
ワインのボトルから白い葡萄酒をグラスに注ぎながら手元は動く]
『事態は列車よりも早く動く。
甘し話に吊られて来る者どもの何と多きことか』
…まったく、楽じゃないね。
[軽く息を吐き出してからチョコレートをひとつつまんだ。
舌の上でほろほろと溶けていく甘さと固さ]
[手帳の一番後ろを開く。
そこにあるのは古い家族の写真]
…取り戻さなくては。
[呟く。
写真の中の小さな少女は、眼鏡の主に何処か面影が似ていた]
…Taistelen.
Meidän ylpeillä on uudelleenpyydetyistä
[それは、ロシアという国によって奪われた言葉だと気づくものはいたか。
誰一人としていない部屋でつぶやいた言葉。
手帳を再びしまうと廊下へと出る。何やら前方が騒がしい。
自然と足はそちらへと向かう]
−運転室付近−
…?
[衛兵たちが騒がしい中を、その流れを逆らうように前方へと向かう。
必要があれば、実力行使で黙らせるまでだ]
[前方でガンガンと扉を叩く音。
足が自然と速くなる。
声には聞き覚えがあった]
Monsieur?!
どうされたのです!
[扉の前で派手な音を立てる仏蘭西の男に声をかける。
周りが騒がしいのは最早今さらだった。
どうせ列車の激しい音でそれなりにうるさいのだから]
!
[中から銃声。ガラスの割れる音。
微かに眉をしかめ、それから鉄製の扉に耳を当てる。
男の声が遠くに聞こえる]
…Monsieur、中にいるのはご友人二人だけですか?
[腰裏にゆるりと手を伸ばしながらヴァルデリへと確認する。
声が二つ以上あるのは確認できている]
もう一人───なっ!?
[開いた扉、屋根の扉へと上がっていく姿]
ご友人は、ご無事のようですねMonsieur。私はこのまま彼を追います。
…動く屋根の上を走るのは初めてですが、何とかなるでしょう。
では。
[小銃を蹴飛ばして窓枠から屋根の上へと上がる。
強く冷たい風の中、腰裏から拳銃を取り出せば体制を低くしながら
少年の姿を追いかけるために走り出す]
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