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―三等客車―
[何かの影が車窓に過った様な気がした――。
窓を開けると肩に掛けていた黒い薄いショールが、女の肩からフワリと浮き上がり、後方へと飛び去っていく。
それは何かを暗示する様に――。]
あら、残念。
[もう見えなくなったショールの行き先に目をやり、小さく呟く。
そして席に座ると、返して貰ったカードを元に戻そうとすると、一番上にあるカードは、
――『LA PENDU-吊られた男-』
その表情は無念そうに見える。]
さて、星の道筋はこれをどう読めと言うのかしら。
[協力者から得た貨車の話と共に様々な道筋に思いを巡らせる。]
それにしても私もそろそろ動かないと―…‥
[そう呟くと、廊下の粗末な更衣室代わりの一角で、身支度を整える。
一見変わらないが、何かがあった時は身軽に動ける様に、脱ぎ去り易い上着に着替えて、スカート下のガーターには香と薬をを入れているピルケースを忍ばせる。
最後に右手の薬指に意匠の凝らした金の指輪。]
これで服装はいいわね。
さて仕上げは―…‥
[化粧道具を取りあげて、ゆっくりと白粉を塗り、頬紅をつける。
少し迷った様に指先を動かして、仕上げとばかりに深い緑色のシャドウと紅を、そして最後に媚薬の入った甘い薔薇の香水を少し腕に垂らす。
―そこに居るのは神秘的な占い師では無く、一人の女。
そうして、占いの道具を携えて、優雅に一等客車の方へと向かう。]
秘宝を手に入れるまでは、この私は夢の私。
夢の中で兎の夢を見ていた坊やは、本当の自分を見つけたのかしら?
夢か、現か、幻か――。
貴方の運命の糸を手繰る為に、夢を渡りましょう。
そう言った事もあった―…‥。
でもそれは偽り事。
私はいつも偽わるわ。
私が知りえる事は、いつも人づて―…‥
だから今回は、私の手で掴みたいの。
―何かを。
[連結部分に立っている女の独り言は、屋外の風の音にかき消される。]
[サロンを抜け、そのままゆっくりと不自然にならないように歩みを続ける。]
何も使わずに、秘宝を見つければ―…‥
――いいのに。
[元来、香も薬も、そしてカードも使いたくはない。
本来の目的以外で使えば自分が不愉快になるだけだから――。]
[音には気付いたけれど、それはおくびにも出さずに気付いてない振り。
そして何げなく座り込み、ガーダーにある薬を一つ取り出して、ポケットに入れ、密やかにカードを握る手は戦うそれになっているが、優雅に歩き続ける。]
風が強いわね。
[そう呟きながら、周囲を見渡す。]
[拍子抜けする位に抜けられた事に呆気に取られつつ、]
もしかしたら、秘宝なんてないのかもしれないわね。
[警備の薄さに、小さく溜め息を吐いても、周囲を警戒しながら、それでも歩き続ける。]
[女がいる更に前方に騒がしい人々の声。
気乗りしないままに、そちらに足を向けて、扉を開ける。]
何をなさってるのかしら?
[とぼけた様な響きの声で声を掛ける。]
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